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ストレート  作者: 業平アキラ
第七章
61/63

57:ゴールデンな予定

「ゴールデンっ♪ゴールデンっ♪ゴールデンウィークぅ♪」

「たはっ!なんだその歌?」


午後四時半過ぎの生徒会室に響くウキウキ感だだ漏れな歌に、篠村薫は素直に笑った。

笑われた三崎花子は頬を膨らませて、肩を揺らし続ける幼なじみを睨んだ。


「むぅ、なによぉ。カオだって同じ気分でしょぉ?」

「まー、カオもルンルンだけど、創作した歌は歌わないっすよ花さんや」

「だってぇ、TOKARISHIN(トカリシン)に会えるんだよぉ?思わず歌っちゃうでしょ?ねぇ、伊奈実ん♪」

「え?歌は私得意じゃないっていうか…でも、楽しみだよね」


まさか自分に話を振られると思っていなかった伊奈実はポロっと感想を言ってしまった。

歌が得意じゃないのはともかく、楽しみなのは間違いない。

何せ、芸能人に会えるのだ。


「三崎…話を振る相手を間違えたな…くくっ」

「司のくせに、五月蝿いのよぉ!」


その微妙な返事をうまく拾ったのは司だった。


「”くせに”って何だ?三崎のくせに」

「ふんっ!くせにはくせによっ!」

「ふっ…三崎、勝負だ。今度のテストで負けた方が”くせに”って言っても文句なしな」

「いいわよぉ司ぁ。私が勝つんだからぁ」

「なんだと?」


バチバチと音がしそうな二人の視線が机を挟んで絡んでいる。


「はーい!レフリーは私、カオが務めまーす!

まずは前回の学年テストの成績を比較してみちゃうぜ!」


勝負事と聞きつけて元気に間に入ったのはカオ。

彼女のおかげで空気が少し和らいだ事に伊奈実は少しホッとした。


「司、お前この前何番だったんだ?」

「十五番」


「おぉ…!」

この場に居る生徒会メンバーからのため息がもれた。


「さすが”読み”の特殊能力者!」

「特殊能力って篠崎お前…」

「ん?」


司のため息にカオは疑問符が頭に一つ浮かんだ。


「篠ちゃん、表現がアホっぽくて空気だだ壊しだって」


それを言葉にした冒険者は、部屋の隅でパイプ椅子を三つ並べ、長い足をそこに伸ばしていた。


「紺(こん)ちゃん…マジか?」

「うん、マジ☆」


明るい笑顔であっさり本音を返して、カオを真っ白にさせた紺ちゃんと呼ばれるこの人は、秋穂 紺(あいお こん)くん。

秋穂くんも生徒会のメンバー。

明るくて、環南先輩と一緒に盛り上げ役をよくしてくれている。

天然のゆるっとした栗色の髪の毛が彼の人懐っこさを表していて、彼は女子に人気。

ちなみに二年七組で私たちとはお隣のクラス。


「はーい☆篠ちゃんが固まっちゃったので、この紺がレフリーしちゃうぜ!」


真っ白なカオを放置したまま、紺が愉快に語り出して空気が強制的に元に戻した。


「花サマは何番だった?」

「…十七番」

「あちゃー!負けてるね!」


紺の一言で花までも固まりかけたが、これで負ける様な花ではない。


「い、いいのよぉ。逆転した方がドラマは盛り上がるんだからっ!」

「んー!さすが花サマ!強気な感じがいいね☆

司は何か言う事あるかい?」

「いや。間違いなく勝てそうだから何も言わないでおく」

「って言ってるじゃんー☆」


「くくっ…」

軽快にツッコミを入れた秋穂くんがおかしくてすこし笑ってしまった。


「九谷嬢も笑ってくれた事だし、この勝負の景品決めようぜ☆」

「秋穂ぉ、あんた話聞いてなかったの?”くせに”よぉ」

「いや、それだけじゃつまんねーって。面白くしなきゃ!」


「なんだなんだ?面白い話かー??」


生徒会室の扉を勢いよく開けて入って来たのはこの部屋の主、環南先輩と同じく生徒会のメンバー北目璃子(きため りこ)ちゃん。


「あー、環南先輩ナイスタイミング☆」


似た者同士な感じの二人は、秋穂くんの手早い説明で悪魔のしっぽを生やし始めた。


「皆さん、注意してくださいね。あんなに楽しそうな紺見たの久々ですから嫌な予感しかしません」


私たちの説明を聞いた璃子ちゃんが落ち着いた声で状況を分析した。

彼女と秋穂くんは幼なじみだから、お互いがお互いに詳しい。



「それでは環南先輩が景品を発表しまーす☆」


手をひらひらとさせて秋穂くんが環南先輩をセンターへ迎え入れた。



「景品は…今年のハロウィン・エンペラー!」


「「「「はぁ?!」」」」



環南の発言に紺以外の皆が唖然とした。

ハロウィン・エンペラーはイベントの頂点に君臨してどんなパーティーにするかの舵を全て握る存在だ。

そして誰よりも仮装に気合いが入っていないといけない。

昨年環南が決めて勝手に楽しんだそれを、今年はどちらかが務めるということになる。

つまり、全然嬉しく無い景品なのだ。


「環兄ぃ、嫌がらせか?」

「いや?自分でどんなパーティーにでもしたてられるんだぞ。スッゲー面白いじゃないか。それが嫌がらせな訳あるかよな?」

「ですよねー☆」


カオの率直な意見に、環南と紺は至って真面目にそう答えた。

この二人からすれば、自分が一番やりたい事を差し出したつもりだが、周り…特に裏方を支えるタイプの司と花にとっては至極迷惑なものでしかない事に、陽気な彼らは気付いていない。


「司ぁ、私が悪かったわ…」

「三崎、俺も悪かった…」


顔を見合わせ、事の発端の二人が折れた。

なんとかして、この絶対的に要らない権利を互いに被害の無い様に放棄したい様だ。


「ケンカ両成敗で終わりましたね。環南先輩、紺。エンペラーはお二人でどうぞ」


環南先輩や秋穂くんの入る隙を与えずの、絶妙なタイミングで璃子ちゃんが二人へ権利をさっと返上した。


「じゃー俺らでジャンケンでもして決めるか?」

「そーっすね」

「先輩、紺。そちらの隅ででも決めていてください。皆さんには、TOKARISHINさんへの挨拶の日程についてお話ししますね」

「リッコ、ちょっと僕らに冷たくね?」

「主題へ戻そうとしているだけよ。邪魔しないで紺」


わー、璃子ちゃん一刀両断が上手いな…。


バッサリ切られた紺は環南に引きずられながら隅っこに移動した。


「さて、ここに居る皆さんで事前挨拶へこのゴールデンウィーク中に行くのですが、具体的な日付が先程決まりました」

「「待ってましたぁ!」」


花とカオがきれいにハモって璃子ちゃんの声に答えた。


生徒会メンバーにカオと私をプラスした七人で正式に行く事になったのは一週間前。

なぜプラスが居るかと言うと、私は放送室からの喋りで、カオは…とまぁ、ライヴに関わる為。


「TOKARISHIN さんの所属事務所で金曜の十七時から、三十分のお時間を頂きました。短いですが、先輩…環南会長なら話をまとめる事に関しては問題無いと思います」


質問、ありますか。との璃子の問いに、司が手を上げ口を開いた。


「行くって話が出た時からずっと思ってたんだが、環南先輩がまとめるんなら、俺ら要らないんじゃないか?」


司くん、核心をついたなー。

確かに環南先輩が居ればそれで話が全部まとまるのは間違いない。

ならば、他のメンバーは…特に私とカオは要らない筈だ。


「なに言ってんだ、要る要る」


それに答えたのは隅に追いやられていた環南だった。


「もし、俺がー…」


ぱたぱた両手を羽ばたかせながら司くんの周囲を動く先輩。

それを見た司くんの表情がみるみる”うわぁ”と言いたげなものに変わる。


「はい司ー、読めたよな!」


先輩はそう言って司くんを促した。

もし、俺が?

それだけで司君は何を読んだの?


伊奈実の…いや、この場の皆の理解を遥かに越える司の“読み”は彼のこぼした大きなため息の後、語られる。


「もし、俺がこの明晰な頭脳を披露しちゃったりなんかしたら、ルックスも悪くないし…ほら、スカウトされるかもだろ?

そうなったら引き継ぎがいないとダメだろうがよ♪…とか言わないでくださいよ」


「おう、当たり!」

「「「「おぉ…!」」」」

「環ちゃんそんなこと考えてたのぉ?!」


指をパチンと鳴らして正解を喜ぶ環南に、皆が司の凄さに関心する中、ただ一人間髪入れずに花が問いただした。


「んー?」

何故かその問いに音だけの疑問を返す環南先輩。

その答えに花の表情が雲ってゆく。


そうだよね。環南先輩なら、可能性ゼロな話ではない。

そうなったら、花と先輩は離ればなれになって…。


「三崎、大丈夫だ。環南先輩の冗談だからな」

「へ?」


それを救ったのはさっき読んだ司くんだった。


「ですよね、先輩」


さすが我部下、副会長殿だと苦笑して先輩は花の正面へ回った。


「あぁ。」


短くも力強く答え、彼女の頭に手を置いた。


「俺はどこへ行くとしても花公だけは連れて行くから。離れるなんて絶対ないからな。安心しとけ」


「………/////」


先輩の言葉に花は真っ赤になって、うつむいた。


「先輩カッチョイー☆」

「あー、城ができそうなくらい砂吐きそう…」


甘い空気を紺の軽さとカオのいつもより少しグレードアップした砂台詞がさらっと舞い込んだ。

が、真に空気を変えたのは璃子だった。


「まだお知らせすることがあります」

「北目、何?」


冷静に言葉を返す司。

この二人は、環南の作る甘甘な空気に惑わされないらしい。


「今回、行く場所が場所ですので移動が車です。生徒会顧問の沢城先生にお願いしましたが車は運転手を含め七人乗りだそうで、残りのお一人はもう一台の方に乗っていただきます」

「四、三とかに別れて乗れないのか?」


その問いに璃子は頭を横に振って否定した。


「そのもう一台の方には後部座席に、打ち合わせに必要な書類や荷物を乗せますから、六、一で別れるしか無いんです」

「そうか…手っ取り早くジャンケンでもして決めるか?」

「そぉーだねぇ」

「おう!負けないんだからな!」

「篠ちゃん気合い入ってるぅ☆」

「そう言う紺、あなたも十分楽しそうよ」

「俺は勝つ予感しかしねーな!」


司の一言で、皆それぞれに拳を前に出した。

何だかんだ言っても勝負事には負けたく無い人がここに集まっているのだ。

それに一拍遅れて伊奈実も手を出した。



「「「「「「「ジャンケンポン!」」」」」」」


勝負はたった一度で決まる。

<キャラクター覚え書き>

秋穂 紺

二年七組。ゆるい天然パーマな明るいお調子者男子。

足長い。

女子人気高い。

「楽しければそれが一番」な性格。


北目璃子

二年七組。黒髪ポニーテールな冷静現実主義少女。

しっかりとした物言いが特徴。

紺とは幼なじみ。

身長低め。

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