ついに発表。
「先輩、お疲れ様です」
いつものオウムちゃんが、にっこり笑う。
え、いや、どうして。うまく言葉が出てこない。
「すみません、行かなきゃいけないんで、また後で」
ステージへ向かう後姿を、言葉もなく見送った。
「よし、じゃあそっち持って、せーの」
予想外の事態に出くわし、子供でもできるような、お使いを、中途半端にしか、やり遂げられなかったので、力仕事に、精を出している。
段ボールから、次々に出される、ロボットたち。次のステージイベントでの、発表が終わったら、一斉に会場に出し、お客さんと、直接応対するんだとか。
「へー、こいつが新製品すかー」
「そうそう、ヒト型ロボットを一般向けに発売するのは、業界初なんだってさ」
開発部の人が、一体ずつ起動していく。
真っ白で、つるんとした頭に、まん丸の眼が愛らしい。
けど、普通のロボットだった。
タブレット端末を内蔵し、会話の補助をしている。
「コンニチハ、ハジメマシテ、ボクハ、アルマ、デス」
うわっ、喋った!と同僚がはしゃぐ。
笑いながら見ていた開発の人がロボットに向かい話しかけた。
「ちょっと静かにしてて」
「ワカリマシタ」
小声でロボットが答えたのに、びっくりする。
少し屈んで、起動されたばかりのロボットを、じっと眺めると、目が合った気がした。気のせいかと思ったが、姿勢を直すと、上を見上げるように、頭の角度を変えて、視線が追いかけてくる。
「結構しっかり認識するでしょ、会話もだいぶ頑張ったのよ」
開発の人が、満足げに、頷いている。
オウムちゃんに比べれば、全然大したことないじゃないか。
「わ、これが新製品ですか」
当のオウムちゃんの声がして、振り返った。
ロボットと見つめ合うアンドロイド。
こちらに気が付いて、アンドロイドが、にっこり笑う。
「営業の方がインフルエンザだとかで、急に頼まれちゃいました」
そう言えば、オウムちゃんの手元には、お盆が。さっきは、水とコップが、のっていたっけ。どうやら出演者に、持って行っただけのようだ。
「橋詰ちゃんも休日出勤仲間か、ヨシ、代休は飲みに行こうぜ」
相変わらず、テンションの高い同僚を、苦笑いで、見守るしかできなかった。
まだ、頭の中が混乱しているようだ。
ロボットの黒い丸い目が、少し心配そうに、見守ってくれている気がした。




