39:違和感
「じゃ〜ここで休憩しようか〜?」
「はい」
「自販機の前で僕まってるからね〜」
「わかりました」
ビビちゃんさんと別れて私たちも先生のお家に帰ろうと、今高速道路のとあるサービスエリアにいます。
おトイレに行くべく、その少しの間先生と離れる事ができます。
息抜き、息抜き。
ここまで来る間にも、先生を説得したんだけどあの緩い喋りで、のらりくらりと躱され続けて一体いつになったら頷いてくれるんだろうか。
先生って何考えてるかわかんないからな…
んー…
ま、わかんないことはわかんないし、私は説得し続けるしかないよね。
よし!頑張ろう!
おをっ!?
あれって先生だ…よね?
トイレを出てちょっと進んだ自販機の前、この中で唯一後ろ姿でわかる先生の周りの様子が…
「きゃ〜!!お兄さんイケメンー!」
「外人さん?!どこから来たのー?」
「あたしたちとお茶しませーん?」
ちょっぴり派手なお姉様な感じの女性三人が先生を囲んでお茶に誘っている。
これってナンパ?いや、逆ナンっていうもの?
わ、わ。そういうの初めて見る!
先生どう対応するの?!
トイレを出て、近くの柱の影から、ちょっと私が変な人みたいだけど…おもしろそうだからそっと見守ろうっと。
「ごめんね〜。待ってる人がいるんだ〜」
「え?誰誰?」
「男?」
「お友達もイケメン?」
おぉー。ぐいぐい行きますね、お姉様方。
男の人を待ってる設定にされましたがさぁ、先生どう返す?
「天使かな〜」
「「「は?」」」
おっと意味不明な回答!
お姉様方ポカンとしてるし。
わけのわからない事を言って振り回す気か?
くくくっ…楽しくなって来た!
「てんし〜ぃ!ままぁ、てんしだぉ〜!」
「そうねー、天使さんねーマーくん」
「へ?」
五歳くらいの小さな子が私の背中を指してそう言った。
あぁ、羽の模様かな?
だから先生もそう言ったのか。
って先生居ない?!
視線を戻すともうそこにはお姉様方も先生も居なくて。
先生、まさか押し切られてお茶しに行った?
となると…
「どうやって帰ろうかな…」
ヒッチハイクは危険性がありそうだからダメだし、ここ一般道に繋がってるみたいだから駅でも探すか。
「え〜?伊奈実ちゃん僕を置いてくの〜?」
「先生?!」
振り返るとそこになぜか先生が居て、ほっぺたを膨らませてる。
「今は先生じゃないも~ん」
「ちょっ、か、楓?!」
先生の肩にひょいと担ぎ上げられて、物干し竿に掛けられた布団みたいな体勢になった。
まずい…周りの人の目がこちらに向けられている。
「降ろしてください!」
「イヤ~。伊奈実ちゃんが一人で帰ろうとするから降ろさない~」
「それは!…っ…」
「それは~?」
ヤバい。
逆ナンに乗って行ってしまったかと思ったから。なんて言ったら、こっそり見ていた事がばれてしまう!
どうしよう…。
「僕が居なくなったと思ったの~?」
「え?わっ!」
車の後部座席のシートに降ろされて、先生もそこに乗ってきた。
「伊奈実ちゃん、さっき僕が誘われてたの見てたでしょ~?」
「……」
バレてる!?
「僕が伊奈実ちゃんを置いてく訳がない」
……………_____。
「も~、僕ってそんなに信用ないの~?」
「………き。っ…!!…お、お姉様方の押しに負けたのかと思ったんですけど、先…楓が訳のわからない事言って、会話になってなかったのが面白かったです!」
はっ!言わなくても良い感想までつい言ってしまった。
「伊奈実ちゃん?…そんなに見てたなら”私が天使です!”って助けてくれてもよかったのに~。ははは~」
「無茶です!違和感あり過ぎです!黒髪の天使なんて見たことありません!そんなの幽霊とか死神とかゾンビしか考えられません!」
「拘るところそこなの~?ははは~。
よ~し、そろそろ行こっか~?」
「はい」
「お昼は~お蕎麦にしょっか~?どお~?伊奈実ちゃん食べれる~?」
「はい、食べ物はドリア以外食べれるので、全般好きだと思います」
「僕のことは~?」
「楓は食べ物じゃないです」
「伊奈実ちゃんになら食べられてもいいよ~?」
「やめてください。不味そう…って言うか人は食べ物じゃないです」
「ははは~さりげなく本音混じってるよ~?
じゃ~僕のお勧めのお店に行くよ~?」
助手席にわざわざ異動させられ、車は再び進み始めた。
伊奈実は、食べ物は食べられる=好き
だと思っています。
が、いまのところ自ら進んで必要性の無いものだけど食べるのは、ラムネだけです。
食べ物に興味が薄いので、ストライクゾーンが広すぎて、自分ではよくわかっていません。




