嘘の付き合い
広い心で読んで下さい!!!
今、なんて言った?
偽恋人になってほしいと言わなかったか?
恋人って、恋愛でイチャイチャしている男女の話だが。
「私に偽恋人になってほしいというのは、理由を聞いても?」
私がそう聞くと、牙城先輩が伊田先輩を見ている。伊田先輩が私の方を見た。説明を押し付けたのだろう。
「私と牙城に沢山の恋文や告白があります。ですが、それらを相手にする時間が惜しいのですよ。時間は決まったものしかないのに」
「えっと、まさか。その告白をとめるために私が選ばれたのでしょうか?」
「文武両道で外見も美しく、非の打ち所がない貴方なら周りも納得してくれでしょう?」
「その、偽恋人の時間がバイト時間になるんでしょうか?」
「そうなりますね。お願いしたいのですが?」
「断ってもいいでしょうか?」
「「は?」」
牙城先輩と伊田先輩が驚きの所為か固まる。
「いえ、私には荷が重すぎます。もっと、綺麗な女性に頼んでみては?」
「貴方は頭もいいと思っています。もし、私たちがそう頼んでも、女性も男性も頭が悪すぎて勘違いをしますよ」
「私はしないと?」
「そうでしょう? だって、貴方は私たちに興味の欠片もないのですから」
「何故、そうだと言い切れます?」
「貴方にはもう、好きな人がいるからですよ」
「それはそれは、また困った答えが来ましたね。勘違いをされても困る」
「おや、勘違いですか?」
「はい、誰の事なのか理解していますよ。舞香ですよね? あの子は親友ですよ」
「おやおや、必死ですね。そんなに、女性が女性を好きなのが変ですか?」
この先輩、舞香との何を見てそう言ってくるか分からないけど、舞香は唯一、私を見て惚れてこなかった相手だ。確かに、特別だが、親友だ。恋人になりたいなどと、そんな事。
「親友をそんな風に言われては困ります。勘違いにもほどほどにして下さい」
「ふーん、なら俺がその舞香とやらに声をかけてもいいと?」
「は?」
牙城先輩が椅子から立ち上がってこちらに近寄ってくる。
「俺なら、その舞香を幸せにしてやれると思うのだが?」
「御冗談を、貴方が舞香を幸せにできませんよ。だって、本気で好きじゃないのだから」
「知っていけば、いいだろう?」
「一言、言っておきます。舞香を泣かせたらタダではおきませんよ」
「ほぉ、そんな冷たい瞳も出来るのだな」
「親友を毒牙にかけようとしている人間に笑みなど不必要でしょう?」
「そうかそうか、そんなに大切なのだな。ならば、舞香に手を出さんから俺達の恋人になれ」
「……」
「考える事もあるまい?」
私はため息を吐いた。
「分かりました。その話を受けましょう」
「おー、受けてくれるか。さすがは文武両道の麗しの君だ!」
「なんですか、その長い説明みたいな名は?」
「全校生徒のお前につけている第二の名だよ。麗しの君」
「はぁー、それで私は何をすればいいのでしょうか?」
「そうだな、まずは俺達と学校の帰り道を一緒にしようではないか!」
「分かりました」
牙城先輩が嬉しそうに鼻歌を歌いながら、鞄に資料や本を詰め込んでいる。帰り支度なのだろう。しかし、何がそんなに嬉しいのだろうか。女子からの告白や男性からの告白が無くなるとは思えないのだが。困った。私にそんな効力があるとは思えないのだが。
「ありがとうございます。渡瀬さん」
「陸で結構ですよ、伊田先輩」
「ならば、私の事も下の名で徹と」
「俺は蓮でいいぞ。先輩や様などいらないからな」
「分かりました。徹、蓮」
「宜しくお願いします。陸」
「おう! 宜しくな、陸」
「……」
どうしよう、キラキラ度合が怖い事になっている。
こうして、私は学校のプリンスとキングと嘘のお付き合いが始まったのだった。
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