彼女がアンドロイド?!
えっと、そう、アンドロイド。
スタートレックに出てくる、データ少尉のような、作られた人間。
いや、あれはテレビ番組で、実際の出来事ではないぞ。
現在の科学技術では、不可能だろう。
とは言え、クローンの技術も、日々発達していると言うし、何が起こっても、おかしくない時代だ。そもそも、オウムちゃんが、もちろん僕も勤めている、稲荷工作所は、名前こそ古臭いものの、機械工学の最先端を走っている、と自負している。まさか、秘密裏に開発した、新製品のデモンストレーションを、社員にすら隠して、行っているのでは、ないだろうか。
お茶を配り終えた彼女は、自分の席に着き、元の作業に戻ったようだ。
軽快に、キーボードを叩く音が聞こえる、そっと顔を上げて、彼女を見た。資料とモニターを、代わる代わる、睨めっこしながら、真剣に作業をする、オウムちゃん。
窓から差し込む夕日が、彼女を照らし、柔らかそうな髪が、光に透けている。
その内側には、ネジやゼンマイが、たくさん詰まっていたり、するのだろうか。
「外からの光、眩しくない、大丈夫かな」
自分が話しかけられたと、気付かなかったのだろうか、ワンテンポ遅れて、彼女が笑顔で、大丈夫です、と答える。
「まだこんな時間なのに、最近日が沈むのが早くなったね」
「そうですね、このオフィスは冬は夕日が差し込むんですね」
「そうなんだよ、冷房が入る夏より冬の方が暑かったりするんだ」
「暖かくてちょうどいいぐらいです、お気遣いありがとうございます」
笑顔の彼女はそう言うと、またモニターに向かう。
彼女はオウムちゃんではない。
いや、返事がオウム返しでは、なくなったのだ。
改造手術でも、受けたのだろうか、より人と馴染めるように、改良する為に。
さっきの出来事が、幻でなかった証拠、ハンカチにそうっと包んだ、小さなネジを、ポケットの上から押えてみた。