君の気持は
桜並木がまばらになる、遊歩道の終点近くまで来ると、人通りも少なくなってきた。
「新しい部署はどう?」
「はい、新しい仕事を覚えるのは大変ですけど、こっちも皆さん親切な方ばかりですし、何とかやってます。先輩に色々と教えていただいたおかげです」
オウムちゃんが、新しい部署をこっち、と表現した事に、寂しさを感じたが、気付かないふりをして、返事をする。
「そうか、なら良かった」
ひときわ、大きな桜の木が、近づいてきた。
どちらからともなく、足が止まる。
「うわー、満開ですね!」
「本当だ、すごくキレイだね」
「はい!」
オウムちゃんは鞄から、スマートフォンを取り出して、一枚、写真を撮った。
僕もポケットから取り出し、写真を撮る。
こっそり、少しだけ、オウムちゃんの後姿も、入るように。
と、くるりとオウムちゃんが、こちらを向いたので、びっくりして、もう一枚写真を、撮ってしまった。シャッター音が、出ないアプリを、使っていて、良かった。
「あの、私、先輩にすごく迷惑ばかりかけてきて、すみませんでした」
「迷惑だなんて、全然そんなことないよ、新人は皆そんなもんさ、僕だって先輩に迷惑をかけながら、仕事を覚えてきたんだ」
「仕事だけじゃなくて、忘年会の時とか、先月の医務室とか…」
「あれは、僕がおかしなことを言ってしまったせいじゃないかな」
冗談として、言ったつもりだったが、真面目な彼女は、真剣な表情で、こちらを見つめている。
「こないだの告白は本気だよ?でも、負担をかけていたなら、ごめんね」
「負担だなんて!そんな!」
「橋詰さんが寝込んだのは事実だよ」
「私なんかのせいで、ごめんなさい」
オウムちゃんは俯く。
「また言った」
「え?」
「私なんか、って。橋詰さんはとても可愛いくて、良い子だよ。課の皆からも好かれてる、そりゃ、ちょっと失敗する時もあるけど、人間だとしたら当たり前なんだ、もっと自信持ってさ。」
「でも…」
「僕は、君の気持が知りたい、僕が嫌いなら、ちゃんとそう言って」
「嫌いなはずないです…」
泣きそうになっている、彼女を前にして、屋上での出来事を、思い出した。また泣かせてしまうのか、今度は、どう考えても、僕のせいだと、慌ててしまう。
「オウムちゃんがアンドロイドだって気にしない!君じゃなきゃダメなんだ」
彼女が僕を見つめる顔が、あのきょとんとした目になる。
僕が彼女にあだ名をつけた、あの顔だ。と何故か思い出した。
「…オウムちゃん?アンドロイド?」
え、あ、だって。とうろたえる僕を見て、オウムちゃんはぷっと吹き出した。




