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ストレート  作者: 業平アキラ
第二章
16/63

16:膝かっくん

「花さん…厳しいっす……かはっ!」

「吐血の芝居ぃ?なんか下手だからデザートもう一個追加しちゃおっかなぁー?」

「無理、もうこれ以上は無理ですからご勘弁を」

「花、カオ。そろそろやめなよ…変な意味で目立ってるから」


ただ今、昼休みで賑わう購買のレジ前にて花とカオが…いや、カオが苦しめられています。花に。

オムライスと女子高生のおこづかいじゃ滅多に味わうことのできないお高い本物のアイスクリームを笑顔でカオに買えと言っている花の周りに黒いキラキラが見える。


なんでも、カオが花に迷惑をかけたからお昼はおごりらしい。

あ、カオが悲壮な表情でお金払ってる…

花がここまでするってカオ一体どんな迷惑かけたのか気になるな。

「伊奈実んお待たせぇー」

「アイス豪華だね」

「うん、イチゴ味なのぉ♪伊奈実んはサンドイッチと…かやくおにぎり?お米系選ぶとか珍しいねぇ?」

「うん。栄養もっと取れって言われたからたまには米を」

「伊奈実は細いからな…この財布の様に。うぅ」

財布を振りながらカオが言った。

中身、空になっちゃったんだ…

「カオ、財布振っても最初から入ってた分しかお金は無かったんだよぉ?無駄なことは止めなぁー?」

「誰のせいだとっ…」

「あれぇ?誰のせいだぁ?」

「…か、カオ。カオです、花様。墓穴を掘ったのはワタクシですっ」

「それを埋めたのはぁ?」

「花様…いや、花姫です!!」

「くくっ」

どんな墓穴を掘ったのかわからないけど、その穴と一緒に首から上を残して花…黒い花姫に笑顔で埋められて説教されてるカオが居る気が。

「伊奈実んに笑われてるよぉーっふふふっ」

「二人とも笑うなよな〜。お、そこの席空いてるっぽい!行こうぜ」


歩き出そうとしたその時、膝裏に衝撃が来て、よろめきながら地面がまた近づいた。

「おっと〜!大丈夫かな〜?」

脇の下辺りを支えられて無事を得た。っていうかこの声…

『伊奈実!…って珠洲先生!?』

カオと花が驚きの声をあげた。


今、私この先生に膝かっくんされてよろめいたんだけど…。


「いな…九谷さん、まだ調子良く無いんじゃない〜?」

「いや、」

「そうだよぉ、伊奈実ん。無理しちゃだめだよぉ?戻って来た時も顔色少し悪かったしぃ」

「まだ体温も低いみたいだし、じゃ〜ちょっと保健室に行こうか?」

「え?」

気づいたら抱え込まれて、足が地面から遠ざかっていた。

「君たちも一緒に来てくれるかな〜?」

特別にお昼保健室で食べていいから〜と小声で話して、この先生はカオと花を巻き込んで反論する間もなく話を丸め込んだ。



 *



「ん〜36.0℃丁度か〜。眼の下もまだちょっと白っぽいけどまぁ、正常範囲かな。はい、お昼食べていいよ〜」

先生に開放されて、そそくさと二人のとこに移動した。

おいおい私、せっかく午前中に逃げたのにまた捕まったよ。

なんで膝かっくんされたのかさっぱりわからないし。何?トラップ?


「それにしても可愛いですよねぇ、この部屋の内装ぉ」

「あ、わかる〜?元々、落ち着けるような色にしようって壁とか替えたんだけど、楽しくって張り切っちゃったんだ〜。小物類は僕のチョイスだよ〜」

「珠洲先生イケメンなのに可愛いもの好きって面白いっすね」

「ははは、ほめてくれてありがと〜」

早くも花とカオに馴染んで盛り上がってるよ、おいおい。


「このインテリアの雰囲気どっかで見たことがある気がするんだよな…」

「カオも思ったぁ?私も思い出せそうなんだけどぉ…」

「そう言われると確かに、何かに似てるような…?」

私はサンドイッチを、カオはカレーを、花はオムライスを頬張りながら考えた。


「わかったぁ!ミナミさんだよぉカオ」

「あぁ!それだ!!」

「ミナミさんって誰かな〜?」

「伊奈実んのママさんですぅ。

ミナミさんの部屋はこんな感じのインテリアで、元々は伊奈実んの部屋にしようとしてたみたんですけど、趣味じゃないって拒否されちゃったらしくて悲しみのあまりバージョンアップして自分の部屋にしちゃったからちょっと異空間っぽいんですよぉ」


そうだ。ここの保健室はさすがにちょっと押さえ気味のインテリアだけど、似てる。

私が拒否したミナミさんの部屋、可愛い過ぎて掃除の時以外足踏み入れないから忘れてた。


「はははっ、僕と好みが似てるんだね〜伊奈実ちゃんのお母さん。会ってみたいな〜」

「会わせません」

「っていうかぁ、会えないですよぉ?」

「そうだな。今シンガポール?だっけ?」

カオが私に疑問を向けて来た。

「先週電話来たんだけど、カナダに移動になってた」

「マジでか?世界飛び回ってるなミナミさん」

「うん」

「相変わらず忙しそうだねぇ。電話でまた、伊奈実んの一人暮らしが心配ーって泣いてたぁ?」

「そう。まだしつこいこと言うんだよね」


「伊奈実ちゃん一人暮らしなの〜?」

げ、先生の存在忘れてた…。

カオと花も忘れてたみたいで、ゴメンって拝まれた。


「そうです。母と二人の家庭なので」

「一人でご飯とか大丈夫?料理できる?」


ん?この先生私がご飯作れないと思ってる?


「先生それは大丈夫。伊奈実の作るご飯うちの母ちゃんのより全然おいしいっすよ?」

「そうなんだ〜。じゃぁ、一人でもさぼっちゃだめだよ〜?」

「う…善処します」


「珠洲先生、透視まで出来るんっすか?やっぱり…」

「あ、宇宙人じゃないからね〜」

「カオ、学んでないねぇ。バカは直んないからもう黙ってな」


「んー!んんん?!んんんっん、んんんんんんんんー!!!」

(えー!ちょっと?!直んないって、バカっていうなー!!!)


自分で、両手で口を押さえながらカオが唸ってる…。

「カオ、黙ってるってそう言うことじゃない…」


「??」


「はははっ愛すべきバカって感じだね〜」


「!?先生にまでバカって言われたっ!」


「っくく…はははっ」

カオが眉を思いっきり下げて口をあんぐり開けた顔があまりにも面白すぎて、つい笑ってしまった。


「伊奈実んにうけたよぉ。バカでよかったねぇ?カオ」

「えぇ?!…まぁ、いっか。うけたなら」

「ははははっ、君たち面白いね〜」

「先生にまでうけた!?」

「役得だねぇ、カオ。あ!時間やばい!」

「うわ!ほんとだ!」

「急がなきゃ!」

「「「失礼しました」」」

「は〜い。またね〜」



「あれ?あと十五分も昼休みある…あの子達次の授業なんだろう?」

珠洲の疑問は三十分後に解かれることになるが、今は空しく部屋に言葉が消えるだけだった。

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