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「まぁ、岡ちゃんの件は良いとして……レーベル所属の話は、私たちもさっき伊都ちゃんから聞いたのよね?」


 なりは露骨に雪枝と葉子を見つめながら言った。時間の隙間に針を差し込むような鋭い視線である。


「え、まあ、そっスね……」

「別に隠そうとする気はありませんでしたよ?」


 そりゃそうでしょうよ。私なり沙希なり伊都ちゃんなり千里さんなり、絶対誰かから聞くことにはなるんだから。と、なりは心中でぼやいた。


「で、さあ、どうよ? 現実問題として。事件の調査しながらあれだけのプロジェクトやれると思う? みんな」


「えっと……」

「そうよね。常識的に考えて」


 真銀と伊予がすぐに反応したのに対し、沙希はどっちつかずの神妙な顔をしている。なりにとってはちょっと予想外だった。


「あの、先に言っとくけど私が依頼したんだけどさ、自分としてはお前らの好きにしたらいいと思ってる。千載一遇のチャンスじゃん。はっきりいって、多分これ逃したらもう浮かぶ目無いぞ」


 うっ、と沙希の呻くような声が聞こえた。


「やー、まあ、なので我々としてはですね、現在のところ暫定的に両立という方向で進めていこうと思っているわけなんですが……」

 葉子は恐る恐る口を出したが、


「そんな都合よくいくと思ってんのか? 打ち合わせとかだって今までとは段違いに多くなるぞ? なによりお前ら全然練習足りてないんだしさ」


 数凪に釘を刺しこまれた。


 それは確かにその通りなのである。加えて調査業と並行していれば、打ち合わせやレッスンに参加出来ないメンバーも歯抜けのように目立つだろう。


「しかし……それでは夕山四季さんは?」


 今度は数凪が呻く番だった。


「四季は……まあ、確かに心配だよ。気になる。居場所が知りたい。でもまあ、お前らだって人生かかってるしな。無理そうなら、こっちでどうにかするよ」


「どうにか、なりそうですか?」


 さらに重ねてくる雪枝に、数凪は眉根をひそめ〝うー〟とくぐもった声を出す。


「警察……は別に私が言わなくったって探してるしな……。こんな話したって信用もしちゃくれねえか」


 数凪は過去の素行の悪さのおかげで警察には良く思われていない。舌打ちして黙ってしまった。雪枝は少しだけ心苦しそうである。


「あの、多分急いだほうがいいと思うんです」


 誰にというわけでもなく、雪枝はぼそっと言った。


「なんで?」

「まあ……カンですかね」


「お前のカン当たるっぽいもんな~」 


 ため息をつく数凪に向かって、雪枝は弱々しく微笑んだ。


 大江なりはその様子を見ていて、なんとなくマズい! 直感した。


 良からぬ方向に進んでいる。


 伊予の方に目を遣った。両手の指を組み所在無げに動かしている。半ば諦めているようにも見えた。


 もう、しょうがないか。とも思える。自分だってやりかけたことを放り出すのは気が進まない。


 でも、SNOWには折角のチャンスに全力投球してほしい気持ちが大きい。


 自分の立場は微妙である。アイドルとしてのSNOWの中に自分は入っていない。


 あくまで、半端なマネージャーみたいなものとしての立ち位置から助言する、という立場である。


 社内の雑用や広報の手伝いよりも、もっとSNOWのマネージャー係に積極的になっておくべきだったな、と思う。


 ただ、言うべきことは言っておかなければならない。


「あの、時間のこともそうなんだけどさ、考えてみてよ。もし、四季を殺した犯人……までいかなくても、今回の事件に関係してる人間がプロジェクトの基幹にいる人だったらどうするよ? 私らが引っ掻き回したせいで、下手したらプロジェクト自体なくなっちゃうよ」

 

 みな、黙りこくってしまった。特に数凪の胸の内には複雑な想いが去来しているようだ。


 今の時点で、自分たちが何を相手にしなくてはいけないのか? 正体が掴めていない。


 もし相手が何らかの組織、大きいものだった場合こちらが負けてしまう可能性も十二分にあるし、全てが上手くいったとしてもおそらくタダの大団円とはいかないのだ。


 多分に心理的な要素が大きいのだが、なりは〝知らない内ならまだ引くことが出来る〟と言外に言っている。

沙希が片手で挙手し、


「あの、なりが言ってることってさ、こう、言い方は悪いんだけど〝臭いものにはフタ〟みたいな? そういうことだよね」

「違うよ。そうじゃない」


 なりは語気を強めた。


「時期が悪いってこと。せめてプロジェクト発表……いや合同リリイベまではアイドル活動に本腰入れて、それからこっちの捜査にかかるようにすれば、もし何かあっても〝無かったこと〟にはならない。……多分」


「でもさ、それって犯人もそう思ってるかもしれないよね」


 発言したのは伊代である。


「まあ、もし殺人だったとして、その犯人がプロジェクトの中心に近いヤツだったとしてさ、まだ逃げてないのはこの企画をやりあげてから、って考えてるのかもしれないよね」


「海外にでも逃げられたら手も足も出ねえ、か。それに、それまで犯人野放しってのも気分は悪いよな」


「また犠牲になる人も出ちゃうかも……」

「殺人は癖になる、って言いますよね」


 真銀もしかつめらしい顔で口を出した。雪枝は何か言いたそうだが我慢している様子である。

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