まさかの対面。
そーっと、医務室のドアを開けて、中の様子を伺う。
話し声は聞こえない。
中に入り、おそるおそる、衝立の奥をのぞきこむと、医務室の主と、目が合った。
「あぁ、ようやく保護者が来たか」
「なんだそりゃ。橋詰さんの様子はどう?」
「寝不足が一番の原因じゃないかな、あっちに休ませてあるよ」
と、斜め後ろのベッドを、親指で指さし、もうこんな時間か。と呟いて、肩をがしっと掴み、揉みほぐしながら首を回し、背伸びをする。
オヤジか。とつっこむのはやめておく。
ベッドに向かい、カーテンの奥をそっとのぞくと、布団のふくらみと、枕元のテーブルに置かれた、眼鏡が目に入った。
さすがに、寝ている女の子の、布団の中を、のぞきこむのは、憚られた。
元の場所に戻り、椅子に腰かける。
「課長がもう帰っていいってさ」
「じゃ、そろそろ起こすかね」
主は立ち上がり、シャッ、と勢いよく、カーテンを開けた。
無造作なようで、こちらから中は、見えないように、ちゃんと気をつかっていて、ただガサツなだけではない、と改めて見直した。
「橋詰ちゃーん、大丈夫ー?」
かなり大きな声をかける。やっぱりガサツか。
ごそごそと、布団の中で、身体を動かす、音が聞こえる。
「ほら、先輩が迎えに来たよ。後は家でゆっくり休みな」
えっ、と言う小さな声と、慌てて身支度を、する様子が、伝わってきた。
「焦らなくていいからね」
声をかけると、ぴたっと音が止まる。
また動き出だすには、たっぷり5秒は、かかっていただろうか。
しばらく経って、おずおずと、カーテンの向こうから、オウムちゃんが出てきた、顔色も良くなっているようだ。
「大丈夫?あまり辛いようなら送っていけって、課長が」
うっかり言い訳めいた事を、言ってしまった。
「ほら、甘えておきな、こんな時ぐらい」
困った顔をした、オウムちゃんを前に、2人で顔を見合わせた、その時。
ガチャリ、と、ドアを開けて、人が入ってきた。
「橋詰君はまだ居るかな」
衝立の向こうから、現れたのは、白衣に丸いメガネ。忘れもしない。
倉庫でオウムちゃんを改造していた、あの男だった。




