延命、失敗、大ピンチ
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
本日二度目のどうもです。
戦いも佳境に差し掛かって……いるのかな? まぁ、そんな感じです。
では、どうぞお楽しみくださいませ。
ローザネーラの攻撃は避けることが出来ている。
俺の攻撃は、当たったところでダメージにならない。
冷静さを欠いたローザネーラが我に返るまでは、この千日手を続けることが出来るだろう。
さて、その前に俺が勝利するためには、一体どうすればいいだろうか。
ローザネーラの猛攻をしのぎながら、思考をフル回転させる。
まず、俺の手札だ。
大鎌での攻撃。アーツの【ザッパー】。
《闇術》レベル1で使うことのできる魔法、【闇矢】。
しかし、これはまだ一度も使っていないため、効果の把握が済んでいない。発動方法の確認だけはしてあるのだが……。
あとは、アイテムか。確か、『ポーション《初心》』という、回復量が低い代わりに無くならないポーションがストレージに入ってたっけ? これもレベル15までしか使えないとか。
それと……なんかあったような、なかったような……? 駄目だ、思い出せない……。
ええと、つまり?
手札……これだけっ!
「さて……」
ローザネーラに聞こえないように、小さく声を漏らす。
そこには、隠し切れない苦々しさと、『どうすんのこれ』という半ば諦めのような感情が含まれている。
無理ゲー・オブ・無理ゲー。
ろくすっぽ操作方法知らずに死にゲーをノーダメクリアしろと言われている気分だ。
戦闘での勝利は、俺の手札では逆立ちしたって、その状態から後方三回転捻りをしたって不可能だろう。
なら、それ以外の勝利を見つけなければならない。
そう、例えば――逃走。
『逃げるが勝ち』という言葉があるように、逃走というのは時には勝利になり得る。
自分では絶対に敵わない相手と相対したとしよう。
勝てないことは分かっている。ならば、どうすることが最善なのか?
それは、情報を持って生き延びること。なりふり構わず命を繋ぎ、次の糧にすることこそが弱者の勝利となる。
うん、まぁ、ローザネーラの場合、それが不可能というか。最初にその選択肢を潰されちゃってるんだけどね?
《ワタシだけの世界》……だったっけ? そんな感じのスキルで、謎空間に飛ばされちゃってる。システム的な隔離なので、走って逃げたところで残念賞だ。
戦闘に勝利することも不可能。逃走も無理ときた。
……え? あの、本当にどうすればいいんですか?
これ以外ってなると……俺が潔く諦める? うん、ダメだね。普通に負けてるね、それ。
となると……相手に諦めてもらう、とか?
ちらり、と今は距離を取っているローザネーラを見やる。
「フーッ! フーッ!」
……そっと、目を逸らし――たくなったけど、見てないと速攻で死んじゃうので我慢する。
わぁ、怖い。美人は怒ると怖いって言うけど、そういうレベルじゃない。
いやぁ、よかったよかった。俺が重ねに重ねた挑発は、ちゃんと効果を発揮しているようだ。
……想像、以上に。
やっべー。マジでやっべー。見た、あの顔? もう般若とかそういう類の顔してたよ?
殺意以外の感情が一切見えなかった。何が何でも貴様を殺すという真っすぐな感情がうかがえた。やめてほしい。
というか、さっきから小声で何か言ってないか? ぶつぶつと聞こえるんだが……。
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス……」
うーん! 耳も塞ぎたくなってきたぞぉー! 聴覚にしたって警戒に使ってるから、そんなことできないけどさぁ!!
諦めてもらう? あはは、無理ですねぇ!!
半ばヤケクソ気味に思いつつ、俺は思考を切り替える。戦闘はまだ続いており、気を抜くことはできない。
しかし、あの怒りっぷり。臨界点に達して逆に冷静になられても困るし、そろそろ挑発は止めた方がいいかな? と、脳裏で冷静な俺が顔を引き攣らせながら言っていた。
けれど、グリースたっぷりで爆速回転している俺の口は中々止まってくれなかった。
「お顔が怖いでちゅよぉ~? さっきまでの余裕は何処に行ったのかなぁ? あはっ!」
「……ッ! ……ッ!!」
おっ、今の煽りはクリティカルヒットしたな? そんな手応えが分かるようになってしまったところが、非常にもの悲しい。
すでに言葉もなく襲い掛かってくるローザネーラ。さめざめと涙を流す内心をいったん脇に退かし、集中を高める。
大鎌を両手に、凄まじい形相で接近してくるローザネーラを、大鎌を真正面に構えて待ち構える。
距離を詰めてくる速度は恐ろしいが、彼女は攻撃を放つときに必ず一度停止する。
接近、停止、攻撃。ローザネーラはその三つがバラバラで、連動していない。
そこに必ず、隙が生まれる。そして俺は、そこを付いて回避や受け流しの準備をすることが出来るのだ。
「死ネェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」
「やーだよ」
ローザネーラが繰り出したのは、上段からの振り下ろし。俺の脳天を切っ先で勝ち割ってやろうという意志がバリバリ伝わってくる。
間合いに入られ、大鎌を両手で思いっきり振り上げるローザネーラを見つつ、俺は冷静に体重を後ろに掛けた。
俺が地面を蹴るのと、ローザネーラが鎌を振り下ろすのは、ほぼ同時だった。
僅かに後退した俺の鼻先を、深紅が過ぎ去っていく。前髪が少し持っていかれ、宙を舞った。
風切り音が遅れて聞こえてくるほどの攻撃速度は、相変わらず肝が冷える……なーんてことを考えていたのがいけなかったのだろうか?
「あっ……!?」
やべっ……!!! 足が……!?
バックステップで攻撃を避けた俺は、そのままさらに距離を取ろうとして――ずるり。
崩れる体勢。揺れる視界は明後日の方角を向く。
咄嗟にバランスを取り、転倒は免れたが――――。
「っ! 貰ったァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
事態は一気に、絶体絶命に陥った。
俺にとっては致命的な、彼女にとっては絶好の、隙。
それに食らい付いてきたローザネーラは、この戦いの中で最も洗練された動きで、大鎌を振り上げる。
下から上へ、首を狙った斬撃。
迫りくる深紅。
それに対して俺が出来たことは、咄嗟に大鎌を翳すことと、武器を手放さないよう、柄を力いっぱい握り締める事。
ただ、それだけ。
背筋に冷たいモノが流れる。
視界いっぱいに映る、絶対的な絶望。
これは――死――――ヤベェ……――――ッ!!
ほぼ無抵抗な俺に、致命の一撃が放たれた。
――――カァアアアアアンッ!!!
「―――――――――のぉわぁ!!??」
視界が、開けた。
不気味な色をした空と、深紅の月が、瞳いっぱいに飛び込んでくる。
全身に叩きつけられる風と、下腹部に感じる猛烈な違和感。
ちらりと見えた地面は、なんでだろう。酷く遠く見えた。
えっとぉ……これはぁ……もしや?
「と、と、飛んでるぅううううううううううう!!!???」
口から、素っ頓狂な悲鳴が漏れ出る。
なんで? え? マジでなんで?? あれぇ!!?
だって、え? 攻撃、ローザネーラの……えぇ!?
今絶対死んだって……あ、お、ああん?
もー、完全にパニック状態。グッバイ、冷静な思考。ハロー、支離滅裂。
わけわかんなくて目を白黒させ、両手両足をジタバタと意味もなく動かす。
ゲ、ゲームとは言え、この高さから落ちるとか勘弁してほしいのだが!?
紐なしバンジー? それはただの投身自殺なんだよ!
ローザネーラは……? ……ちらっと見えたけど、アレは落ちてきたところをやる気満々ですね、うん。叩きつけられる殺気で少しだけ落ち着いたよ。
落ち着いたところでって感じはするけど――って、ん?
あ、あれ? なんか出てきた……?
眼前に唐突に表れたのは、何かのシステムウィンドウ。
これって……配信用のインターフェース?
配信画面と思われる空中でジタバタする俺が映った映像と、その隣に配信の情ほ……はぇ???
『ヴェンデッタチャンネル』
【あくまさもなーヴぇんでった はじめてのはいしん】
13047人が視聴中 3時間前に配信開始
・あぁああああああああ!!?
・死んだ!? これはさすがに死んだだろ!?
・頑張れ! 頑張れーー!!
・ひぇ……玉ひゅんしたわ……
・こっからどうすんだよ……
・ジタバタ可愛い
・いや、頑張ったよ。格上初見ボス相手に初心者がここまで粘るとか凄いわ
「は……ふぇ……?」
え? え?
いち、じゅう、ひゃく、せん……い、いちまんにん?
……ほわい?
・ん? あれ?
・もしかして気付いてる?
・おーい! ヴェンデッタちゃーん!
・見ってるー?
・めっちゃ驚いてて草
・驚き顔も可愛い
「な、な……なんだこれぇええええええええええええええええええええええええええ!!!!????」
異色の空に、俺の絶叫が響き渡った。
読んでいただけて感謝の極みでございます。
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また明日の更新でお会いしましょう。ではでは。