表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

アンノーンVSレッドアイズ

 数時間前の出来事である。

 たこ焼き屋で六個入りを注文する陽介。出来上がるのを待つ間、陽介は飲食スペースでたこ焼きを食べている若い男に声をかけられる。彼は陽介の氏名、元日本警察官であることを知っていた。男の正体を尋ねる陽介。


「僕は時田蔵助と言います。今日は夏目さんに用があって来ました」


 椅子に座る陽介は時田の話を聞く。


「夏目さん。僕たちと一緒に過去に戻って亡くなった命を取り戻しませんか?」

「命を取り戻す? お前らは何者なんだ」

「アンノーンと名乗っています」


 黒須から頼まれている調査の対象が、目の前に現れた。話を続ける時田。


「僕たちは間違ったことをしているつもりはありません。失われるはずだった命を過去に戻って救うことのどこがいけないのか。夏目さんなら理解できるはずです」


 陽介は事故で亡くなった夏菜子を思い浮かべる。たこ焼きが出来上がって受け取る陽介。自分は時田たちを取り締まる側だと誘いを断る。


「本当にそれでいいのか?」


 聞き覚えのある声が遠くから聞こえた。陽介のもとに来るその男は元上司の井山勇。立ち上がって、敬礼する陽介。


「まあ座れよ」


 井山に促されて椅子に戻る陽介。


「アンノーンのほとんどが元警官たちで構成されている」

「元警官?」

「そうだ。日本警察官不祥事事件の渦中にいた連中だ。自分も含めてな」


 アンノーンの目的を尋ねる陽介。時田が言っていたようにアンノーンは失われた命を過去に戻って助けることだった。その活動を邪魔する組織が存在する。それが陽介と井山たちから日本警察官の肩書きを奪った赤い目を持つレッドアイズ。井山たちはレッドアイズと戦っている。


「お前は優秀だ。レッドアイズとの戦いに必要不可欠だ。迷う必要はない」


 かつての上司に褒められて嬉しく思う反面、陽介は決心がつかない。自分は時空警察で成果を上げ、日本警察に戻るつもりでいた。向こう側に行ってしまえば二度と、戻ることはできない。一方で、あの時に自分がアンノーンにいれば夏菜子を救えたのではないか、と今も思っている。


「時間が限られているんだ、夏目。お前は時空警察の車両を俺たちに渡すだけでいい」

「TMを? そんなことできません」

「お前は憎くないのか? 日本警察官の肩書きを奪った赤い目の連中を」


 顔を下に向けて考える陽介に井山は急かす。赤い目の男を許せない陽介は決断し、時空警察署の地下駐車場にあるTM003を井山に渡した。アンノーンと行動していることがバレないように時空警察の端末を電源オフにした。井山はアンノーンとの行動用に新たな端末を陽介に渡す。


「また後で連絡する」


 井山と時田を乗せたTM003は陽介の前から姿を消した。


 指定された場所に陽介は訪れた。使われていない倉庫で、そこに時田と井山、見慣れた元警官たちが集まっていた。そして、その中に松原宗一もいる。


「松原宗一。お前もアンノーンの一味だったのか」


 彼は何も答えずに黙ったままでいる。静寂の中、時田が集まる構成員に次の指示を出す。


「次は時空警察第一室の室長である馬場隆を拉致する」


 かつて国家の安全と国民の模範となる正義を貫いていた警官たちは時田の指示に全くの疑問を持たず、忠実に従う。TMでタイムトラベルするには、セキュリティコードを持つ室長の馬場が必要だった。同じく第二室の室長である黒須ではダメだった。アンノーンの大きな目的を果たすには、馬場でなければならなかった。時田はその目的をまだ陽介には伝えない。


「馬場室長を拉致したところで、セキュリティコードをどうやって吐かせるつもりだ?」

「あの人は必ず僕たちに教えてくれます。夏目さん、よろしく頼みます。ここからアンノーンが動き始めます」


 レッドアイズとの遭遇に備えて武装する井山たち。陽介も拳銃を渡される。防弾チョッキにフードジャケットも渡され、武装するが陽介には無理だった。


「時田さん。夏目さんにはこの任務は無理ですよ」


 背後から女性の声が聞こえ、陽介は振り返る。そこにいた女性に驚く陽介。彼女は五年前に亡くなった桜庭春香。


「君は死んだはずじゃ……」

「とにかく場所を変えましょうか」


 桜庭に連れられて来た場所はある中華料理店。回転テーブルにいくつもの料理が並べられている。細身の体型からは想像できない大食いの彼女は次々と豪勢な料理を口に運ぶ。


「遠慮せずにどうぞ」


 急いで食べなくても料理は逃げない。陽介は受け皿に料理を盛る。しかし口に入らない。気になっているのは五年前に亡くなった彼女がなぜ、今目の前にいるのかだった。幽霊ではあるまいし。陽介が彼女の遺体を確認した第一発見者であった。


「あの時、私は死にませんでした。夏目さんが見たのはこれから死ぬ私です」


 桜庭は平然と普通に話すが陽介は理解が追いついていない。


「あの日、夏目さんが見た桜庭春香は未来から来た桜庭春香。つまり、今の私です」


 桜庭は最後の晩餐といくつもの料理に手を出し、大食い選手並みに食べる。


「君が時田蔵助と関わる理由は? アンノーンの目的に賛同したから?」

「私は宗一君をアンノーンに引き入れる為に利用されただけ」


 桜庭の箸は止まらない。


「あの時、私は死ぬつもりだった。その先、生きてても辛いだけだから」


 五年前の二〇四〇年。桜庭は十八歳の高校生、陽介は交番勤務の警察官だった。桜庭は社会に不満を持っていた。二十年以上前から進んでいるデジタル化は益々進歩していき、AIがいろんな業界に普及して、それは教育現場にまで影響を及んだ。直近でいうと、松原宗一の人生を変えたAI教師である。社会はデータを信用する。当時、政府は一つのデータに学歴や経歴、個人情報のすべてを集約した新たなシステムを導入すると発表した。例として、企業の採用で使われると政府は挙げた。就職採用において、AIが応募者のデータで、会社にとってふさわしい人材かを選ぶ。四十五年の今も議論が続いている。

 そんな社会の流れを見る桜庭は生きづらさを感じていた。常に監視されているようで自由を奪われている感覚。社会で生きていくには拒否することはできない。自分の意見に賛同してくれる者を集めても勝てる気がしない。相手は国家という大きな組織だ。このまま苦しい思いをするのなら命を断った方が良い。国家は億万人の内の一人が死んだとしても痛くも痒くもない。自分が死んでも国は、世界は回る。


「AIは人間をサポートしていた存在だった。今はAI中心に動いている。そうは思いませんか?」


 桜庭の発言は否定できない。日本警察もAI捜査チェイサーを導入したからだ。


「宗一君はAI教師を恨んでいます。そして、私もAIに振り回されている社会に不満を持っている。時田さんはアンノーンの活動に必要な優秀のプログラマーを探してました」

「それが松原宗一だったわけか」

「はい。彼を仲間にするにはAIに対して同じ思いを持つ人が必要だった。それが私だったわけです」


 料理を平らげた桜庭はナプキンで口元を拭く。


「私は今でもこの社会で生きる理由がわかりません。今、ここにいる理由は時田さんの目的を果たすため」


 時田の目的はいずれ聞かされると今は話さない桜庭。時刻は夕方を回り、店を出た二人は倉庫へ向かう。


 目隠しに結束バンドで手首を固定されて身動きが取れない状態の馬場の姿があった。彼は落ち着いて椅子に座っている。その隣にはもう一人、白髪の目立つ男性が同じように拘束されている。


「誰だ。この人は」

「元政治家の大道寺光彦」


 初めて宗一が声を出した。大道寺と聞いて思い浮かべるのはAI教師。宗一は大道寺を恨んでいるというわけだが、AI教師を推進した政治家は他にもいる。


「どうするつもりだ」

「夏目さん! まずはこっちです」


 時田は陽介の話を遮って馬場の方に視線を向けさせる。TMを起動させるには馬場が知るセキュリティコードが必要である。


「夏目……第二室の刑事か?」


 馬場の言葉に返さない陽介。時田が話を進める。


「馬場さん。セキュリティコードを教えて下さい」

「無理だ」

「困りますよ。さすがの宗一君でもTMのデータを改竄することは不可能でして」


 要求に拒否する馬場に耳打ちで何かを告げた時田。馬場はあっさりとセキュリティコードを教えた。ありがとうございますと感謝した時田はすぐにTMに乗り込み、セキュリティコードを打ち込む。宗一、桜庭も時田の後を追い、TMに乗り込む。


「どこへ行くつもりだ」

「もちろん、過去の命を救いに。またすぐに戻ってきます」


 時田たち三人はTMで過去に向かった。その場に残る陽介と井山たち。馬場と大道寺をすぐに解放しようとする陽介に銃を向ける井山。


「勝手なことをするな」

「井山さん。アンノーンのやり方が正しいと思っているんですか」

「これもすべて赤い目の連中を倒すためだ」


 陽介が慕う上司はもうそこにいなかった。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 陽介のデスクをずっと、見つめている雪菜。いつか、このようなことが起きると予感はしていた。いつかの日に言われた馬場の言葉を思い出す。


「ダメでした、私」


 陽介は時空警察の向こう側に行ってしまった。

 第二室に突入してくる第一室の刑事たち。設置した監視カメラの回収に来た。


「やっと解放される」

「不服だがな」


 不機嫌な顔を見せる第一室の刑事。第二室の監視を止めるように指示したのは室長である黒須だった。彼が署に戻ってきて、日本警察と時空警察の合同捜査本部を立ち上げると発表した。


「交わることがないと思っていた二つの組織が結託するというわけですか」

「黒須室長曰く、馬場室長を拉致した連中はTM003を利用して時空を越えているとのこと。その連中が元政治家の大道寺光彦も同様に拉致した」


 一般犯罪と時空犯罪の両方を犯している危険な組織とみて、黒須は日本警察に応援要請を申し出た。


「では、私も合同捜査本部に」


 第一室の刑事と一緒に合同捜査本部へ向かう雪菜。


 時空警察第一室室長馬場隆、大道寺光彦拉致事件合同捜査本部。


 二つの警察組織が一つの部屋に集まることを誰が想像していただろうか。緊迫した空気が漂う中、入口後ろの扉から場違いな男性がやって来る。


「失礼します、注文の品をお持ちしました」


 彼は段ボールが積まれた荷台を押して部屋に入室する。近くにいた刑事が止める。


「あんたは誰だ」

「いつもうちの店で果物を買って下さる黒須さんからの注文を承って参りました」


 黒須がいつも利用する八百屋の店主で、荷台に積まれている段ボールには種類豊富な果物が入っている。最近入荷した旬のスイカを刑事たちに見せる。


「スイカのうんちくなんてどうでもいい」

「すみません。これ、どこに置いたらいいですか」


 刑事の指示通り、入口近くに段ボールを積んで退室する男性。雪菜は美味しそうだなと綺麗な縞模様を描くスイカを撫でる。合同捜査本部の部屋に入って来る宇海。


「おい小娘。こんなところで何してるんや」

「見てくださいよ。この綺麗なスイカ」

「スイカ?」


 段ボールの中から取り出したスイカを宇海に見せる雪菜。彼は気にせず、雪菜の前を通り過ぎた。入口前の扉から高身長の男性が部屋に入って来る。彼こそが今回の合同捜査本部を立ち上げ、時空警察第二室室長の黒須である。元日本警察の刑事、その姿を誰も見たことがないと伝説上の生き物のように語り継がれていた故に、誰もまだ信じ切っていない。


「私の果物が届いているはずなのだが」


 後ろから雪菜が「ここです」と手を挙げ、前に持ってこようとするが黒須が止める。自分の注文した果物が届いていたことを確認すると彼の口から自分の正体を告げる。時空警察官たちは彼が黒須だと知ると一斉に敬礼をする。


「忙しい中、日本警察の皆さんもありがとうございます」


 丁寧に頭を下げる黒須に捜査一課長が前に出てくる。


「今回の事件は時空警察に所属する夏目陽介が起こしたんでしょう。それに私たちを巻き込むというわけですか?」

「確かに事の発端は彼かもしれません。しかし、犯行グループのほとんどが元日本警察の警官たちです。時空警察では対処しきれない。それに一般犯罪も絡んでいます」


 時空警察と日本警察の関係は未だ良好になる兆しが見えない。

 黒須は事件の概要をプロジェクターを使って説明する。


 二日前、大道寺光彦の自宅金庫にあった百万円が盗まれる。防犯カメラに映っていた時田蔵助、松原宗一、井山勇。彼らはアンノーンという集団で動いている。

 昨日、夏目陽介がTM003を彼らに渡したとされる。その後、アンノーンは馬場隆と大道寺光彦を拉致し、現在に至る。


「彼ら、アンノーンの敵対組織にレッドアイズという組織がいます」


 スクリーンに映し出される赤い目の特徴を持つレッドアイズの構成員たち。不祥事事件を起こした元日本警察官が揃って口にした連中である。常識的に考えてあり得ない現象に未だ捜査一課長は信じていない。


「アンノーンの目的は過去に亡くなった命を救うこと。対してレッドアイズはその歴史改変から守ること。両者の抗争が激しくなれば、一般市民に危険が及びます。被害が大きくなる前に、日本警察と時空警察が彼らを確保します」


 と言ったものの、レッドアイズの連中を逮捕できる証拠は何一つなかった。アンノーンは馬場隆、大道寺光彦の誘拐で逮捕できる。

 パソコンのキーボードをカタカタと打つ黒須。スクリーンに映し出された二重らせん構造がゆっくりと動いている。


『初めまして皆さん。ショーと申します』

 犯行声明のようにボイスチェンジャーで変えられた機械的で不気味な音声が部屋中に響き渡る。声の主は東京時空警察長の右腕として、東京の時空犯罪を解決に導いているプログラマー・ショーだ。捜査一課長が黒須に説明を求める中、ショーは話を続ける。


『今回は黒須室長からの依頼で私も捜査に加わることになりました』


 いくつもの事件を解決してきたショーが捜査に加わると聞いて喜ぶ刑事たちだったが、ショーは「ただし」と付け加える。


『私は手段を選びません。迅速な事件解決に努めます』


 ショーはチェイサーが見つけられなかったアンノーンのアジトをいくつもの防犯カメラの映像から特定した。


『最後に言っておきます。防犯カメラの映像が書き換えられているので現時点、捜査AIのチェイサーは役立たずでしょう』

 雪菜はショーから送られてきた画像ファイルを思い出す。ショーとの通信が切れ、スクリーンに映し出されたアンノーンのアジトは大阪南港近くにある倉庫。


「時空警察と日本警察の混合少数班で動いてもらいます」


 不満を漏らす日本警察の刑事たち。日々凶悪犯を相手にしている自分たちと、ほとんど巡回しかしていない気楽な時空警察官と一緒にしないで欲しいと思っている。

 第二室の雪菜も第一室の刑事に加わり、班の仲間入りとなる。日本警察からは顔馴染みの宇海とその部下たち。それぞれが武装し、雪菜も拳銃を腰に忍ばせる。銃の発砲は最終手段である。第一は彼らの身柄を確保すること。国民の安全と歴史の両方を守る。黒須の合図で警官たちが出動する。


「私、TM002以外の車両は運転しないので」

「はあ? 別に俺が運転するわ」


 隣を歩く宇海に告げる雪菜。他の警官たちもそれぞれの車両に乗り、アンノーンのアジトへ向かう。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 時田たちが戻って来る。話は大道寺光彦のことになる。宗一の願いで大道寺を誘拐したのはやはり、AI教師が関係していた。


「俺が望むのはただ一つ。あんたがAI教師の導入は失敗だったと認めることだ」


 記憶を遡ると、宗一の母親が飛び降りた事件で、彼がAI教師の特待クラスに選ばれず、グレたという情報がネットで出回った。一部の者は宗一が母親を殺害したのではないかと書き込んでいた。この件に関して、AI教師について議論がなされた。推進した政治家たちは深く考える必要があると公言する中、大道寺は結果的に成功したと導入の拡大をすると発言した。今は政界から下り、彼にはなんの権限もない。

 宗一が求めていたのは大道寺の口から謝罪だったが、この状況でも大道寺は失敗していないと発言する。


「特待クラスとは成績優秀者の集まりではない。成績優秀者を集めるだけならAIを使わなくても人間が行える」


 大道寺は続ける。


「AI教師は、今後も進化し続けるAI社会の中で埋もれず、生き抜く為の人材を見出すものであり、社会にとって都合の良い人材を学生時代から培うシステムである」


 過去にAIの導入で国民によるデモが起きたこともあったが、それは彼らが訪れるAI社会に恐れていたからだ。


「AI教師は人間性を含め総合的に判断し、特待クラスの選出を行った。犯罪を犯すような人物は弾かれて当然ではないか? だから私は結果的に成功したと発言した」


 宗一の怒りが増し、隠し持っていた銃を大道寺に向ける。


「銃を下ろせ!」


 陽介は銃を構える。宗一は「黙れ」と銃を下ろさない。このままだと本当に撃ってしまう。それなのに大道寺はまだ彼の癪に触るような口を叩く。彼の言動を不思議に思う陽介。

 大道寺の椅子を強く蹴る宗一。銃はまだ大道寺に向けられている。


「AIに人間のなにがわかる! わかってたまるものか! どいつもこいつも振り回されやがって。人間じゃない機械が、人間性を判断できるわけがない」


 宗一はわかっている。その中に自分自身も含まれている。自分もAIに振り回された一人だ。悔しさ、憎しみ、自分が選ばれなかった悲しみの思いが重なる。

 突然の銃声にその場にいた全員が銃を構える。いつの間にか宗一の頭に銃口が突きつけられていた。その主は陽介が追っていた例の赤い目の男である。


「大道寺光彦はここで死ぬべき人間ではない。よって、ここでお前を殺す」


 彼が発砲する前に井山たちが一斉に撃つも、弾は当たらない。その弾は軌道を変え、馬場隆の胸に向かった。宗一は赤い目の男に殺された。逃げる男を追う陽介たち。そこに警察車両のサイレン音が聞こえてくる。


「止まれ!」


 警官の言葉を無視して、アンノーンたちはすぐにその場から退散する。陽介は赤い目の男を追う。警察車両が続々と港湾に集まり、車内から出てくる刑事たちも赤い目の確保に当たる。赤い目の男が逃げる先に雪菜が警棒を持って飛び込んでくる。彼の手から銃を奪い、刑事たちがいる方へ思いっきり投げた。


「銃が効かないなら、肉弾戦しかないよね」


 体術に自信のある雪菜は恐れずに赤い目の男に立ち向かうがその瞬間、謎の力によって体が吹き飛ぶ。雪菜の背中が強く地面に打たれた。


「痛い! 骨折した」

「大丈夫だろ」


 陽介が男の確保に向かう。彼の赤い目が光った瞬間、陽介の右肩に激痛が走る。体の中から肩関節を両手で捻じ曲げられた感覚を得る。


「くそぉ……肩、外れたじゃねぇか」

「外れてないでしょ!」


 雪菜が再度、赤い目の男の確保に向かう。彼は諦めたのか謎の力は使わない。おとなしく雪菜に確保された。


「歴史は守られた。次の任務へ移る」


 赤い目の男は雪菜にそう告げ、押さえられていた体を振り払って海に飛び込む。自分の体に仕込んであった爆弾で自爆した。


『大道寺光彦を無事保護した。それと』


 全警官たちに告げられる無線。雪菜も耳につけていた。信じたくない事実を突きつけられる。


 時空警察第一室長、馬場隆が亡くなった。


 初めて組んだ相棒の死を知る雪菜。駆けつけるのが遅かった。今は目の前の事件を解決するべく、冷静を装う。


「夏目さん。話を聞かせてもらいますよ」


 陽介はおとなしく応じるつもりでいた。しかし、アンノーンたちは陽介を見捨てない。井山たちが現役の刑事たちに銃を向ける。雪菜の前に時田が姿を現す。


「今、夏目さんを手放すわけにはいかない。僕たちの計画に必要な存在なんだ」

「あなた達の目的は何?」

「知ってるでしょ。タイムマシンを利用して過去の命を救うこと。だけど、その前にしなくちゃいけないことがある」


 アンノーンの邪魔をするレッドアイズを倒すことだった。レッドアイズを倒すには彼らを恨んでいる元日本警察の警官たちが必要だった。


「でも、もう時間がない。このまま最後の目的を果たす」


 陽介はアンノーンと共に去っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ