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ストレート  作者: 業平アキラ
第三章
29/63

29:説得前の交渉に

「は〜い。みんな測ったら順々に帰っていいからね〜」


今、どこに居るかと言えば…保健室。

六限の身体測定です。

午前中に他の学年から順に始まって最後になるのがなぜかやっぱり二年八組。

他のクラスは他の授業中の間に測るけど、うちのクラスだけどうしても予定に組み込めなかったみたいで本来、金曜日は五限で終わるはずなのに放課後にあたる今になってしまったそうだ。

午後にあるなんて、一日中体重計に乗ることを気にしている女子からしたらふざけるなの一言だ。



何よりも私はここの部屋の主に会いたく無い気持ちで一杯だったから、こっそり帰ろうと思った。

…のに、ここに居る。


「次〜、篠村薫さ〜ん」

「はーい。伊奈実、カオはこれ終わったら直で部活行くからまた明日なー」

「うん、また明日」

「あ〜、昨日の宇宙人発言の子だ〜」

「珠洲先生、ちわーっす。宇宙人発言の子って覚えていたのにカオ驚きっすよ」

「ははは〜ごめんね〜?」

「伊奈実の友達の篠村薫です」

「篠村さん、篠村さん。よし、覚えたから〜。篠村さん165.8㎝ね〜。次は体重計ね〜」


165.8㎝っと。

私はクラスのみんなの分の記録係をしている。

五限の終わりに

「九谷クン、昨日珠洲先生にお世話になってましたよね。恩返しついでにお願いできますね?」

って数Ⅱの授業担当でもある、担任の川瀬先生に穏やかな口調で記録係のご指名をされまして。


嫌です絶対。なんて断れるわけも無く、今ペンを動かしている。

ちなみに女子の体重は珠洲先生が書いている。


こうやって一人ひとりと話しながらだから、みんなも先生も楽しそう。


  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「最後だね〜、三崎花子さ〜ん」

「はいはぁーい」

「九谷さんのお友達だね〜。どうしたの〜?浮かない顔して〜」

「それがですねぇ、生徒会室の前がすっごいことになってるみたいでぇ…」

「あぁ〜、TOKARISHIN絡みでしょ〜」

「そうなんですぅー。大変だから早く来いって環ちゃん…生徒会長に言われたんですけどぉ、状況を考えただけで憂鬱なんですぅ」

「わあ……」

生徒会室前が大混乱で環南先輩がもみくちゃにされてる様が容易に想像できる。


「三崎さん149.9㎝ね〜。九谷さんの説明の時みんな大興奮だったもんね〜。測定もその話題で持ち切りだったよ〜。あ、それから謎の"捕まったピンチヒッター"だっけ〜?」


「!?」

い、いま…

「先生?!それぇ、完全に正体わかって言ってますよ…ねぇ?」


「ははは〜、だって九谷さんそのものだったから〜」


「そう簡単に判る人いませんよぉ。耳良いんですねぇ。誰かに言っちゃってますかぁ?」

「言ってないよ〜?」

「よかったぁ。先生ちょっと秘密にしてくれませんかぁ?って、また電話ぁ?!」


花公〜俺だ俺だーがひたすら繰り返されている。

着ヴォイスにしては個性的すぎるが、これが先輩専用なんだそうだ。


「三崎さん体重も計測終わったし生徒会室行って良いよ〜」

「伊奈実ん!これからの平和のために、珠洲先生説得しときなよぉー!」

じゃあねぇー。と携帯を握りしめ小走りで出て行ってしまった。


「花ー」

行かないでーと引き止めようと伸ばした右手が宙を掴んで机に落ちた。

花さんや、私にそんな難易度の高いことできるわけが無いです。



「九谷さんも測っちゃうからここにおいで〜」

「え?は、はい」

さっきと変わらない笑顔のままで手招きしている。

あれ?意外と普通?

これならお願いすれば大丈夫か?


上履きを脱いで身長計の上に乗って、足形に足を合わせた前を向くとそっと頭の上に測るとこが降りてきた。

ついでにそれを少しかがんで動かした先生の顔も目の前にやってきた。


「伊奈実ちゃんにどうやって説得してもらおうかな〜」

「…楽しんでますよね?」

「え〜?そう見える〜?」

しかもどうやって説得するかは私が考える事なのに、早くもその主導権が奪われようとしている。

背後も頭上も固定されていて動けない。

くっそ、ニコニコしやがって。

変態のリクエストになんて応えてたまるか。


「説得は私がするんです。先生はそれに納得したらいいよって言うんです」

「つまり僕が伊奈実ちゃんに納得するまで説得されれば良いってこと〜?」

「そうです。どうやって説得するかは私が考えるんです」


更に先生は近づいて、顔の右側にやってきた。

「ふ〜ん、そっか〜。伊奈実ちゃんそれでいいの〜?」

右側の耳に先生の低い声が直接響いてゾゾッとする。


こんな脅しに負けてはいけないぞ、自分しっかりしろ!


「はい。それが説得ってやつですから」

「わかったよ〜。はい、163.2㎝ね〜。次、体重計に乗ってね〜」

あっさりとした返事で先生は離れていった。

これって理解してくれた?

「せっかくだから期限は僕が決めていいかな〜?」

「期限ですか?いいですよ。いつまでですか?」

「じゃ〜月曜日の午前七時までっていうことで〜」

「え、でも今日金曜日ですよ?先生に次会うとしても確実に期限が過ぎてからです」

「だから伊奈実ちゃん頑張って説得してくれるよね〜?」

なんだこの嫌な流れ…

「嫌です」

「そうか〜じゃあ三崎さんが言ってた伊奈実ちゃんの”これからの平和”がなくなっちゃうね〜」

「…それは困ります。とっても」

「ん〜だったら僕を説得しなきゃだね〜。あ、僕もう帰るんだけど〜説得したいなら車に乗っけるけど伊奈実ちゃんどうする〜?」


理解してない!むしろ私の平和を手の平の上で転がして遊んでやがる!!

しかも片方は行き止まりの見える道を二つ用意して、さぁどっちにする〜?って言ってるのと同じだ。


くっそー!

「卑怯です」

「ん〜?どうする〜?」

この笑顔…殴り飛ばしてやりたいっ。


「…………説得し…ます」

「わかった〜。車回すから、不思議屋の前に来てくれる〜?」

「………………………はい」


説得前の交渉に早くも破れて、状況はもの凄く不利。

ここから私の平和をどうやって掴み取ろうか。

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