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卒業式

作者: 網笠せい
掲載日:2026/03/13

 信号待ちで、ビニール傘をつたう雨の雫をながめていた。街灯に照らされた水玉が少しずつ大きくなって、つるりと形を変えていく。今年受け持った児童たちの成績表をつけていたら、すっかり遅くなってしまった。

 横断歩道の向こうには、水たまりができている。車のヘッドライトや赤信号の光が映って、ぼんやりとにじんでいた。

 雨足が強くなって、波紋ができる。雨が水たまりに降るたびに、映った光や景色が揺れる。

 信号の色が変わった。私は極力水たまりを避けるように、歩幅を変えながら横断歩道を渡る。ときどき小さな雨粒が飛んできて、私のトレンチコートにうっすらと乗った。

 白く毛羽立ったコートを見て、こんな色だったっけなと、私は寒さに身を縮こまらせた。雨が降ると、まだ寒い。

 学校には桜の木があって、ちらほらと花が咲きはじめている。いつの間にか、ビニール傘に花びらが一枚乗っていた。

 傘の内側から花びらを見上げながら微笑んで、私は駅へと歩き出した。今年の年度末で転任が決まっていた。


「もうすぐ卒業式か」

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