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ああ、これは転生というやつか…
気付いたのは…
いや、別に気付きたくなかったが…
20歳の誕生日だった。
朝起きたら、今の記憶と前世の記憶がごっちゃまぜで、大混乱だ!!
そりゃそうだろう!?
とにかく想像してみてほしい。
ある日急にだ。
20歳で死んだ記憶と、違う世界(この場合、日本のだが)っぽい記憶が、いきなり思い出されたら…
それは小説にあるような、特別感は全くなく。
ただの二重人格に近い。
すでに人格ができあがっている20歳の人間?に、何の悪意だろう。
そして、そんなことは誰にも言えない…
正直、誰かに、転生しました(笑)とか言っても、信じてもらえない気がする。
というか、現代の日本で、そんなことを言うやつは、いわゆる……病と言われるわけで…
(え?聞こえなかったって?気のせいだよ!はっはっは)
ああ、でも…
当たり前のように生まれたので、気付かなかったが、日本の記憶があるからこそ、これはちっとテンションが上がるだろう。
転生先は、いわゆる、エルフってやつだ。しかも、王子!!
そして、うん、さすが!!
顔はかなりのおっとこまえ!!
きらっきらの銀髪にさらさらの長い髪。
毛穴ないだろってくらいキレイな肌。
青い切れ長の瞳。高い鼻筋。少しとがった耳。
それに、高い身長。細身だけど、筋肉の付いた身体。
よし!!せめて外見だけは良くないと…かなり救われない…
なぜなら、この世界での俺の立ち位置が相当…本当に…末期だ。
終わっている。いや、終わりに近い。
この上、さらに終わりに向かうような行動はできない!!
とにかく、俺は隠す!!
間違ったって、言わない。
どんなに、1度は夢見たような魔法と剣の世界に生まれ変わっていたって!
隠すしかない!!
軟派でバカで、魔法も剣の才能ない、第3王子と言われてたって…
絶対に言うもんか!!
出来のいい兄弟に囲まれすぎて、父親も母親も祖父さえも偉大なのに、なんの才能も引き継げなかったとか、双子の弟に全てを持っていかれて生まれた王子とか言われても…
前世のことなんて、無視だ、無視!!
誕生日なのに、謹慎中で、次に何か問題を起こしたら、勘当される身であっても…
隠すしかない…だろう?