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19

 深夜、部屋で待っていると、天井付近に三つの気配を感じた。


「遅かったな」


 姿を見せる前に声をかけた。


 ざっと三つの影が下りてくる。


「やはり気付かれますね。お待たせして申し訳ございません」


 ひょろっとした男は、笑みの顔で頭を下げる。

 三人は跪いたままだ。


「いや、それより、俺に何か話があるんだろう?」


「はい、魔王陛下」


 俺は頭を抱えてしまう。


「ちょっと待て!


 どうして俺が、魔王陛下になるんだ!?」


 男は、おやと首を傾げる。


「…違いましたか??」


「違う!なんでそうなるのか不明だが、魔王陛下は魔国にいらっしゃるだろう?


 現在もいらっしゃるはずだ。恐れ多いことを言わないでくれ」


「…今現在いらっしゃるかは知りません。


 お会いしたこともありませんし…」


 ????

 それで、なんで俺が魔王陛下になるんだ?

 そんな、死亡フラグを立てようとしないでくれ。

 恐ろしい!!


「ですが、ワタクシたちの存在を見つけられるのは、魔王陛下に他ならないのです」


 ん?

 どういうことだ?


「…ですので、あなたは魔王陛下と思ったのですが…」


「違う。俺は、生まれも育ちもエルフだ」


「世を忍ぶ仮の姿…」


「ということもないから!!」


 男は首を傾げる。


「おかしいですね??

 

 では、なぜあなたはワタクシたちのことが見えるのでしょうか?」


 なにか、やはり、とかぶつぶつと言っている。


 知るか!!

 俺が知りたい!!


「で?お前たちは何だ?」


「ですので、妖精族で…」


「それは分かった。


 俺が聞きたいのは、


 どうしてシュヴァルツの王弟を付け回しているのかってことだ」


 男は、笑みの形を壊さない。


「そう言えば、王弟は、誕生会も終わったってのに、どうして10日も滞在しているんだろうな?


 護衛が誕生会の前日に護衛対象を放置してあんな酒場にいたのもおかしいな。


 それで…?」




「お前たちの目的は、なんだ?」




 俺は睨むように男を見据える。

 男は、しばらく考えていた。ふうと息を吐く。


「…第三王子ミドラドルさま…。


 剣も弓も頭脳さえも何の才能も持たなかった王子…」


 ??

 なにが言いたいんだ?


「今日、あなたのことを少し調べました。


 エルフの国は平和な国で、滅多なことがないと他国の出入りのない閉鎖的な国…

 あまり情報的には、エルフの王族については価値がないのですよ。

 ですが、そこまでは、他国にも伝わっている情報です。


 そして…」


 男は立ち上がり、ベッドに座ったままの俺を見下ろす。


「魔法の才もないことは…今日、初めて知りました」


 へえ、他国には魔法の才がないことは秘密だったのか。

 というか、情報…?


 こいつら、まさか…


「ハイ。ワタクシたちは、『影』です。


 裏の世界で情報を生業にしている者です」


 驚きだな。

 妖精族が、忍者の働きをしているとは…


「しかし、すばらしいです!!

 

 ミドラドル王子!!そこまで、理解できておいでとは!!」


 ん??なんかいきなりテンション上がったな。


「王子!!ワタクシたちを部下に持つ気はありませんか?」


「……は?」


 なにを言っているんだ、こいつは?


 今の話の流れで、どうしてそういう方向になるんだ?


「ワタクシたちは、いまだ主を持てずにおり、ただ依頼によってのみ動く一族でございます。


 ですが、目的もなく生きていくのは、いささか飽きました。


 あなたならば、ワタクシたちのことを上手く動かせるのではと思うのです」


「はあ…。何言ってるんだ?


 お前らの能力があれば、それこそ魔王陛下にもお仕えできるだろう」


「いいえ、ワタクシは、会ったこともない魔王陛下に興味はございません」


 …それはちょっと、不敬じゃないか?


「俺にお前たちを上手く動かせるとは思わないのだが…」


 男はにまりと笑う。


「では、一つ。情報をお渡しいたします。


 それによって、ワタクシたちをご自分のためにお使いくださればよいのですよ」


 意味がわからない。

 こいつらのメリットが何もないように思える。


 なぜ、こんなことを言い出した?


 考えても分からない。

 

「わかった。言ってみろ」


 どんな情報かは知らないが、それでこいつらの目的が分かるだろう。

 そんなことを考えていた俺に男は、爆弾を落とす。



「西の国で…政変が起こりかけました」



 …西の国…。


「なるほど…。


 それは大層な情報だな」


 俺は、にっこりと笑う。


 男はそれを見て、満足げにまた口を開く。

 

 それは、恐らく、この国の誰もが知らない情報だった。





 この三人。


 呼び名を訪ねると、ひょろっとした男はおさと呼ばれていて、他の二人は名がないと言った。


 好きに名をつけてくれと言うので、長は『ナギ』。


 男の方は、見た目硬そうな筋肉と顔もごつい印象だったので『ゴウ』。


 女の子は、予想以上に可愛い子で、髪の毛も黒色でふわふわしていて、羽が(お願いして見せてもらいました。男の羽はいらん!)蝶のようだったので、『テフ』と呼ぶことにした。


 なんだか、三人ともいたく感動していたが…


 俺が考えた名前は自分的にセンスがないのはわかった!


 他の一族の者の名前もと言われたが…何人いるんだ?


 …やばいこれ以上名前が出てこなかったらどうしよう。





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