2:悪意の落とし穴・一
R15設定になった理由であるイジメに近いものが書かれています。
不快に感じられる方、申し訳ありませんがお戻りください。
作中、少し時間が巻き戻ります。
「九谷さんちょっと来てくれない?」
…はぁ。この台詞何度目だよもう。
って言うか誰だよあんた。それから後ろの三人。まずは初めましてじゃないのかね?
実にこの高校生活で七度目、十七年の人生でもう何十回目なのか数えたくも無いこの、
来てくれない?という名の来いよ!な呼び出しである。
伊奈実は心の中で初対面の髪の毛くるくる、まつげばしばしな濃いめのバッチリメイクな彼女とその仲間に少々かわいらしい悪態をついた。
「…何で?私忙しいんだけど」
視線を自分の手元に移して、コレが見えないのか?と、くるくるな彼女に訴える。
両手にクラス全員分の古文ノートを抱えて提出しに行く最中だ。
「すぐ済むから。さ、行きましょ」ふふ…
「はぁー…」
返事なのかため息なのか微妙な台詞とともに伊奈実はお決まりのコース、人気のない校舎三階北側の資料室へ足を進めた。
パンッ!
資料室に入って早々、両手の塞がった伊奈実の頬へビンタが飛んだ。
「なんなのよあんた!なんで私がっっっ…
佐藤くんっ……あんたなんかっ…なんなの!!」
『巴(とも)っ!』
「私がっ…ど、どれだけっっっっうううゔっ」
『わぁ〜っっ!!』
何なの!はこっちの台詞だよ。
痛む頬を気にしつつ、目の前のいきなり激昂したくるくるな彼女と
その友人が一緒に泣いて繰り広げている友情?に、白けた眼差しを向けた。
彼女たちのメイクが涙で崩れて…と思いきや
皆様バッチリのウォータープルーフで、涙を絞り出してる。
巴という名だったくるくるな彼女以外の涙はうさん臭さ百パーセント。
何じゃこりゃ。お遊戯会?
もう状況について行けない。
あんた、ちゃんと一緒に泣いてくれる友達選びなさいよ。
そう思わずにはいられない。
今回の原因は佐藤くんという人らしい。
佐藤くんがくるくる彼女・巴を振り、好きな人もしくは気になる人に伊奈実をあげた。
結果、叶わなかった想いの大きさは、勢いそのまま行き場を無くし、
そのモヤモヤは伊奈実への怒りになって今に至る訳なのだが。
それは巴しか知らない彼女だけの気持ち。
”佐藤くん、とんだ迷惑だよ”
遠い眼差しで、顔を知らない佐藤くんとやらに心の中で苦情を申し立てた。
呼び出され、謂れの無い文句を受けて
毎度一発二発同性に殴られ終わるのが常。
こうして伊奈実は身に覚えの無い色恋沙汰のやっかみをしょちゅう受けている。
だが、彼女の整った顔がそれを許さないことに、本人気づかぬまま十七年。
すんすんと彼女達の涙の勢いがおさまった頃
そろそろいいかなと資料室から出ようとくるりと踵をかえした。
「待ちなさいよ!」
が、今回はいつもと違った。




