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異世界カリスマ美容室  作者: ほっこり純
2章【エルフ・エルミラ編】年齢を気にするエルフ女性が、ゆるふわ愛されカールになって650歳年下の冒険者仲間にアタックする話
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年齢を気にするエルフ女性が、ゆるふわ愛されカールになって650歳年下の冒険者仲間にアタックする話 3話/全5話

「いらっしゃいませ、美容室ファンタジアへようこそ」 


 温かみのある声と共に、噂のイチローとおぼしき人物が現れた。彼は一見、優男の様に見えるけど、その立ち姿からは落ち着いた威厳と穏やかなオーラが感じられた。彼は微笑みながら私を店内へと案内してくれた。


 私、エルフのエルミラは、"そこそこ"長く生きているけど、こんな雰囲気を味わったのは初めてだった。店内は異国情緒に満ち溢れており、まるで本当に異世界に足を踏み入れたかのような雰囲気だった。


 "壁に飾られた神秘的な装飾品"、"見たこともないほど柔らかな光を放つ不思議なランプ"、そして空間を彩る"聞いたことのない種類の音楽"が、店全体を幻想的な世界へと誘っていた。


 そしてイチロー自身のいでたちは、その店の雰囲気に完璧に調和していた。見たこともない生地で出来ている彼の服装は洗練されており、彼自身の落ち着いた風格を一層引き立てていた。


「お願い、私に年齢を感じさせない美しさを!」


 その美容室の異世界的な雰囲気とイチローの優しい雰囲気に囲まれ、私の中に隠されていた深い願望が一気に膨れ上がって口から出てしまった。『試しにちょっと行ってみるか』なんて軽口で誤魔化してしいた私の態度は、すっかりどこかへ行ってしまっていた。


 私の声には、ただの好奇心や試しに来ただけの軽い気持ちではなく、秘めていた若さへの渇望、時間を取り戻したいという切実な願いがこもっていた。甘やかな幻想であることを心のどこかで理解していながらも、私はその欲望を捨てることができなかった。



「承知しました、お任せください」


イチローの穏やかそうな見た目からは想像もつかないほどの強い自信が、彼の言葉と姿勢に表れていた。


 不安がくすぶり続ける私の心に、彼の堂々とした様子は、どこか安心感を与えてくれた。イチローの確信に満ちた姿勢に、私は自分の心を託す決断を下した。



――


 「では、髪を洗っていきますね」気が付いたら私は、イチローに髪を洗われていた。


 本当は知らない男性に自分の長い金髪を触られることに少し抵抗を感じていた。しかし、イチローの落ち着いた雰囲気と、店の幻想的な非日常感、さらに温かく心地よいお湯の感触に、私の心がどんどん開かれていくようだった。


 「はわ、気持ち~い」私はつい口にしてしまった。私が体を預けているその柔らかい椅子は、まるで雲の上に座っているような心地よさを提供してくれた。初めは回転したり倒れたりする椅子の奇妙さに戸惑いを感じたが、徐々にその椅子に身を委ねるようになった。

 

 そしてイチローの手つきは非常に優しく、それでいて確かな技術を感じさせるものだった。彼の指先が私の髪を通るたびに、私は日常の緊張から解放され、深いリラクゼーションに包まれていく。この快感は、私に全てを許したくなるような気持ちを呼び覚ましていた。


「では、シャンプー使っていきますね」そう言うとイチローは私の髪に"謎の液体"を塗り始めた。すると予期せぬ快楽の波が私を襲った。その液体から立ち上る香りは、私がこれまでに嗅いだどんな香りとも異なり、非常に繊細で心地よかった。それは花々の甘美な香りに混じって、森の清々しさや新鮮な空気の匂いがするような気がした。


 この香りは私の感覚を瞬く間に魅了し、私は目を閉じてその香りに身を委ねた。まるで春の森の中を歩いているような、または静かな湖畔で深呼吸をしているような、穏やかで爽やかな感覚に包まれた。


 イチローの手が私の頭皮を優しくマッサージするたびに、その香りはより一層私の心を満たし、至福へと誘っていった。まるで、その香りが私の心を癒し、日々の疲れやストレスを洗い流してくれるかのようだった。それはただの洗髪ではなく、心と体を解放する魔法のようなものだった。異世界美容室、確かにここは素敵な場所ね。


 濡れた髪をそのままに、イチローに導かれて次に私が向かったのは、大きな鏡の前だった。その鏡は、私の見慣れたものとは異なり、その大きさと明瞭な反射に私は驚きを隠せなかった。


 「では、ドライヤーしていきますね」私が鏡の前の椅子に座ると、イチローが手に取った"奇妙な道具"から温風が吹き出し、私の髪を乾かし始めた。その不思議な技術に私は目を見張った。温風が当たった私の髪の毛がどんどん乾いていく。


 何かの魔法だとは思うけれど、魔素の動きに敏感なエルフの私が、その魔力の流れを感知できない。まるで魔法なんて使っていないかのように、魔法を使っている。どうやっているのだろうか。


 とはいえ、私の長い髪は乾かすのに時間がかかるようだ。イチローが丁寧に髪を乾かしている間、私は目の前の鏡に映る自分の姿を見た。イチローの魔法よりも、今はそちらの方が重要だ。


 そこに映し出されたのは一見若く見えるエルフの私の姿だった。しかし私の傷んだ長い金髪は、長い年月を生きてきた証を静かに物語っているかのようで、あまり見たくはない。見たくはないけど、つい見てしまう。


「あれ? なんだかいつもと……」不思議に思い、私はゆっくりと自分の髪に手を伸ばし、その感触を確かめた。驚くべきことに、髪は驚くほど滑らかで柔らかく、まるで絹のようにすべすべしていた。


 これは、イチローが今使っている温風の魔法のおかげだろうか、それとも、さきほど塗られた、心地よい香りのする液体による変化なのか? 私は自分の髪を何度も触りながら、その理由について考え込んでしまった。


 私の指先は、髪の一本一本を通り抜けるたびに、その驚くべき柔らかさと滑らかさを実感していた。イチローの施術が終わる前と後では、私の髪はまるで別物のように変わっていた。


 「ねえイチロー、すごいわね、これ」私は感激していた。確かにこれなら、200歳は若く見えるかもしれない。私は混乱と同時に、イチローの魔法技術に対する感謝を深く感じていた。


 しかし、イチローの反応は私の態度とは異なり、真剣な表情を浮かべていた。彼の腰にはそれぞれ異なる形状とサイズの大量のハサミが付けられており、まるでこれから戦場にでも行くような準備をしているかのようだった。


「さあ、これからですよ。あなたの未来を切り開きましょう」


エルミラはどのような髪型になるのでしょうか。次話へ続きます

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