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ストレート  作者: 業平アキラ
第三章
26/63

26:破壊力と輝く魅力

「昨日、伊奈実ん目覚めた時ビックリしたでしょぉ?」

生徒会主催の新入生歓迎会で盛り上がる体育館の隅っこに居る珠洲先生を指さしながら花に問いかけられた。


私たちは今体育館の中二階の放送室に居る。

花は生徒会役員で、今回の歓迎会の音響担当なんだそうだ。

カオはこの会のプログラムの中盤にある部活動紹介に出るから、今は部活の仲間と一緒だ。


で、私はクラスの中に一人で居るのもつまらないからここにお邪魔している。


「う、うん。ビックリした」

まさか先生の家に居るなんてそんなこと思いもよらない出来事で。

「あ、それとぉ。ミナミさんの番号先生に教えたんだけど大丈夫だったかなぁ?」

「うん、大丈夫。手間かけさせてホントごめん」

花は大きく二回首を振った。


「手間なんて一ミリも思ってないよ。私もカオも伊奈実んの友達、でしょ?」

「うん。ありがとう、花」


自分のことを本当の意味で、普通に友達って呼んでくれる。

誰かにとってそれはあたり前の学生生活の一瞬かもしれない。

でも伊奈実にとっては初めてで特別だ。


友達と呼んでもらえて、自分も心からそう呼べる人に会えることをどこかで諦めていた。

伊奈実は一年前から、人生で初めて出来た花とカオという友達のあたたかさを感じている。


花とカオに出会えて、友達になれてよかった。


「ちょ、伊奈実ん!……もぉーそれ反則だよぉー」

「???…花どうしたの?調子悪いの?」

花の可愛らしい顔がほんの少しだけ赤くなって頭を抱えてうつむいた。

「いや、普段は大丈夫だけどぉ……久々の不意打ちだったからちょっとね」

目眩とか頭痛の話だろうか?

「本当に大丈夫?」

「うんうん、ホント大丈夫だよぉー。まぁ自覚無いのもぉ、アレよねぇ」

「そういうものなの?」

「んー……(伊奈実ん自分の本当の笑顔の魅力が同性の私にもこの破壊力ってわかってないみたいだけどいっか)まぁね。ところでさぁ」


コンコン!


花の言葉の途中で入り口をノックする音が聞こえた。

「はぁーい、今開けますぅ。げ!」


返事をしてドアを開いた花が小さな奇声を上げ入り口の人物を見て固まった。


「げ!って下品な声あげるなよ、わぁー♡が正しいリアクションだぞ花公(はなこう)。お!九谷ちゃん。昨日は大丈夫だったかい?」

「はいこの通り大丈夫です。環南(かんな)先輩」

「環南会長って呼んでも良いよ?」

「わあ…」

「環ちゃん、ただ無駄に呼んで欲しいだけでしょぉ?伊奈実んに名前で呼んでもらってるだけで感謝しなさいよねぇ」

「お!なんだなんだー?花公、やきもちか?よしよし飴ちゃんをやろう」

「ばっ!ちーがーうーぅ!」


花の頭をなでなでしながら飴を差し出して微笑んでいるのは、宮月環南(みやつき かんな)先輩。現生徒会・会長だ。

花とカオの幼なじみで、花の彼氏…かどうかは微妙なところらしい。

カオは、もう二人は恋人みたいなものだけど、幼なじみで長く一緒のせいで確かな言葉にするのが花は恥ずかしいんだよって前に解説してくれた。

だから環南先輩はこの感じを貫いているっていうのも聞いた。


「でも九谷ちゃんに名前で呼んでもらわないと大変だぞ」

「なんでぇ?」


「俺が三崎環南になった時九谷ちゃんが呼ぶの変えるの困るだろ。なー?九谷ちゃん」


なー?と私に言いつつも先輩は花から眼をそらさない。

一瞬固まっていた花は口をぱくぱくさせた。


「環南先輩はお婿志望だったんですね」

「俺、五男だから自由すぎて逆に年取ると居場所なくなるタイプだからさ」

「なるほど」


ついに花は顔が真っ赤になって、さんかく座りして俯いてまった。

それはそうだろう。

三崎は花の姓だ。


「さーて。花公でひと遊びしたし、そろそろ仕事すっかな」

そんな花を見てニヤリとしてから、ドカリとマイク前の椅子に座った。


時々先輩はこうやって飄々と高低差の激しい変化球的言葉で、花を真っ赤にさせている。

これに近いのを何度か見ているけど、カオが居たら「吐く〜小さい時食った砂が口から出てくる」って言うだろう。



「んー。九谷ちゃんちょっと原稿読むの手伝ってくれないかい?花公がイチゴちゃんになって動けないし」

環南先輩が紙を私に差し出した。

その時、携帯が鳴って先輩は携帯を取り出した。メールのようだ。

「え?!先輩これ…本気ですか?」

先輩の隣のマイク前に座って紙を受け取った私は原稿に目を通して思わず問いかけてしまった。

うちの学校でまさか…

「お!九谷ちゃんがここまで驚いてくれるなら、奴らの反応が期待できるな。そろそろ時間だって副会長から連絡来たし始めるぞ」

先輩はそう言って楽しそうにウィンクをして、放送スイッチをオンにした。




♪ー♬〜〜♩♫♩ーー♩♩♪〜〜♪♬♬ーー♬♩♩〜♩♬♪〜〜〜


『やほー。生徒諸君。元気?俺、おれ、俺だよ』


環南ー!!!キャー環南くん〜!!!


詐欺のような出だしにも関わらず、二・三年生はこの声だけで気付いて環南コールを上げている。


環南先輩は会長職異例の二年目で、今年の会長選挙で立候補しなかったのに候補者七人を無視して全校生徒数の九割の票を得て会長になった程の人気だ。

しかもその選挙戦、残りの一割の票は他の候補者とその推薦者たちだけの数と同じだと言う伝説を作りあげた。

生徒の声を無視する訳にもいかず、大学は高校の系列に推薦が決まっているから今も会長として働いている。


『お!正解。みんなの会長、環南だよ。新入生の諸君も入学式以来二度目まして!』

そう言いながら放送室から手を振っている。


一般にイケメンと呼ばれる人目を引く容姿を持っているが、それ意外の所に先輩の大きな魅力がある。


『さて、みんな。今日は知らせがある』

真剣な声に環南コールで響いていた体育館中が静まり返った。

皆の視線が放送室に注がれる。


『……俺は婿養子宣言をしたっ!』


ぅえええええええええええええええええっ!?

環南よくやった!

すごいぞ!

きゃー!!

未来は明るいぞ!

先輩おめでとう〜!!


館内が訳の分からないどよめきと悲鳴と歓声に包まれた。

それはそうだろう。公共の場で思いっきり個人的な話をしているんだから。


『まぁ、それはいっか。みんなは俺の公約覚えてるか?』


ざわめきを割るように先輩は我が道を進む。


”忘れられない思い出を自分たちで作る!”

みんながそれぞれに叫んだ。


『おう!覚えててくれてありがとな』

そう。先輩は会長を引き受けた時、公約でそう言った。


この私立青野高校は、私立の中でも伝統色が強いので有名だ。

学業優先で、唯一の大きな学校行事であった青野祭は外国語での討論会や研究発表など、堅苦しいものばかりだったそうだ。


でも、去年私たちが一年生の頃からは違う。

環南先輩が会長になって変えたのだ。


クラス主催の出店や、ゲストを迎えてのイベントを追加し企画してそれを生徒主体で行動していく。

もちろん全てを排除して変えた訳ではなく、伝統の中に新しい息吹を吹き込んで更に大きく、面白く楽しめる祭りにしたのだ。

その他にも、前期テストの後には地元の商店街の方に協力をお願いして校内で浴衣を着て花火大会。

秋には外部受験へのスパートがかかるように激励会の意味も込めてハロウィンパーティー。

三月には、卒業生の為にプロムも学生で企画・運営した。


もちろん全てのイベントで成功を収めた。

このより良い変化に先生方もPTAも納得して、今では生徒主体の学園へ大きく変わった。


人を引きつける力とと絶大な統率力。これが環南先輩の大きな輝く魅力だ。


『で、今年度の忘れられない思いで作り第一弾!!青野祭の日程が決まった!』

環南が喋り足りないようなので次回持ち越しです。

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