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ストレート  作者: 業平アキラ
第三章
27/63

27:ゲスト

『来るは六月一日、二日、三日の金・土・日曜この三日間に決行だ!!』


わあーーーーーー!!!!


大きな歓声を環南先輩は頷きながらもいつもの表情で見ている。

いや、それは少し違うかも。

ここの生徒達をお祭り好きにした本人は、もっと先を予想しているからこの反応なのだ。



『さて、お待ちかねの今年のスペシャルゲストを発表する!』



騒いでいた館内がこの一言で一気に緊張感に包まれた。


スペシャルゲストは青野祭のメインイベントを飾る、言わば核だ。

これの善し悪しで祭りの大きなアクセルにもブレーキにもなる。


ゲストは”テレビに出たことがある華のある著名人”を招くんだ!と去年先輩自身が決めた。

青野祭は土日に学校関係者外の招待客や青野高校受験を考える中学生を迎え入れての公式パフォーマンスも兼ねているため学校側も少しならお金をかけさせてくれるそうだ。

だから先輩がそれを曲げることは絶対にない。



『今最も華のある我が校出身の____』


予感に、期待に、満ち満ちた視線が先輩へ注がれる。

この高校出身の著名人の中で、今最も華のあるのは…




『TOKARISHIN(トカリシン)』




ーー!!ーーーー!!!!ーーーーーーーーー!!!!!!


声になりきらない歓声が館内に響きわたる。



TOKARISHINは十代、二十代、三十代前半を中心に男女共から支持される五人組のバンドグループ。

この高校に在籍している時にメジャーデビューしたそうで、当時の青野高校ではアルバイトも禁止だったためありえない仰天の行動だったが、彼らは全員ずらっと先頭からの成績上位者で全国模試でもトップクラスを誇る程。

高校側は成績キープを条件に特例として許したそうだ。

メンバーは

ルイト(vocal/rhythm guitar)

マドカ(vocal/keyboard)

ヒカリ(lead guitar)

トモシ(bass guitar)

ジュン(drum)

男女のダブルヴォーカルで曲によってメンバーの中で作詞・作曲の担当が変わるのが特徴。

彼らはそれぞれ実力があるからソロとしても色々な方面で活躍している。


確か、去年は何かの賞を貰っていた気がする。

あんまり音楽に詳しくない私でさえ、彼らがここの卒業生ってことで話題によく上るからこれくらい知っている。


ーーー!!!!ーーーー!!!!!!ーーーーーーーー!!!!!!!


この止まないすごい歓声。

あ。泣いてる人まで居る。

みんなTOKARISHIN大好きなんだな。


そういえば、カオも花も好きだって言って…はっ!

まさか環南先輩…


「嘘…TOKARISHIN…来るの?環ちゃん」

顔を伏せていた花が唖然と先輩を見つめている。

放送のスイッチを切って先輩は振り返って花を見た。


「嘘でも夢でもないぞ、花公。特等席でライブ見せてやるから楽しみにしとけ」

「わぁっ!……うん!!」


…花、環南先輩は学校を、生徒を、TOKARISHINをただ一人を喜ばせる為だけの道具に使う程の大きな実力を将来はいったい何に使うんだろう。

しかも、気付いてる?

花が稼働力になってるんだよ。

ほら。このデレデレ顔、見て。


でもなんだか先輩は間違いなく歴史に残ると思うんだ、私。

根拠は無いけれど花が側に居れば先輩はどこまでも進んで行く気がする。



くるりと再びいつもの顔でマイク前に戻り先輩は口を開いた。


『はいはい。諸君、静粛に。細かい内容は…んー…なんか話すの面倒だからさっき捕まえた隣のピンチヒッターが説明してくれるぞ〜い』


は?!このタイミングで私にパスするのか、この先輩は!

渡された原稿に一文字も沿わない内容を一人で話すだけ話してまさかのここで?

花を喜ばせてもう今日の分は満足したってことなのか!?

あ!もう花の目の前に行ってデレデレしてる!

そういうことかよ!!

館内もなんかどよめいているし…

はぁ…

まぁ、ここからじゃ先輩は見えても丁度私は館内の人たちからは見えない位置だし。

ええい!もうどうにでもなれ。


『捕まったピンチヒッターです。

TOKARISHINは青野祭二日目、午後二時から三時間の講演会をしてくださいます。

その際、皆さんからの質問にも答えて頂けるそうで、生徒会はTOKARISHINへの質問を本日午後から募集します。

皆さんの思うままの疑問を紙に書いて、生徒会室前の専用ボックスに入れてください』


……ーー!!ーーーー!!!!

一息ついたとたん、また大きな歓声がおこった。

これはもう皆テンション上がりすぎてハイになってるな。


盛り上がりの頃合いを見てもう一度声を出す。


『皆さん、それだけでは今年の青野祭は終わりません。

三日目午後一時からはTOKARISHINスペシャルライヴです。

TOKARISHINが曲目リクエストを受け付けてくれるそうです。

専用用紙を一人一枚生徒会で用意しますので、なぜその曲が好きなのかを書いてこれも専用ボックスに入れてください。

このリクエストはTOKARISHINが直接チョイスし、当日その曲を歌ってくださいますので是非応募してください。

以上です。

続いては部活動紹介です。副会長、進行おねがいします。』



読むだけ読んで勝手にスイッチを切って振り返ると花と先輩が口を開けてこちらを見ていた。

デレデレしてると思ったのになぜ?

何かまずったか?

「あの?まずいこと言いましたか?」

「え?あぁ。それは大丈夫!九谷ちゃんありがとな。いい拍車がかかったわ!忙しくなりそうだ」

「うん!伊奈実んチョーよかったよぉ!噂の元を握った感じっ!!」

「?…はぁ。先輩と花が喜んでくれるならよかったです」


二人が何に喜んでくれたのかいまいち解らなかったけど、こうして騒がしい新入生歓迎会が過ぎて行った。

TOKARISHINはもちろん架空のバンドです。

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