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ストレート  作者: 業平アキラ
第三章
32/63

32:バカーーーァァァァァァァァ

「わぁー」


見渡す限り青と黄色と少しのオレンジ。

ふんわりと風が自然の匂いを運んでくる。

ただ、それだけの世界。

でもそれが始まりからある景色。


夕焼けする少し前の海岸へ来ています。

先生の言うアレとはここのことだったようで。

とにかく海、めちゃめちゃ綺麗…


「伊奈実ちゃんこっちだよ〜」

「ちょ…待ってください。せ…か、楓っ」

「ははは〜、伊奈実ちゃんぎこちないね〜。でもそれもかわいい〜」

「……」


一応弁解すると、こうみえてもただ今絶賛説得中なわけで。

か、楓なんて呼びたく無いっていうのは本音だけど、とりあえず失礼でしょ?

私、生徒なんだから。


なのにこの変態(先生)は…




___約十五分前___




「そっか〜」

「はい。だから先生、黙っていていただけますよね?」


私は車の中で先生を説得していた。

ちょっと頼まれて喋ったのがなぜか勝手に大事になった事。

それから環南先輩率いる生徒会が情報操作してくれる代わりに青野祭で喋る事まで、一からきちんとじっくり。


「伊奈実ちゃん、生徒会長の環南くんってフルネームなんだっけ〜?」

「宮月環南先輩ですけど?」

それがどうしたんだ?って先生を見たら、運転してるから前むいてるけど、明らかに頬が膨らんでいて、表情がやたらめったら険しい。


な、なぜに?


「ず〜る〜い〜!ずるいよ〜!伊奈実ちゃ〜ん!!!」

「先生何がですか?」


っていうか主語入れるだろう普通。

ちっさい子と同じ発言レベル…


「ほら〜!それだよ〜!」


ついに体、前後に振りだしたよ、この人。

はぁ…

「…………」

「面倒くさいからって放置はやめて〜!」


伊奈実ちゃ〜ん!って隣に居るのに大声で叫びだすし。

赤信号で止まって先生は私にすがり付いて左右に振って来た。


「ちょ…珠洲先生、頭揺れるんでやめてください」

「わ〜ん!またそう言うし〜!伊奈実ちゃんが僕の心を抉るよ〜!」


あわわ…先生の世に言うイケメンな顔が、半泣きの無惨な感じになってる。

え何?この状況。

私が悪いの?


「あの、先生?何がずるいんですか?指示語で言われても、さっぱりわからないので具体的にお願いします」

「ぐすん…伊奈実ちゃんが〜、伊奈実ちゃんがぁ〜」

なんだこのぐずぐず感…

「あぁ、信号変わりましたよ先生。で、私が何なんですか?」


ゆっくり車が走り出す。

先生の表情はまだ半泣きだ。


「うゔ〜…。伊奈実ちゃんが〜伊奈実ちゃんがぁ〜」

まだ言うかこの人は…

あー!イライラするっ。


「だから私が何なんですかっ!?ハッキリ言ってください!」



「伊奈実ちゃんが僕を”珠洲先生”って呼ぶよぉ〜〜〜!」



「はぁっ?」

何?先生は”珠洲先生”でしょ?それ以外の何者でもないじゃないか。

じゃあ何て呼べば良いわけ?!

教諭とか?!…はっ、ありえないでしょ。


落ち着け、私。


「あの先生?意味がわからないんですけど…」

再びぷぅとむくれている先生に尋ねる。



「だって伊奈実ちゃん、サクラもリーヤもお友達も、おまけに生徒会長も名前で呼んでるのに〜、僕だけ名字でおまけに先生だもん〜!!」



「”先生”なのは当たり前じゃないですか?!やっぱり教諭呼びがいいんですか?」

フーッと逆毛の立ちそうな勢いでまくしたてた。


「…いなみちゃんそこじゃないよ〜」

「へ?!」

「だって珠洲先生は…」

「ほらそれだよ〜」

「?」

「伊奈実ちゃん僕のこと珠洲先生って呼ぶでしょ~?

でも僕以外みんな名前呼びでさ~、リーヤはともかく男の人は苗字で呼ぶんだな~って思ってたのに生徒会長も名前呼びだっから~もう僕ショックだよ~」


勝手にそう思っていたのは先生だと思うんだけど…。

確かに余程親しくないと、私は人を名前では呼ばないけど、例外もある。


「リーヤさんも環南先輩も本人からのリクエストがあったからそう呼んでいるだけですけど…」


だから先生のショックの意味がわからない。

いや、この人、元々意味がわからないけど。


「じゃあ~僕のことカエデって呼んでくれるよね~?」

突然、表情がすんごく明るくなって、無駄にきらきらした何かを車内に振り撒きながらチラッと一瞬こちらを向いて問いかけてきた。


「先生は先生なので無理です。私は生徒なので普通に考えたらそんな風に呼んだらダメです」


それに初対面の時に珠洲先生って呼んで、先生が訂正しなかったから私はそれが身に付いてしまったから、今更なんとも変えようがない。


「大丈夫だよ~。ここは学校じゃないし今はプライベートの珠洲楓の時間だよ~」


「そんなこと言われても…」


「じゃあ~僕は伊奈実ちゃんが僕のこと”カエデ”って呼んでくれないと~、絶対いいよって言わないけど良いの~?」

「なんですかその脅し…」

「脅しじゃないよ〜?ルールだよ〜。交渉は楽しくないとね〜。

伊奈実ちゃんが僕をカエデって呼んでくれなきゃ返事しないんだからね〜っ。

はい、スタート〜!」


「…………」

「伊奈実ちゃん?黙っていてもいいけど〜…月曜日が来ちゃうよ〜?」

う…痛いとこ突いて来やがる。

この変人め…

「先生って呼んでも先生は気にも留めないし反応してくれないってことですよね」

「…」

先生返事本当にしないし。

勝手にゲームみたいにスタートとか言って。

私は了承した覚えはないぞ。

あー、なんかものすごくムカつくっ!



「珠洲先生のっ……バカーーーァァァァァァァァ!!!!」




__________________




隣で大声で叫んだから先生めちゃめちゃビックリしていたな。


まぁ、結局私は自分の平和のためにゲームの舞台に上がったわけで…

っていうか

「いい加減頭を撫でるのやめてください」

「ははは〜伊奈実ちゃんがかわいいから〜」

「理由になっていません」

「伊奈実ちゃん貝殻好き〜?」

話まで変わったよ…

「貝殻も好きですけど丸くなったガラスのとか好きでよく探してました」

「ビーチグラスだね〜」

「ピンクのとか…でもやっぱり青色が一番好きです」

「いいね〜、僕も好きだよ〜。

よ〜し!どっちがいいやつ見つけられるか日暮れまで勝負しよ〜?」

「いいですよ」

「じゃ〜勝った方が一つ何でも命令できるってことで〜」

「わかりました」


よし、これで黙ってろって先生に命令して終わりにしてやるんだから!


こうして二人しか居ない海岸で戦いは始まった。


でも最近の海岸ってビーチグラスなんてあるのかな?

ゴミゴミって世の中厳しいのに。

砂を手で掘りながらふと重要な疑問が浮かんだ。


「あ〜!ものすごくちいさいけど青いのあった〜」

「せ…楓、見つけるの早いですね」

先生に先に見つけられてちょっと悔しい。


「伊奈実ちゃんは海とか小さい頃よく来たの〜?」

「はい。七歳までは県外の海に近い所に住んでいたので、ジャムの瓶にいっぱいそういうの入れてました」

「ちっちゃい伊奈実ちゃんか〜。かわいかったんだろうね〜」

「それはないですね。あだ名はくろくろってつけられるくらい、夏は焦げてましたし」

「ビーチグラス探してたから〜?」

「そうです。あと学校のプールとかも毎日行ってたんで」


そういえばあの頃は私にも友達とは言えなかったけど一緒に遊んでくれた子がいたな…。

転校してからは、花とカオに出会うまで居なかったけど。


「十年前か〜僕は十六歳だね〜」

「え?せんせ…こほん、楓は今二十六歳なんですか?」


「そうだよ〜。ひょっとして僕、老けて見える〜?」

「いえ、そう言う訳では無くて…楓の年齢なんて別に気にしてなくて考えた事すらなかったです」

「ははははは〜伊奈実ちゃん素直すぎだよ〜」


うぅ…興味ないって言ってしまったようなものだよね。

でも先生お腹かかえて笑ってる。

よし話を、話を変えよう。


「か、楓は十年前はもう大学卒業していたんですよね?」

「うん、一回目はね〜」

「おじいさんのお手伝いって何してたんですか?」

「会社のプログラムとかいじってたんだ〜でも手伝いって言ってもパソコンでどうにでもなるやつだったからね〜、基本的には国内をうろうろ旅してたよ〜」

ニホンって面白いお祭りとか温泉いっぱいあるしね〜と追加した。

「つまり遊んでたんですか?」

「そうとも言えるかな〜。あ、二個目発見〜」

「ずるいです、私まだ一個も…あった!」


お互い砂をかき分けながらの会話はそれからも意外にもはずんだ。


しばらくして私の前に急に影が落ちた。

「伊奈実ちゃん見てごらん夕焼け始まったみたいだよ〜」

それは先生ので、頭を上げると海が夕焼け色に染まっていた。

「おぉ…」

波で所々キラキラ輝いていて青い海とはまた違ってとってもきれい。


ん?波打ち際で見えるあれはもしや…


「伊奈実ちゃん?!」

海へ向かい出した私を不審に思ったのか左腕を掴まれた。

先生の顔にはどうしたのって書いてある。

「せんせ…楓、ほらそこの波の所にビーチグラスがあるんです」

「伊奈実ちゃん濡れちゃうから僕が行くよ〜待っててね〜」


靴と靴下を脱いで、ズボンの裾を上げてから先生は進んで行った。

先生は夕陽に照らされてシルエットだけになった。


「あ〜!これすごいよ伊奈実ちゃん!」


逆光で何を見せられているのかさっぱりわからなかったけど、笑顔だけははっきりと見えた。

夕陽が似合うってどういうことだよこの人。


「ほら見てみて〜」

「わぁ!かわいい…」

戻って来た先生の手の平のビーチグラスは、赤くてハートのカタチをしている。

今までみたものの中でで一番かわいい。


「今日僕が集めたやつよりこれが綺麗だな〜。伊奈実ちゃんは〜?」

「わたしもそうです。赤い色のは生まれて初めて見ました」

自分が拾ったモノを先生の手の平に乗せた。

どれも今のには劣るものだ。


「今回は引き分けだね〜」

「何でですか?見つけたのは私です」

「拾って来たのは僕だし〜」

「それは先生がかっ…楓が勝手にそうした…」

RiRiRiRi_____

先生の携帯が勢い良く鳴って話が切られた。

「伊奈実ちゃんちょっとごめんね〜」

そう言って先生は電話に出た。


はい__どうしたの〜?____

_え?____うん、そうだけど____

_______だからそう言う訳で___

今海にいるよ〜__________

__も〜わかったよぉ〜______

_____はいはい〜__


途切れ途切れに風に乗って先生の話し声が聞こえてくる。

何か困ってる?

通話が終わったようで先生はこっちに戻って来た。


「伊奈実ちゃんまたせてごめんね〜」

「いえ、大丈夫です。楓こそ大丈夫ですか?」

「…うん大丈夫だよ〜。そろそろ家に行こうか〜?」

「はい」


微妙に返事が遅かった。先生どうしたんだろう?



私のこの小さな疑問は十分後、ものすごい光景で解決する。

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