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ストレート  作者: 業平アキラ
第六章
59/63

55:カレ、カレー・珠洲視点

カレ…カレ…カレ…カレ…カレ…カレ…カレ…カレ………


なんて事だ…。

頭の中をずーっとリフレインし続ける、伊奈実ちゃんの一言。


「カレか…」


彼氏。

伊奈実ちゃんの隣に居た青野の制服の男子…。

そんな気配無かったのに、いつの間に?

うぅ…伊奈実ちゃん僕そんなこと聞いてないんだけど…泣



「坊ちゃん、匂いもまだ広まってないのによく分かったな、夕飯ビーフカレーだって伊藤さん言ってたぜ」


厨房近くの部屋のソファーに突っ伏していたら、僕の気配を察したらしい日野がやって来た。


「違うよ〜日野。カレーじゃないよ〜」

「いや、カレーだし」

「カレーじゃないんだってば〜」

「あぁん?どういうことだ坊ちゃん?」


話が見えなくてちょっと苛ついた日野が僕の向かいのソファーにどかりと腰を下ろした。


「カレーじゃなくてカレ!」

「彼?」


ぽかんと口を開けて聞き返して来るこのパティシエに八つ当たりしちゃってもいいかな?

いいよね。


「彼女が僕に…先生、カレのこと知らないんですか?って言ってたの!僕の恋の危機!!!」

「なに?!おいおい、ぼっちゃん!お嬢ちゃんに彼氏が居たのかよ!?」


前傾姿勢になって僕に聞き返して来る日野。

ちょっとの情報でおおよそを理解しちゃうなんて…僕の家の使用人は優秀だな…ははは。


「坊ちゃん、詳しく!!」

「それがさ_______」


僕が伊奈実ちゃんに電話をかけたあたりから、その言葉を聞いて伊奈実ちゃんに分かってもらいたいって伝えた所までを、半分泣き言な感じで話した。


「ふーん。なるほどなー…っブハッ!坊ちゃん面白いのな!」


突然腹を抱えて笑い出した日野。

気のせいじゃないなら、涙まで流してるし。

こういうの爆笑っていうんだよね?


「…何が言いたい訳?」


子供の頃からの付き合いだから僕の性格よく知ってるよね。

僕の恋の危機を笑うなんて…さすがに怒るよ?


「あー、そういうんじゃねーよ坊ちゃん」

「じゃあ、どういうこと?」


「坊ちゃんもまだ修行が足りねーってことだな」

「ん?」


結論から言ってるみたいだけど、まだ色々見えない。

日野の言葉を促すように短い音だけを返した。


「ガキの頃と違ってさ、坊ちゃんはバイリンガルだけどこの国にいる時は意識的に日本語を話しているのに俺は関心してたんだけど、坊ちゃんも完全には日本語をマスターしてないって事だ」


そう言ってにやりと笑う所は昔と変わらない。


「何が間違いなの?ホムラ」

「お、懐かしい呼び方だなー」


焰(ホムラ)。日野のファーストネーム。

夏休みしかここに居られなかったあの頃、日本語の微妙なニュアンスを遊ぶ事で教わっていた、その名前で日野を呼ぶ。


「お嬢ちゃんが言ったのは英訳すとDon't you know who he is?ってところだな」

「he…彼…loverの彼じゃなくて?!」

「その後にお嬢ちゃんがその彼は生徒会副会長だって言ってたろ?きっと坊ちゃんが知ってると思ってたからその言い方だったんだろうな」


「そっか〜♪」


日野の言葉でストンと納得できた。

だから伊奈実ちゃんはいつもに増して、先生の言ってる事理解できないんですけど…的な空気出してたんだな。

うんうん!


「カレとカレーみたいな〜?」

「そうそ。俺のは音の違いってやつだけどまぁ…間違いに近いっちゃ近いな」

「勉強になったよ〜ありがとう日野〜」

「我らが坊ちゃんの幸せの為なら☆」

「ははは〜。あ、そうだ!伊奈実ちゃんの所に行かなくちゃ!」


僕の誤解のまま今日が終わっちゃうのは嫌だ!

あぁ、それにごはん一緒に食べるって約束は僕からしたのに破っちゃったし…。


僕、最低だ。


このままだと伊奈実ちゃんに嫌われちゃうかも知れない!


「おう、善は急げってな。行って来いよ坊ちゃん」


「うん!」



伊奈実ちゃん、伊奈実ちゃん。

いますぐ逢いにいくから。

まずはごめんって君に謝って。

それからできれば伊奈実ちゃんの笑顔が見たいな。


僕は、ほんの少しでも君の近くに居たいんだ。


途中から高校名が間違っていました。

すみません;

私立青野高校です。

なので学校祭も名前が青野祭です。

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