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41:繰り返す夢
あぁ、またここか…。
視界が今よりずっと低くて全てが大きく見える世界。
いつも、このとてつもなく大きな背中から始まる。
「パパーどこいくの?」
お父さん…振り向いても逆光で顔が見えないよ
「ちょっとな、行かなきゃならない所が出来たんだ」
嘘つき
「ふーん?どこ?」
聞き返しても無駄だよ 私
「伊奈実にはまだちょっと説明しても解んないとこかな」
だったら今なら説明してくれるの?
「ぶぅー、いなみもうよんさいだもん!」
そう、四歳でも人だよ
「くくくっ、悪かった。伊奈実はもうお姉さんだもんな?!」
「うん!おねいさんなの!」
ねえ、馬鹿にしないでよ お父さん
「やっべ!もう行かなきゃだ!」
「おいてっちゃやだー」
…行かないで
「パパが伊奈実を置いてく訳がないだろ?少しの間ミナミおばちゃんといい子に待っててな?」
「…うん。わかったー!」
…うそつき、うそつき
「…じゃあな、伊奈実」
…行かないで!!お父さんっ…
「うん!いってらっさーい」
アスファルトがじりじりと揺れるこの夏の日を、私は一体何度繰り返すんだろう
「おみやげかってきてねー!」
無駄だよ、…その人帰って来ないんだから
「おー!」
嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき、嘘つき。
…行かないでよ、私を置いて。




