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晴天の霹靂

「転属?!」

「まだ一年も経ってないじゃないの」

「部署はどこだって」

「社会貢献企画室?」

「えっ、そんな部署あったっけ」

「いつからなの?」

「来月って、あと2週間ちょっとじゃない!」

「えらい急な話だな」

「送別会しようぜ!送別会!」

「同じ会社だからお別れってほどじゃないけど、毎日は会えなくなるわねぇ」


 寒さも和らいで、通勤のコートも少し薄くなり、そろそろお花見の計画を立てようか、と話していたのが昨日。

 そして、今朝。課長がオウムちゃんの転属を発表した。

 いつもは、どちらかと言うと、淡々と仕事を進める皆だが、蜂の巣をつついたように、騒がしい。

 それだけオウムちゃんが、馴染んで溶け込んでいた、証拠だろう。

 何も言えず、呆然と見つめる先の彼女は、少し困ったような笑顔を浮かべて、騒ぐ皆を見つめていた。

「橋詰さんの希望に会社の都合を合わせると急な話になってしまった訳だが。さっき皆が言っていたように、部署が変わるだけで同じ会社で働く仲間には変わりない、これからもよろしく頼むぞ」

 課長の言葉で、皆はぶつぶつ言いながらも、仕事にとりかかる。

 資料を読もうと手に取るが、文章をどれだけ読んでも、文字をなぞるだけで、ちっとも具体的な内容が、頭に入っていかない。

 向かいのオウムちゃんの様子を盗み見るが、相変わらず真剣にパソコンに挑んでいる。


 あの屋上で話してから二か月。

 オウムちゃんとは、たまに2人きりで、食事に行くようになっていた。

 けれど、転属の希望を出していただなんて、ちっとも知らなかった。

 何とか一日分の仕事は終わらせ、自宅に帰り着いてすぐ、携帯メールを送る。

  ― 明日の夜、ご飯でも食べに行こう。

 いつもはすぐ帰ってくるメールの返信が、少しだけ遅い気がした。

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