第4話 神界の案内やってみた②
第4話 神界の案内やってみた②
王子はパンフレットを片手に案内を進めていく。トコトコとパンフレットを見ながら歩いていくと植物園みたいな所へ到着した。
食虫植物が主に置いてあった。
「あれ?ここどこだ」
王子はとてつもなく方向音痴なのだ。王族なので外には滅多に出れないので仕方ないかと思われるがそれでも方向音痴過ぎるのだ。
『とりあえず案内しなきゃ』
「まずここは……」
パンフレットをチラチラ見ながら説明している。
「天界植物園だそうです」
断言出来なかった。もし間違っていたら案内役として失格という自覚を持ちやっているのだ。
「じゃあこっち」
手でこいこいとする。入り口の辺りに着いた瞬間天から光が差し掛かってきた。神の降臨だ。
「どうしたのかな?人の子よ」
植物を纏ってなんという美女だ。そこら辺の人は人目見るだけで恋に落ちそうだ。だがそんなのは王子には効かない。
「私は植物神ウリネです。今回はどうしたのかな?」
「案内してるの」
「あらそうなのね」
植物神は王子の頭を優しく撫でて偉いわね、と言いながら。
「ここに案内しに来たの」
王子は迷ってここに来たことを隠し、ここに来たかったという雰囲気で言う。
「許可は貰っているのかな?」
「貰ってる。神の父親と自称する人に許可貰った」
「天父神様から許可貰っているのね!えらいわね!」
頭を撫でる。植物神は子供が好きそうだ。植物神はある質問をした。
「天父神様は今どちらにいるのかな?」
王子はすぐに目を逸らした。自覚しているのだろうか。
「腕立て伏せしに行くってどっか行っちゃった」
なんという嘘を。頭に血が上って倒れていることを必死に隠した。
「あら、そうなのね!」
この植物神もだ。簡単な嘘を見抜けぬとは。明らかに動揺していたのにも関わらず。
「では案内頑張ってくださいね!」
「うん。わかった。じゃあ36番付いてきて」
36番の言葉に一瞬耳を疑ったが、気のせいかと思い込みスルーする。
ガラガラと扉を開ける。扉の向こう側には沢山の植物が綺麗に並んでいる。さすが神界の植物園だ。どの国にも劣らない植物の聖地だ。
王子も少し見とれてしまったがすぐに意識を戻す。
「36番この植物は……」
説明している途中でがぶりと食虫植物に上半身を飲み込まれてしまった。
「なんというの?ねぇぇきこえてますかぁぁ?」
食虫植物の中で叫んでいるようだ。声がこもっている。
周りの人は
『あぁ行きたくねぇぇ……』
と思っている。
「なんかこの食虫植物から変な液体出てきている」
植物神は急いで王子を助けようとした。
「その液体には触れちゃダメぇぇぇぇ」
「もう触っちゃったよ」
植物神は『あぁもう終わった……』と思いつつ膝を着いて愕然としている。
「でもこの植物これ以上伸びるのかな?」
そう言うと食虫植物の口元に触れ、重力と同じ方向に引っ張り出した。
「おぉぉー、これ部屋に欲しい!」
王子は部屋に泥棒を来れないようにこれを置きたいらしい。
力を込めさらに引っ張る。植物神が立ち上がり、王子に言った。
「引っ張って何をするつもりなの!?」
「ん?これ引っ張らないと取れなさそうだったから引っ張って部屋に置くの」
「なら植物神である私には移動させるぐらい出来ますわよぉぉぉ!そんなに植物をいじめないでぇぇえええ」
植物神が必死に声を上げた。普段は声を上げないのに。
王子は引っ張るのをやめた。そして少しずつ植物神の所へ移動する。
「じゃあやって欲しい。そして部屋まで持ってって」
「あ、はい……」
植物神、人間の王子に頭を下げました。普通なら人間が神に頭を下げるのに……
植物神は魔術をかけ、植物神を浮遊させる。
「ではお部屋に移動させますので部屋まで案内してください」
「うん。いいよ」
2人は共に歩き出した。
『あれ?儂は放置か……』36番は口から魂が抜けていった。
2人は何事もなく部屋まで着いた。
「ではどの辺に置きましょう」
「入り口の隣に置いて」
「はい」
そこに置いたら入ってきた人全員にかぶりつくだろう。もちろん自分自身にもだ。
「あの、ここに置いたら王子にもかぶりついてしまいますけど……」
「そこは植物神なんだから植物にかぶりつかないように命令して」
「あ、はい……」
植物神は押しに弱かった。
植物神は食虫植物にこの人物は食べちゃダメ、と言い聞かせるように言った。
「とりあえず言っておきましたよ」
「うん、ありがとう」
王子は真顔だった。ほんとに感謝しているのか分からない。
「じゃあ僕はもう寝る」
「え?もうですか!?」
「だって今の時間は人間界で言うと夜だよ?」
「それはそうですね!おやすみなさい」
「うん、おやすみ」
植物神は急いで部屋を出ていった。
所で天父神はまだ気絶しているのだろうか。王子は完全に天父神のことを忘れているようだ。