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ストレート  作者: 業平アキラ
第三章
30/63

30:遠くのミナミより近くの楓くん

”不思議屋”は、学校からほんの少し離れた所にある、駄菓子屋だ。

看板は無く、きれいな海色の屋根瓦が目印。

パッと見はふつうの家だから知る人ぞ知るってやつだ。


私はその不思議屋の前の横長のベンチに一人、座ってます。

大好きな固形ラムネ(十個入り)を三個を買ったら、ビー玉の入った瓶の清涼飲料のほうのラムネをおまけでくれたから、ありがたく飲んでいる。

この平和な放課後な感じ最高。

できるなら…

「このまま帰りたい…」


のに、遠くから聞き覚えのあるエンジン音がちかづいてくるよ、おいおい。


「伊奈実ちゃんおまたせ〜。さあっ、乗って乗って〜」

助手席の窓を開けてそう言う。


この人なんでこんなに楽しそうなんだろう。


そんなことより、平和のためだ。ファイト自分。

「お願いします」

「そこじゃないよ〜伊奈実ちゃん」

「え?」

「こっち、座ってね〜」


朝と同じく後部座席に乗ろうとしたら、こっちだと先生は助手席を指さす。


「ここじゃだめなんですか?」

「僕を説得するんでしょ〜?だったらこっちね〜」

「後ろからでも説得は出来ます」

「ははは〜確かにそうだね〜。でも伊奈実ちゃん家、僕は知らないから案内して欲しいな〜」

そうだ、先生は私の家知らない。

「うっかりしてました。そういうことなら、改めてお願いします」

「は〜い、お願いされました〜」


シートベルトを付けるのを見守られてから車がゆっくりスタートした。

「とりあえず、国道を北へお願いします」

「ふんふんふ〜ん〜♪わかった〜。伊奈実ちゃんそのラムネ買ったの〜?」

手にしている瓶を先生は指さした。

「いえ、これはおまけで。固形のほうのラムネを買ったらくれたんです」

「ラッキーだね〜。瓶の方は最後にビー玉出すの楽しいよね〜。僕むかし集めてたの思い出したよ〜」

「私は飼っていたメダカの水槽に洗ってから入れてました」

「水槽か〜青色が綺麗に見えるよね〜」

「珠洲先生どうして不思議屋を知っているんですか?」

「ん〜?リーヤが青野の卒業生でね〜、リーヤが学校終わるのを待ってた時に周りを探検して見つけたんだ〜」


リーヤさん先輩だったんだ。

って、世間話している場合じゃない!


「伊奈実ちゃんは〜?」

「カオと花が教えてくれたんです。先生、そろそろ説得させてください」

「え〜?伊奈実ちゃん僕と話すのつまんなかったの〜?」

「そういう問題じゃないです。次の信号右折でお願いします」

「すんっ、すんっ…伊奈実ちゃんが反抗期だよ〜」


ウインカーのカチカチ音と一緒にすすり泣く真似をする先生。

め、めんどうな人だ…


「反抗期とかじゃなくてですね、もうすぐ家なので説得する時間が少ないんです」

期限が月曜の朝ならば、私が説得できる時間は家に着くまでだ。

あと五分くらいしかない。


「それなら大丈夫だよ〜」

「何が大丈夫なんですか?私には時間がないんです!」

いっそ説得吹っ飛ばして脅してしまおうか?!

RiRiRiRiRiRi_______

「だから時間だよ〜。あ、ほらほら〜伊奈実ちゃん電話鳴ってるよ〜?出な〜」


色々意味が分からないけど、とりあえず電話に出る。

これ間違い電話かな?知らない番号なんだけど…

「はい」

『伊奈実ー?』

「ミナミさん!?」

『そうそう、あなたのお母様よー愛しの娘っ。

この番号今住んでるトコのだから登録しといてちょうだい。

さっき楓くんから電話貰ったんだけど』

「ミナミさん、楓くんって誰?」

『何言ってるのー?珠洲先生よ。我が娘っ』

「あぁ…」


そう言えば先生は楓って名前だったな。

隣に視線を移して先生を見ると視線に気付いたらしく、一瞬チラッと私を見て微笑んだ。


『で、伊奈実。体重また減ったんだって?』

「う…」

『ミナミとの約束忘れたわけじゃ無いわよね?』

「はい…」

もともと食への興味が薄くて、小さい頃から私の体重をミナミさんは気にかけていた。

だからミナミさんが海外へ行く時に、食事をおろそかにしそうなことが予想できる私も連れて一緒に行く予定だった。

けど、私は高校も決まっていたこともあって、ミナミさんに拝み倒して今、日本に居る。


その時、かわした約束が一つある。


『娘よ、言ってごらんなさい』

「体重を三キロ以上減らさない…です」

それ以上減らしたら強制的に海外へ連れて行かれる。

『で?何キロ減っちゃったわけ?』

「二千七百グラムほど」

『グラムで言っても現実は変わらないわよ伊奈実』

「うぅ…」

『まぁギリギリセーフってとこじゃない。危なかったわね。

で、それを心配して楓くんが”土日家で預かっても良いですか”ってわざわざ聞いてくれたのよ?』

「え?」

先生が?なんで?

『いい先生が居てくれてよかったわー。伊奈実、お世話になりなさい』

「え?」

『ミナミはここからじゃご飯を直接食べさせることはできないし、遠くのミナミより近くの楓くんってことで、絶対命令よ伊奈実』

「?!」

『じゃあーねー』

「ミナミさん?!」

プツッ、ツーツーツーツー

そんな…


「ね〜?大丈夫でったでしょ〜?」


あっけにとらわれていると、とても楽しそうな先生の声と一緒にウインクが飛んで来た。

なんでこうなるわけ?


「だから伊奈実ちゃんの着替えを取りに行こうね〜。

説得は僕の家でごはん食べて〜体重増えたらついでに聞くから〜」


だから、なんでこうなるのーーーーーー!!!

ラムネはお菓子の中で唯一伊奈実の好きなものです。

彼女はコーヒー飲みながらよく食べてます。

でも少しだけなので、体重にも栄養素的にもあまり影響はしてくれません。

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