22:記念のハグ・珠洲視点
「サクラちゃん達、長いな」
「そうだね〜」
サクラと伊奈実ちゃんがお風呂に入るって言ったから、僕たちもそれぞれシャワーを浴びて来たんだけど彼女たちはまだ出てくる気配すらないから暇でオセロをしている。
一勝一敗の三回戦目で、お互いそろそろ飽きてきたところ。
「そういえばキューちゃん、お前の高校なんだって?」
「うん、そうだよ〜」
「サクラちゃんからはずっと彼女のこと聞いてたけど、カエデから一言も聞いてなかったぞ俺は」
リーヤがなんだか寂しそうに尋ねてきた。
ま〜、小さい頃は夏休みしか会えなかったとはいえ、幼なじみの親友なのに知らないって悲しいものだよね。
「うん。伊奈実ちゃんと話したの昨日が初めてだったし〜。
サクラから聞いてた子と、学校で男子生徒の噂の的の九谷さんが一緒だって今日知ったからね〜」
「ちょ…おまえ!昨日の今日でキューちゃん家に連れて来たのかよ!」
「うん、そうだよ〜。それがね〜」
僕は伊奈実ちゃんがガラスを突き破ったところから、今日家で目覚めてリーヤが来るとこまで説明した。
「…そうか。今日は生徒連れてきたってことか。
それから先生としてのお前とカエデ本体に捕まって何だかキューちゃん大変だな」
「ははっ、リーヤの解説面白いね〜」
リーヤの言うところの先生としての九谷さんの心配より、僕本体の伊奈実ちゃんへの興味の方が大きいんだけどね。
「カエデ。今の話の中で気になったことがあるんだけど」
「ん〜?気になるとこなんてあった〜?」
「昼、カエデはどうして購買でキューちゃんに膝かっくんしたんだよ?変だろ」
「あぁ〜。それはね〜僕にも解らないんだ〜」
「は?」
「なんて言うか体が勝手に動いたんだよね〜」
「…」
リーヤが急に考え出した。
「カエデ。お前体が動く前に何見た?」
「え〜っと〜…」
職員室から保健室に帰る途中で購買の前を通ったら偶然、伊奈実ちゃんたちが居て普通に声をかけようと思って近づいたら、伊奈実ちゃんが…
「伊奈実ちゃんが笑ってた…」
「で?」
あまりにもかわいくて、他の生徒もそれを見ていて、こんな所で無防備に笑ってるなんて誰にも見せたくなくって…
「独り占め…したかった」
何だか胸の奥が動いた。
「そうか、そうか。それが答えだカエデ!」
「っははははははは〜」
「おい!?カエデ?」
リーヤを見たらなぜか顔が赤くて、何だか笑えた。
それから気づかされたよリーヤ。
僕が伊奈実ちゃんを好きだってね。
「あら〜?リーヤにカエデどうしたの〜?なんだか嬉しそうね〜」
「サクラちゃんお帰り。ちょっと良い事あったんだ」
サクラと伊奈実ちゃんがようやく戻って来た。
「ふふ、そうなの?」
「うん。俺、そろそろ家に帰るわ」
「リーヤ〜、藤堂のご両親によろしく言っといてね〜」
「わかった。カエデにまた今度手伝ってもらいたいことあるんだ。頼めるか?」
「うん、いいよ〜。今のお礼ってことで〜」
「サンキュ、助かる」
「じゃ、サクラちゃん見送ってくれる?」
「もちろんよ〜」
「じゃ、カエデにキューちゃんまたな」
「またね〜」
「はい。リーヤさんお気をつけて」
リーヤとサクラが手を振りながら部屋から出て行った。
「……何するんですか」
「ん〜?記念のハグだよ〜」
「何の記念かはどうでもいいんで放せ変態!」
「え〜?」
僕が君を好きになったって気付いた記念のハグだけど、君にはまだ秘密にしておいた方がいいかな。
伊奈実ちゃん、君に好きだと言ってもらえるまではね。
さて、どうやって伊奈実ちゃんに振り向いてもらおうかな〜?




