12:サクラとカエデとフルネーム
「サクラ、僕は犯罪なんてしてないよ〜」
「嘘よ!昨日も何かいつもよりニコニコしてたし、変だとおもったのよ!
あなた大丈夫!?…ってキューちゃんじゃない!」
「え?」
ギュッとミニワンピのお姉さんの大きな胸に抱きしめられた。
私をキューちゃんって。それにこの感じもしかして…
「店長さん?」
「そ〜よ、キューちゃん。私よ?いつもはショップの制服だからわからなかったかしら~?ふふっ♪」
ミニワンピのお姉さんはなんと、私が通うコーヒーショップの店長さん。
店長さんは、ヨーロッパ生まれの日本人クォーターで、大学とかも海外だったらしくて、日本語よりフランス語や英語が得意。
漢字がちょっと苦手で、ポイントカードに書いた私の名前がうまく読めなくて、呼びはじめたキューちゃんって言うのを今も使い続けて可愛がってくれている。
美味しく飲めるペーパードリップの仕方もこの人が教えてくれた。
「ごめんなさい。制服姿の時も美人さんって分かるんですけど、私服だとさらにに綺麗でわからなかったんです。店長さん、サクラさんってお名前だったんですね」
「きゃ~♪ほめられたわ~!ありがとう♪
そうよ、サクラよ~。キューちゃんこれからはサクラって呼んでね~。ふふっ♪」
「わかりました、サクラさん…で、いいですか?」
「キャー!!!かわいい!!私の名前呼んではにかんだわこの子!!キューちゃんかわいすぎるわ〜!!!」
再びサクラさんに抱きしめられた。
「あの~、サクラ?僕を忘れてない?」
「はっ!そうよ、キューちゃん!あなた大丈夫なの?!カエデに何されたの?!」
「カエデ?」
急に誰か知らない人の名前が出て来て戸惑った。
「サクラ…事情も聞かないうちから僕は犯罪者決定なの~?」
ん?今の話からするともしかして…
「珠洲先生がカエデ?ですか?」
「そうだよ~伊奈実ちゃん。僕、珠洲楓(すず かえで)だよ。名前知らなかったっけ~?あ、僕のことも名前でカ・エ・デって呼んでね~」
「呼びません、絶対。聞かなかったことにします、珠洲先生」
「え〜?!サクラは良いのに僕はダメなの〜?」
なんか鬱陶しいから無視することにしよう。
「サクラさん、この状態は私がスープをこぼしてこうなってます。
何されたかと言えば、昨日と今日で顔面三ヵ所程、許可なく唇つけられました。珠洲先生とお知り合いの様なので、サクラさんとっちめといてください」
この先生の困った攻撃を大きな問題にならない程度にどうにかできるのは、きっと今だ。
サクラさんの力を借りよう。
「oh~!私の可愛いキューちゃんが…カエデ~!お姉ちゃんはそんな子に育てた覚えはないわよ~!!!」
バンっ!
珠洲先生の頬を平手で一撃したサクラさんは目に涙を溜めていた。
え?お姉ちゃん!?
とんでもなく効き目の強い力を借りようとしていたのだと気付いた。




