30 とある親友の誓い②
「すまない…。
迷惑をかけた…」
王子はぽつりと謝罪を口にした。
服も安い服だが、着替えさせて、腰まである銀髪を頭の高い位置で括ってやれば、顔がよく見えるようになった。
おいおい。
末恐ろしいガキだな…。
女泣かせになるぞ…
確か、こいつはそっくりな双子の弟がいるんだったか?
この顔がもう一人!?
冗談みたいな話だ!!
顔色はかなり血色がよくなったが、眼は相変わらず、どこを見ているのか分からない。
目の前にいる俺さえも、その眼には映っていない。
なんだ、こりゃ。
死人か?
それが印象だ。
「お礼を…」
財布を探しかけて、手を止めた。
「ああ、そうか…。財布は子どもにスラれた…。
じゃあ、剣…。
剣は、ひったくられたんだったな…」
おいおい…。
すでに被害にあった後だったのかよ。
命があったのは、運が良かったのか、こいつにとっちゃ悪かったのか…。
王子は、まだ何か持っていないかと、持ち物を探す。
が何もなかったのか、耳にはめていた石を外して、俺に差し出す。
「今、これしか持っていない…。
すまない」
受け取って、金色の石を見る。
こいつは…!!
「いや、こいつは受け取れないぞ。王子」
何考えてんだ!?これは、孤児以外は必ず持っているものだ。
子どもが生まれた時に、親が魔力を込めた小さな石を子どもの片耳に穴を開けて付ける。
ほとんどは、その子どもの髪か眼の色だ。
そこで気が付く。
なぜ、金色なんだ?
銀色か、青じゃないのか?
「…いいんだ…。今、それしか持っていない…」
「いらねえ!」
石を突き返す。
受け取らなかったんで、耳を引っ張って、付けようとする。
「いた!痛い!!何をする!!?」
「うるせえ!!!
お前がいらないからって、俺に押し付けんな!!」
王子は一瞬、呆気に取られた顔をして、俺を見る。
お!ようやく眼に光が戻ったな。
今のうちに、さっさと石をつけ直す。
「は…は…は。
ははははははははははははははっはっ!!!
っはははははははははははははははは!!
はっはーはははは!!!」
急に両手で顔を覆って、壊れたみたいに笑い出す。
思わず、掴んでいた手を離して、数歩下がる。
なんだ!?
こいつ、いかれてんのか!?
茫然と見ていて、気が付いた。
こいつ…泣いてんのか??
顔を覆っていた手が濡れている。
「うん!そうだよな!!
いらないよな!!こんな石!!
すまない!悪かったよ!!」
はあ、と息を吐いて、顔を手で覆ったまま動かなくなる。
なんだ?
こいつ…見ていてイライラする。
なんだってんだ?
14?15だったか?そんなガキのはずだ!
なのに、なんだってこんな眼をするんだ?
ふと思い至る。
城の情報は、正確ってわけか…?
父親の国王は偉大すぎる祖父さんに逆らえない。
母親は子を平等に扱い過ぎて、逆にそれが差別に近くなっている。
兄妹たちは、それぞれに問題児。
祖父さんは差別なんだか、区別なんだか、よく分からんことをしている。
んな育て方をするぐらいなら、さっさと養子に出すか、もっと魔力差別が少ない田舎ででも育てりゃよかったんだ。
まぁ、田舎は田舎で、あの髪の色じゃあ受け入れにくかったのかもしれないが…。
「じゃあ、礼はまたでもいいか?」
王子が立ち上がる。
「ああ、お前が自分で持って来いよ!」
強く言うと、一瞬きょとんとした。
「わかった!俺は、ミドラドル。ミッドでいいよ」
「アルマーだ」
俺の後ろから、ネコのため息が聞こえた。
こいつが帰ったら、説教が始まりそうな予感だ。
「アルマー?」
おっと!王子さまは意外に情報通だな。
名前だけで気付いたらしい。
じっと俺を探るような眼で見ている。
「そんなに見ても、サービスはしねえぞ」
おどけた様に言うと、少しだけふっと笑う。
笑った!!
これは、あれだな…
慣れない獣を手懐けた時の様な感覚だな…。
少しだけ嬉しくなった俺の気分は後のネコの説教で急降下した。
いいじゃねえか、名前くらい…!!




