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ストレート  作者: 業平アキラ
第二章
11/63

11:気がつけば

「ん……?」

消毒の匂いに…天井?

「九谷さん気がついた~?」

シャッとカーテンを開けてキャスター付きの椅子に座ったままやって来た忌まわしき珠洲先生を見た瞬間、体が逃げろの指令を出して考えるより先に動いた。

「?!」

「あぁ、そんなに勢いよく起き上がっちゃダメだよ~?貧血でさっき倒れたばっかりなんだからね~」


先生、あんたに驚いたんです私は。


まだ少しだけ重い頭を無理矢理左右に振って、シャキっとさせて記憶を呼び覚ました。

あれから保健室に連れられて来たみたいだ。時計を見ると十時を過ぎていてもう二限目が始まっていた。

後で花とカオに色々聞かなくちゃな。


「あ〜、そんなにぶんぶん頭振っちゃってもう…気分悪いとかないかな〜?」

「もう大丈夫です。お世話になりました。では。っ!」

「ほらほら〜保健室嫌いだからって、まだ無茶したらだめだったんだよ〜貧血甘くみちゃだめだよ〜?」

ベッドから降りたのはいいけど足に力が入らなくて先生の腕に支えられた。

って、保健室嫌いな今一番の理由は珠洲先生あなたですけどね。

でも危なかった。顔面から床にこんにちはするとこだったよ私。

いくらなんでもガラスに勝ててもコンクリートの固まりには勝てる気はしない。


「すみませ…っちょ!?」

考えていたら急に顔が近づいてきて、反射で目をギュッと閉じた。

「ん〜、顔色は戻ってきてるけど体温がちょっと低いね〜」

「……」

そろっと目を開けると、すぐそこに目を閉じたまま喋る先生の顔があった。

「は、放せ!」

「ん〜?でも手を放すと伊奈実ちゃんがまたフラっとして、床に頭突きしちゃいそうだなって思ったから~。はい、まだベッドに座っててね~」

なんか額で検温されたの言いくるめられた気が。

とっとと保健室から退散したいのに…

「いえ、もう大…」

「大丈夫じゃないのに大丈夫とか言わないの。メッ!じゃないと昨日みたいに僕の膝の上にいてもらうよ~?」

「居ます!ベッドの上に!!」

ベッドに上がって白のシーツと布団に必死にしがみついた。

「うん、よろしい~。ちょっと待っててね~」

すっごい笑顔で頭を撫でられ、鼻歌まじりで先生は遠ざかって行った。


またちっちゃい子扱い…

先生が離れてくれて助かった。


珠洲先生が近いとなんか血流がおかしい感じがするんだよね。

これって変?何かの病気?だったら嫌だな……よし、気づかなかったことにしよう。

もう珠洲先生にはこのまま放っといてほしい気分で一杯。

あのちょっと変わった色の目で病気とか見抜かれそうで嫌なんだよね。

「はぁ…」

伊奈実はガラス窓越しの空を遠く眺めてため息をついた。




「おまたせ〜はい、これ」

「?…これ」

三分くらいして戻ってきた先生によって伊奈実の手の上に乗せられたのはどう見てもインスタントのトマトのパスタスープ。

何で???

訳が分からなくて先生を見上げた。

「僕、朝ご飯食べてなくってさ〜。伊奈実ちゃんよかったら一緒に食べてくれない?」

目の前で自分と同じ物を手にしてニコニコしてる。

と、思ったら急に悲しげな表情に変わった。

「伊奈実ちゃんトマト嫌い?」

「いえ、トマト好きです…けど」

「ふぅ〜よかった〜。僕何も考えないで持ってきちゃったから〜。はい、スプーンね〜」

「…ありがとうございます」

なんでこんな時間にとか聞くのも面倒なのでとりあえず乗っておくことにして、温かいスープを口にした。


「おいしい?」

「…はい」

「うん、よかった〜これ僕の好物なんだ」

「そうですか」

「そうだよ〜。ところで九谷さんさ〜朝ご飯きちんと食べてる?」

「はい」

「何食べた〜?」

「食パン一枚とコーヒーを」

「そっか〜。一応食べてはいるんだね。でももう少したまごとか野菜とか取っておこうね〜。昨日とさっきも思ったけど九谷さん体重軽すぎるからもう少し栄養取りなね〜」

「……?さっきって何ですか?」

「気づかなかった?君をこうやってここまで運んだの僕だよ〜」

こうやってはなんと横に抱き上げるジェスチャーだ。


 どうしよう。なんということでしょう。ファンが、珠洲ファンが私を殺しにやってくる!!!!

この身にやってくる危機の中でも一番厄介そうな人たちが、敵に回ってしまったことを理解してた。

うぅ…どうしよう。

頭の中は危険のマークで埋め尽くされてフリーズした。


「あ、伊奈実ちゃん。スープが口の横に付いてるよ〜」

ペロっ

「!!!」

バシャっ

「わわわ!伊奈実ちゃん!スカートが!!」

「誰のせいだと思ってんだこの変態!!!」

口の横をペロッとされ驚きのあまり三分の一程の量のスープを手からスカートへこぼしてしまった。

「熱…」

「火傷しちゃうから早く脱いで!」

「んなっ…無理!」

「カーテン引いて出るから早く!」

シャッ

先生が出て、走って行ったと同時に伊奈実はスカートを脱いだ。

膝に近い太ももの辺りが少しだけ赤い。

「はぁ…」

下着は大丈夫だったけどスカートどうしようかな…なんて考えていたら先生の足音が近づいてきた。

「九谷さんごめん。これタオル。まずは腰に巻いてくれるかな?」

カーテンの隙間からタオルを持った手が伸びてきた。

先生の声があまりにも暗かった。

「はい」

受け取ったバスタオルを巻いた。

「あの、巻きましたけど」

「入っていいかな?火傷とかしてないか確かめたいんだ」

声がますます暗くなった。


あぁ、この人自分のせいだって気にしてるんだ。

きっかけは確かにあんな事した先生だけど、スープをこぼしたのは私。


「あの、先生?私大丈夫ですよ。ちょっと赤くなっただけですから」

「赤いの!?」

先生が足下に来て跪いた。

「本当にごめん九谷さん」

先生が持ってきた濡れたタオルでそこを冷やしながら私の目を見て悔しそうに言った。

「いえ、きっかけは先生ですけどスープ零したのは私自身ですから」

先生がプルプル震えて、まさか泣いてるのかと足下の先生をのぞいた。


「伊奈実ちゃん…伊奈実ちゃん優しいっっっっ!チュッ」

ゴンッ!!

「だからそうゆう事すんなって遠回しに言ってんだろが!この変態!」


包容して頬にキスするとかさっきまでこの先生は何を悲しんで居たのかさっぱり分からない。

まったく、学習能力無いのかと疑いたくなるから、鉄拳をお見舞いした。


「え?あいさつ的なのだけどな〜ニホンは無かったっけ?」

「無いわっ!!………日本?」

ん?何言ってるんだ、この先生?

「あの、」


ガラッ、バン!

「Hi〜!珠洲せ・ん・せ・い!届けにきたわよ〜」


すごい勢いで入り口を開けて入ってきたミニワンピの人を見ると学校関係者じゃないけどなんだか見覚えのある人だった。

誰だっけ?この人知ってる気が…伊奈実は記憶をあさり始めた。


「ふふふ〜ここの私立って豪華ね〜ってあんた!女子高生に何したの!?無理矢理は犯罪よ!」


ベッドの惨状に腰にタオルを巻いた少女、そして跪く珠洲というこの何とも微妙な状況で犯罪と判断したらしい。


「オーマイガッ!」

ミニワンピのお姉さんが叫んだ。

珠洲が伊奈実を名字で呼ぶときは先生モードで

名前で呼ぶときは、個人的に接してる設定です。

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