表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/33

 泣いた――――!!!!


 やばい!!

 今どこに泣く要素があったんだ?

 くっ!!こんな時こそ、女ったらしの『ミドラドル』の出番だ!!

 と思っていたら、『ミドラドル』も焦っている!

 役に立たねー!!

 女の涙に弱いのは、誰でもいっしょだよ!

 そりゃそうだ!


 そもそも何で泣き始めたんだ!?


 この場合の、理由の選択肢は4つ。

 

 ①俺が今している洗濯が下手すぎて泣いた

 (でも以前は何も言われなかったし)


 ②昨日までの俺の仕事内容が酷すぎて失望した

 (これはちょっと考えられるな。ヘドロとか黒い悪魔とか、女の子は嫌いだもんな)


 ③ただの花粉症

 (この世界にあるのか!?可能性は薄いな)


 ④薬に感動

 (希望はこれだ!むしろこれ以外は考えたくない)


「大丈夫か?」


 少し躊躇ったが、手を拭いて、ミリアの頭を撫でてみる。

 ミリアは驚いて顔を上げる。


 しまった!これはセクハラかー!!

 訴えられる?!


「すいません。ちょっと…目にゴミが…」


 まさかの⑤番――――!!


 ここはウソでもいいので、④と言って欲しかった…!


 秘かに落ち込む俺に気付くことなく、ミリアは涙を拭く。


「ああ、あんまりこするな、赤くなってしまう」


 ポケットからハンカチを取り出すと、少し前かがみになり目線を合わせるように覗き込み、ミリアの涙をそっと優しく拭く。


 おい!これもセクハラじゃないのか?


 と思ったら、ミリアは真っ赤になって俺を見上げてくる。


「だだだだだいじょうぶです!!!」


 動揺がすごいな!

 …顔がいい奴はいいな、おい!!


これハンカチはやるから、顔洗いに行ってくるか?」


 そう言うと、ミリアはすごい勢いで顔を縦に振って、行ってきます、と言うと走って行ってしまった。


「…小動物みたいだな…」


 俺の胸くらいまでしか身長がないミリアは、ふわっふわの赤毛に大きくてくりっくりの瞳をしている。

 リスかハムスターを思い起こさせる。

 だけど、ミリアはあれでも俺より50歳は年上だ。

 本当にエルフって年齢がよく分からない。


 基準が欲しいが、どうやら外見の成長が止まったら、大人って扱いのようだ。

 となると、『ミドラドル』はまだ子どもの部類ってわけだ。

 だって、俺はまだ身長が伸びている。そろそろ190㎝を超えそうだ。

 いや、もう超えているかもしれない。

 なにしろ基準のものがないので、推定の身長だ。

 さすがにもう身長はいらない。



 ミリアはしばらく戻ってこないだろう。

 座って洗濯を始める。

 黙々と桶で布を丁寧に洗う。


 小さな中庭の一つとはいえ、上から日が照り付けているのでまぶしい。

 ミリアの手荒れが気になるので、今日は俺が洗って、ミリアが干すということにした。

 ミリアは、ダメですダメです、と拒否していたが、押しきった。


 ん?もちろん洗濯の話ですよ。


 

 しばらくごしごしと洗っていた。


 ふと顔を上げて、あれ?と思う。


 顔を上げたことに、深い意味はなかった。

 気配とかを感じたわけでもない。


 だけど、顔を上げ、目を向けた先に『それ』はいた。




 なんだ?!


 座り込んで桶に向かい布を洗う姿勢のまま、俺は固まる。


 なんだ?!!


 

 それは、一言でいうなら 影 ―――


 小さな中庭の植え込みのかげに、何か黒くうごめくモノがいた。


 あまりに黒い『それ』はその形状さえもよくわからない。

 

 それは、人のようにも見えたし、まるで違う『なにか』にも見える。


「っっっ…!!」


 なんだあれは!?

 なんなんだあれは!!!??

 

  

 黒い『それ』はそこから動かない。

 いや、正確には、うごめいているのだが、移動しようとはしない。


 意志があるのか?

 だが、気持ち悪い。

 あれだ!

 某国民的アニメ映画に出てくる、真っ黒で丸い生き物がいっぱい集まったもののようだ。


 『なにか』は分からないが、ひどく嫌な予感がする。

 魔物か?それに近いものか!?


 まずい!!剣は置いてきた!


 あんな得体のしれない『なにか』に声をかけるには、あまりにも装備が弱い。


 心臓が早い。

 心拍数が上がっていく。

 どくどくとうるさい音が耳のすぐ傍でする。


 向うに聞こえてしまいそうだ。



 ああ、そうだ!俺は…


 

 もう二度と…



 ぐっと手に力を入れる。

 あんな意味の分からない『なにか』に声をかけるのは、ひどく抵抗がある。


 だけど…放っておいて、もし『ミドラドル』の家族に害があるものだったら?


 そんな事になったら、俺は…


 また後悔してしまう!


 ふっと笑う。笑ってしまう。


 こんな想いが恐怖を凌駕するなんてな…


 『なにか』に視線をむけたまま、立ち上がる。

 

 そして、『それ』に向かって歩き出そうとした!!


 『なにか』が俺に気付いたように、少し植え込みから離れようとした。


 俺は、少し震える足を前へ出す。





 その時!!!


 

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ