毒気を抜かれる
あっけにとられて、何も言えない僕には、気付かずに、医務室の主が、笑顔で白衣の男に、話しかける。
「あら!先生!どうしたんですか」
「橋詰君がぶっ倒れたって聞いてな」
「そんな、倒れたなんて大げさです、もう大丈夫ですから」
「そうかそうか、なら良かった」
ところで君は、と僕に視線を移す。
「仕事の指導をして下さってる先輩です」
オウムちゃんが、答えてくれた。
「そうかそうか、あの世話になってると言う。橋詰君はちゃんとやってるかね」
まだ、うまく言葉が、出てこなくて、えぇ、まぁ、と愛想笑いで頷く。
「これからもよろしく頼むよ」
がしっと肩に手をかけて、笑顔で言われると、はい、としか言いようがない。
実際には部署が変わり、もう僕には何もできなくなるのに。
「今日はこいつが橋詰ちゃんを家まで送ってくれるって」
「うむ、それは安心だな。」
2人の笑顔に、反論はできなかったのだろう、オウムちゃんもこくりと頷き、よろしくお願いします。と言ってから、僕の手にある鞄を見て慌てる。
「すみません!こんなことまで!」
大丈夫だと笑いかける余裕がようやく出てきた。
「あ、お弁当の入った袋が…」
「ごめん、忘れてきたかな、取りに行ってくるよ」
「一緒に行きます!皆さんにも迷惑かけちゃいましたし、挨拶してから帰りたいです」
「そうか、皆も安心するだろうし、ちょっと行ってこようか」
主と白衣の男に挨拶をして、医務室を出た。
「あの人は」
「あ、私の…主治医の先生なんです」
少し、言い淀んだのは、自分を作った、なんて言えないからだろうか。
詳しく話を聞くのは、気が引けるが、かと言って、体調の事も聞きにくく。
沈黙が苦しくならないうちに、部署に帰りつけて、ほっとした。
定時で帰った人も、多かったが、残っていた皆は、オウムちゃんの、落ち着いた顔を見て、笑顔になり。とっとと帰れ、と、送り出してくれたのだった。
昨日はうっかり更新し忘れました。今夜、もう一話更新したいと思っております。




