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琥珀糖の月

作者: 藤村時雨

 僕は吹き飛んだ。


 月夜の照らす畦道にて。

 頭上に光が瞬いた途端、大爆発。どうやら隕石が落下したみたいだ。

 宙に浮かぶ身体。乗っていた自転車は大破。

 割れたスマホの画面が痛ましい。

 ヘッドホンも壊れた。

 地形を上書きする衝撃の凄まじさ。数多の星が明るい真冬なんかどうでもいい。


 僕は生きていた。


 殺風景な景色に訪れる轟音。

 辺りを見渡せば光彩陸離のオンパレードが始まる。

 明後日の方角へ吹き飛んだ街灯。補充の行き届いてない自動販売機。

 別れを告げる灰色のマフラー。

 必死に手を伸ばす。

 掴めない。


「嘘でしょ……」


 弾む大礫を間一髪避ける。

 無理をして僕は思わず尻餅を付いてしまう。

 その拍子にリュックの中身が散乱。最悪。お菓子が吹き飛ばされたじゃないか。

 不運にも程がある。飛んでいるカラスに笑われた。


 僕は疲れた。


 考えても仕方がない。休憩。大の字で寝ることにした。

 眠れない! どういう状況!? この辺でヤブ医者を見かけませんでしたか!?

 え? ガリガリ君原価一本300円!? まさかの大恐慌の再来だ!!

 というのは嘘。


 月が迷子になっていた。


 全ての真実はお天道様と僕が見ていた。

 星々が瞬きを繰り返すだけの寂しくて知らない世界。光が欠けて僕は絶句する。不気味に監視された星の瞳を追うだけの、地上の目撃者。


 混沌のトリックスターが呼んでいる。138億年先の時空そのものに。

 けれど、明日になれは意識は別のものに惹かれてしまう。

 そうならないように。


 代わりとして。


 夜を照らす少女は僕の方に駆け寄る。

 白くて美しい髪を触れて、視線を重ねる二人に交わす琥珀糖の宝石。彼女は夜の景色が好きだと言うけれど、そんな彼女の姿に僕は素敵だと思えた。

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