森田正馬「新版 神経質の本態と療法 森田療法を理解する必読の原典」
森田正馬の本はこれで二冊目になります。前回読んだのは座談会形式で、参加者が各々その体験を話すという形だったのでまだ読みやすかったのですが、今回はどちらかというと理論についての本で、言葉での説明が多く読むのに結構苦労しました。
結構基礎的なことについて隅々まで語られている感じで、読んでいてもなかなか頭の中で内容がまとまりませんでした。
自分が読んで大まかに掴んだ感じでは、神経質というのは心が生み出す病気で、実体がないということです。くすぐろうとする手を見ると、相手にくすぐられる前に笑ってしまうような心理現象と一緒で、自分が病気であるという考えがその症状を作り出してしまっている状態です。なので自分が頭の中で作り出している痛みや恐怖を取り除けば、病気も治るというのが理屈のようです。
その神経質についてもいろいろ種類があるようで、普通神経質、発作性神経症、強迫観念症の三つのほかに、人格が通常とは違う「変質者」という分類があり、たとえば意志が弱い人たちに依存症が起こったりするのはその人が元々持っている「意志薄弱性」という気質のせいだといいます。
神経質というのも、病気を過敏に恐怖するヒポコンドリー性基調という気質が基盤になっていて、そこに精神交互作用(ある部分に意識を向けるとそこが拡大され、その拡大された部分にさらに意識が向いてしまい、どんどん意識が強化されていくというもの)が加わって、だんだん症状がひどくなっていくようです。
治療法については、入院をしてまず絶対臥辱の安静期間をつくり、徐々に軽い作業療法や重い作業療法、実生活の訓練などと、当人の経過に合わせて段階を踏んでいくというものでした。ただ自分はこの辺がまだよく分からなくて、「あるがままに病気や恐怖に直面する」という森田療法の言葉がまだうまく掴めません。恐怖は恐怖のままにそれに逆らわない、というのは何となく言葉で受け止めるだけで、感覚的にどうすればいいのかわからなくて、この辺はもっと本を読んで勉強したいところです。
あと昔の本らしく催眠術についても触れられていて、神経質によって起こる病気や症状などは催眠術によって治すことができる場合があると書かれていました。ただ万能ではないようで根本的な治療にはなかなかならないらしく、精神病や体の器質などから起こってくるものについては効くことが少なく、神経質でも赤面恐怖の患者には効かないなど、局所的な効果しか望めないということが書いてありました。ただこういうものもまったく迷信的なものとして切り捨てていないところが、やはり臨床家という感じがして、個人的に好感を持てました。
全体的に言葉での説明が多く、難しい本でした。患者の体験などが書かれていると読みやすくていいのですが、今回は基礎の理論的な話だったのでなかなか読んでいてもすんなり入ってこないことが多かったです。ですが森田正馬の本はとても勉強になるので、他の本も読んでいこうと思います。