4:ガラスと微笑み・珠洲視点その一
ゴン
パリーン
目の前で音を立ててガラスが飛び散る。
キラキラと舞う放課後の陽を反射する破片の向こう側の
漆黒の髪の女の子と目が合った。
彼女は僕を見てほんの一瞬微笑んだ。
なんて綺麗だろう。
立場も忘れて不覚にもそう思った。
次の瞬間、彼女の鼻から血が流れるまではね。
そこからは、いつもの先生モードに戻って資料室に入り周りをみると、彼女以外の青い顔した四人の生徒が居て、その様子からなんとなく状況が分かった。
あと”この場を治めろ”っていう、こんな危ない事しちゃう彼女の微笑みの意味をね。
「とりあえず、その鼻血止めようねぇ〜」
応急処置として持っていたハンカチを出して彼女の鼻を押さえた。
「ありがとうございまふ」
「く、九谷さん…大丈夫なの?」
くるくる巻き髪の子の、彼女に言う訳でも僕に問う訳でもなく、
ただ目の前の出来事に追いついていないといった感じのこえが聞こえた。
そうか、彼女が噂の九谷さん。
男子生徒達からよくその名前は聞いていたけど本人に会ったのは初めてだった。
「とりあえず大きな傷も無いみたいだけど、九谷さんどこか痛いとことかあるかなぁ?」
「いえ。大丈夫です」
「鼻血ももう止まりそうだけど、一応保健室に行こうね〜」
ピクと彼女が肩を揺らした。
「いえ。ホント、大丈夫なんで」
さては、保健室とか医者とか嫌いなタイプかな?
大人びた感じの九谷さんがなんだか急に可愛らしく見えた。
シャっシャっシャっシャっ
近くの階段から特徴的なの聞き覚えのある少しやっかいな足音が聞こえてきた。
『桐壺!』
彼女たちも、桐壺こと古文担当・桐野先生の存在を察知したみたいだ。
桐野先生はいい先生なんだけど、昔気質でちょっと頑固な正義感あふれる人柄だ。この状況を見たら間違いなく大事になってしまう。
この場を正義という名で荒らされては、鼻血が止まったとはいえ、治療が遅れてしまうな。
よし、この手でいこう。
彼女から離れて、すっかり忘れていたけどここまで一緒に来ていた相棒を廊下に迎えに行き抱えて室内に戻る。
「君たちもこの辺、持ってね」
『???』
「それから九谷さんはそこに座ってね」
室内に居た彼女たちにも一役買ってもらわなきゃね。
「何だコレは!」
役者が揃って演技の始まりを告げた。




