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あの日の姿

「…母さん、頼むから、もうそんな無茶しないでくれよ」

話を聞き終えて、イクトの第一声はそれだった。

リオは少しだけ納得いかないようだ。

だが、話を聞く限り、一歩間違っていたら、リオは死んでいたかもしれないことは事実。

それに、リオだけではない。

「父さんもだからな」

イクトに指摘されて、陸斗は微笑む。

「リオが約束できるなら、俺も約束するよ。無茶しないってね」

そういってリオに視線を送る陸斗に、イクトはため息をついた。

リオがそんな約束できるとは思っていないからだ。

母親の性格は、一応熟知しているつもりだ。

そして、父親の性格も同じくらい…。

『むしろ、父さんの性格の方がわかるっていうか…。同じ男だからっていうか、この母さんを相手に、無茶しないなんて無理な話だな…』

心配するイクトの横で、ハルは目を輝かせていた。

「え、つうか、かっこよくね?!ちっちゃい子、助けたのもそうだけど、卒業式の告白とか、マジ憧れる!!」

ハルがいうのは、卒業式というシチュエーションではなく、リオと陸斗のやり取りの内容の方。

「それはわかるけど、いや、息子としては、先の件みたいなこと、さすがにやめてほしい。って、聞いてるか、母さん」

そっぽを向くりおに、イクトは困ったようにいう。

「聞いてるけど…だって、レオだってあの状況だったら走り出してたと思うし。結果的に、たくさん心配もかけちゃったけど…。大丈夫!何があっても、陸斗とイクトが守ってくれるから!」

その自信に満ちた顔にイクトは盛大にため息をついた。

「だから、その自信はどこから…っていうか、父さん」

「まぁ、そういうことだ。諦めろ、イクト」

息子の心配をよそに、リオと陸斗はいたって真面目にそう答えているから、余計にタチが悪い。

「ホント、俺の父さんとは大違いっていうか、なんていうか…」

山倉家の親子のやり取りに、ハルはしみじみそういってみせる。

「おい、こら!俺だって、結構かっこよかったんだぞ!告白だって、しょっちゅうだったし、なによりイケメンだし!」

「うっわ、自分でイケメンとかいいだしたよ!そういうのに限って、嘘なんだよ!イケメンっていうのは、俺みたいなのをいうんだよ!」

「あらあら、ハル?あなたも、自分でも、イケメンっていってるわよ?」

梨月がさらっと、つっこみをいれる。

「え?!いや、俺はまだ若いからいいの!」

「はい、理由になってませーん!」

「母さん!父さんのこと、どうにかしてよ!」

ウーッと威嚇し合う父と子に、梨月は背伸びをして笑いながらレオの頭をなでた。

「親子仲良しで、いいことじゃない。それに、二人はそっくりだから、あまり、比較の対象には、お互い、ならないんじゃないかしら?」

そう事実を述べれば、二人は深く考えて黙り込む。

その横で山倉家の面々は、さすがだと口をそろえるのだった。

「そういえば、ハルの父さんと母さんの出会いも、聞いたことないな。母さんと双子だってことは、知ってるけど」

「あら?そうだったかしら?うーん、リーちゃん達の方が、話題、多いから、話してなかったのかも」

イクトの言葉に、梨月は思い返してみるが、確かに自分たちの出会いについてはそんなに話したことがなかったかもしれない。

梨月はレオに視線を向ける。

対するレオは、あまりいい顔をしなかった。

「レー君、どうする?」

「…んー。あんまり、よくないけど、まぁ、仕方ないかぁ。お前ら、絶対馬鹿にすんなよ?」

レオは渋々そういった。

イクトとハルはお互い顔を見合せて、それから頷く。

「俺達の出会いは、決して素敵な出会い方じゃ、なかったんだ。むしろ、最悪。もっとマシな出会い方はできなかったのかって、今でも思う。あの時、梨月を傷つけたこと、後悔してるんだ。改めて考えても、梨月は俺の何倍も大人だった。…敵うはずねーよな」

レオはそういうと少し苦笑して、話し出す。

リオと陸斗の出会いのように、互いが認め合った出会いなどではなかった。

それは、リオと陸斗の再会から、さらに三年前、彼らが中等部へ進学した、まさにその日……。


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