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屋上で二人

 給湯室で、まだ涙の止まらないオウムちゃんを見つけて、屋上に連れ出す途中で、缶コーヒーとミルクティーを買った。

 夕日にはまだ少し早い太陽が、コンクリートを暖めていたのだろう、少し風があるが、寒くはない。


 ベンチに座り、甘い飲み物を飲んで、少しは落ち着いたようだ。

 ぽつり、ぽつりと、彼女がようやく話してくれた。

「最初は、少し聞き取りにくい、ぐらいだったんですけど。怒鳴られて、私ってダメなんだと思ったら、もう何を言ってらっしゃるのか、本当にわからなくなってしまって…」

「仕方ないよ。さっき皆も言ってただろ、ちょっとタイミングが悪かっただけなんだよ」

 いえ、私が悪いんです。とまた泣きそうになる。

「わたしがちゃんとできないと、皆に迷惑がかかっちゃうし」

「大丈夫、周りの皆だって助けるよ、お互い様だしさ」

 橋詰さんの得意な事を、しっかり頑張ってくれればいいんだよ、と伝える。

「ほら、データ入力の早さと正確さは皆が頼りにしてるんだから」

 まだ少し、目の赤いオウムちゃんが、自分を見つめる。

 ぼろぼろっと、大粒の涙が、溢れて来た。

「えっ、どうしたの!」

 何か悪いことを、言ってしまったのだろうか。おろおろしていると、彼女は目を伏せて、涙を拭う。

「すみません、何だか嬉しくって」少し表情の和らいだオウムちゃんが呟いた。

「今まで、人に迷惑かけてばかりで、誰かの役に立つなんて考えたことも無かったから」

「僕は、笑顔の橋詰さんが向かいに居てくれるだけで嬉しいけどな」

 さすがに顔を見ては、言えなかったが、真正面の夕日を見つめながら、口に出してから後悔する。

 彼女の反応が、わからないのが怖い。

 じっと、こっちを見ている気配はするが、横を見る勇気はない。

 不自然な沈黙が流れる。


「ありがとうございます」

 そう言った声には嫌そうな感じはなかった、むしろ。

 大げさに伸びをしながら立ち上がって少し距離をとって振り返る。

「さーて、戻るか!」

「はい!」


 席に戻ると、全員がほっとした笑顔で、迎えてくれた。

「よっしゃ、もう仕事は終わり終わり!どっかでご飯食べて帰ろうぜー!」

 いつもはウザい、同僚の誘いを、皆が受け入れる日が来るとは。

 急遽開催された食事会には、課のほぼ全員が参加し、ついでに自分の快気祝いまでしてもらった。

 オウムちゃんは僕の隣で、にっこりと笑っている。


 いつまでも、そんな日が続くと思っていたんだ。

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