6:治療とおまじない
「痛ぅっっー!たいたいたい
痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「ハハハ♪消毒って痛いよねぇ~」
あれから少しだけ傷ついていた額を治療してもらっているはずなのに、何だか消毒で痛めつけられている気がする。
この人、面白がってないか!?
暴れバタつかせていた足を止め、ニコニコ顔の珠洲先生を不信感たっぷりの眼で見上げた。
「ん?どーしたの?九谷さん。消毒、今終わったよ」
「なら、放してください先生」
なぜかまだ珠洲先生の膝の上でホールドされているこの状況が、いたたまれない。
「ふふ、九谷さんそんなに消毒嫌だったの?
たかが消毒でそのリアクションしてくれるの君か小学生ぐらいだよ〜よしよし」
しょ、小学生……誰か私を消してくれ。
話を聞かないどころか、嫌いな消毒ネタでさらに遊ばれ、おまけに頭をよしよしされ完全に打ちのめされた。
「いやぁ、頭突きでガラス割ったわりには、額の傷もすごーく浅いかすり傷と何だかわかんない鼻血だけで済んだだなんて奇跡だよねぇ~」
「あの、もう放してくださ…」
「キ・セ・キなんだよ、九谷さん。
普通なら大怪我になるとこだ」
さっき見たのと同じひどく真剣な瞳が伊奈実を映していた。
確かにあの時の行動はいくらなんでも
危険そのものだった。
改めて先生は私の為を思って言ってくれている。
それが瞳を通して真っ直ぐ伝わってきた。
「…すみません、でした」
「うん、わかってくれたみたいで嬉しいよ。
自分を傷つける様な無茶はもうしないでね」
「…はい」
「うん、お説教おわり~」
変わってるけど良い先生なんだなこの人。自然と心がそう思った。
「じゃあ、絆創膏貼るからそこに座ってねぇ~」
「はい」…?
ようやく拘束されていた体を解放されたのに、何だか胸の奥にふしぎな感じがした。
珠洲先生に打ちのめされて、私おかしくなったんだろうか?
いや、頭からガラスにいったせいだな。
なんて自己分析しながら伊奈実は椅子にこしかけ前を見た。
「じゃあ前髪、上げてね〜。うん、そんな感じでいいよ」
「あの、手…」
なぜか前髪をかきあげた手を上から先生の手が押さえた。
まだ私が暴れると思っているのか。
まぁ、あれだけ騒いだし信用は無いわな。
「あ!傷、軽いけど治るまで診るから一日一回、ちゃんと保健室に来てね〜」
「わ…わかりました」
「ハハハ、約束だよ〜」
はい、小指だして〜と指きりまでさせられた。
この扱い、もしかしなくても…
「珠洲先生、私小学生じゃないんですけど…」
じろり目で睨んだが、相手はニコニコ顔をさらに深めた。
「傷が早く治るように、おまじないしないとねっ」
うゔんっと先生が喉の調子を整えた。
「早くよくなれ〜伊奈実ちゃんの傷よくなぁれ〜♪」
ついに下の名前呼び。よく知ってるな…ってか完全にちっちゃい子扱いだよ。
伊奈実は目の前の先生はおかしいんだと思うことにした。
チュッ
「!!!!!」
「はい、おまじない終わり〜」
おまじないとともにペタリと絆創膏が額に貼られた。
い、今おデコに…く、くちびるが。
必死で伊奈実は自分を立て直して、目の前の珠洲先生を睨み上げた。
「…いあつかい…んな」
「ん?どうしたの?伊奈実ちゃん」
ニコニコ顔が怒りのボルテージをあげた。
「小学生扱いすんなっっっ!!」
「え?もう少し大人な感じで良いってこと?」
「そうです、高こっっっっっ!!!!!!!!!!」
”高校生扱いしてください”この台詞を言う口は先生の唇で塞がれた。




