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阿刀田高「待っている男」
阿刀田高さんの本は二冊目ですが、今回の短編集はとても面白かったです。どの作品もオチの付け方が上手いです。解説の方も書いていましたが、短いなかに無駄なく文章が散りばめられ、最後の最後でそれらが見事に生きてくる。アイデアも構成力も流石だなと思いました。
男女の不倫関係を話の軸にした作品が多く、どこか心落ち着かない登場人物たちの心理などをユーモアを交えて書いているのも印象的でした。不倫相手と付き合いながらも心の中でいろいろなものを天秤にかけているところにブラックユーモアを感じます。
また比喩表現も巧みで、電車の中で偶然会った昔の不倫相手を見て、『カルピスの包み紙のようなワンピースを着ている。』という主人公の独白も、どこか滑稽味があって面白かったです。
やはりいろいろ勉強になる作家さんだと読んでいて思いました。