VSブラウヴォルフ・終幕
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
どうも、作者です。
感想でいっぱい戦闘シーンについてありがとうございました。めっちゃ助かりました。
今回でVSブラウ君は終了です。分量もまぁ少し増えてます。
ではでは、どうぞ。
――――ガキィン!!
火花を散らす勢いで、大鎌と槍が交錯する。
甲高い金属音が響き渡るのは、これで何度目か。
すでに戦っている両人も、見ている者も分からぬほどに続く武具の調べ。
「くたばりやがれェ!!!」
悪鬼を思わせる表情で槍を振るうブラウヴォルフ。
射殺すような視線と、豪雨が如き連撃を目の前の少女に叩きこんでいく。
一撃一撃に込められる殺意。命を寄越せと唸る槍撃。
「ッ! 激しいね、ブラウ君はっ!」
しかしそれは、ヴェンデッタには届かない。
深紅の大鎌を変幻自在に振るい、降りしきる槍を捌いてゆく。
曲刃を絡め、足運びで惑わし、柄を使って弾き、時には魔法で牽制。
そして、僅かな隙を見つけては、致命の一撃を叩き込むことを虎視眈々と狙い続ける。
「それっ!」
「ハッ、そんなへなちょこが当たると思ってんのかぁ!?」
突きと突きの切れ目を狙って大鎌を振るうが、ブラウヴォルフはソレをひょいと身体をのけぞらせるだけで避けてしまう。
ニヤリ、と。ブラウヴォルフは余裕と嘲りを込めて唇の端を吊り上げた。
「守るのは得意みてぇだが……亀みたいに籠ってるだけじゃ、俺には勝てねぇんだよぉ!!」
全力でヴェンデッタを見下し、槍を握る腕に力を籠める。
「串刺しだァ! 【キラースティング】ゥ!!」
穂先が煌めき、アーツが発動。
今までの攻撃よりも数段速く、鋭い刺突がヴェンデッタに襲い掛かる。
「くぅっ!?」
ヴェンデッタは咄嗟に身体を捻ることで刺突を回避しようとする。
何とか直撃からは逃れるも、肩を浅く裂かれてしまう。
赤い燐光が飛び散り、HPが削られた。
咄嗟に地面を蹴ってブラウヴォルフの間合いから逃れたヴェンデッタは、三分の一ほどが黒くなった己のHPバーを見て、眉をひそめる。
(かすり傷レベルでこのダメージ……直撃を貰えば、一発お陀仏か)
声に出さず独り言ちると、ヴェンデッタは警戒を強めた視線でブラウヴォルフを見据えた。
「オイオイ、このまま嬲り殺しか? もう少し楽しませてくれよ、なぁ?」
ニヤニヤと嘲笑を浮かべるブラウヴォルフ。その表情から読み取れる――勝利の確信。
彼はすでに勝ったと思っている。勝てそうでも、勝てるでもなく、『勝った』と。
戦いの最中にありながら、勝利の美酒に酔い始めている。
視線、表情、声音。その全てでヴェンデッタに『お前の負けだ』と告げているのだ。
(ムカつくなぁ)
ヴェンデッタは内心でそう吐き捨てる。
レベルもステータスも負けている。経験だってこちらが下だ。
――――ああ、そう。で、それが?
ヴェンデッタは額に汗を浮かべながらも、その口元に笑みを刻む。
「――――上等だ」
深紅の大鎌を構えなおし、視線に込める闘志が激しく揺れる。
ギラギラと煌めく瞳に込めて、『負けてやるものかよ』とブラウヴォルフに叩きつけた。
一度受けた勝負。勝てそうにないから諦める? そんな情けないことはしたくない。
(……それに)
視線は向けず、意識だけを背後に。
この勝負の行く末を見守っているだろう少女たちに、無様な姿はさらせない。
ブラウヴォルフを見つめる瞳を細め、口元の笑みに艶を乗せる。
同時に、強く地面を蹴って駆け出した。
「お望み通り……遊んであげるよっ!」
「やれるもんならなァ!!」
そして戦いは佳境を迎える。
ヴェンデッタは距離を詰めて、横薙ぎを放とうとする。
その一撃をスウェーバックで逃れようとするブラウヴォルフを見て、ヴェンデッタは咄嗟に叫んだ。
「《自在血刃》!」
「何――ガぁ!?」
ブラウヴォルフの悲鳴。その胸元に、真っ赤な一文字が刻まれる。
刃が伸びる、という初見殺しは見事にブラウヴォルフの意表を突き、その身を竦ませた。
そして――。
「まだ……まだぁ!!」
一歩踏み込み、横薙ぎの勢いを極力殺さぬように、斬り返しの一撃を叩き込んだ。
増える斬線。ブラウヴォルフのHPが明確に削れた。
「テメェ……!!」
「無駄口叩いてる暇はないよっ! こっからは――俺の手番だっ!」
溌剌と叫び、大上段から斬撃を一閃。横向きに構えられた槍と深紅の大鎌が激突。
火花が散り、二人の視線が交錯した。
そこから始まるは、ヴェンデッタの猛攻。怒涛の連撃。
縦に鎌を振るった。袈裟を逆さに刃がなぞった。石突が唸りを上げた。
槍が刃を拒もうモノなら、上から斬り潰すと言わんばかりの強撃を抉り込む。
守りや回避に意識を向けていた先とは全く逆。
嵐の如き連撃にブラウヴォルフは守勢に回らざるを得ない。
「調子に乗ってんじゃねぇぞッ!!」
苦々しく顔を歪めながらそう吐き捨てるが、ヴェンデッタはただ笑みだけを返す。
それが小ばかにしているようで、煽っているようで。
びきり、と青筋がブラウヴォルフの額に浮かぶ。怒りのボルテージは天井知らずに上がっていく。
――それが、ヴェンデッタの狙いだとも気が付かず、思考を赤く染めていった。
「あはっ。顔が怖いぜ? ブラウ君」
軽口を叩き、ヘラリと緊張感のない笑みを浮かべつつも、大鎌を操る手を止める事はない。
斬って斬って斬って――意識が白むほどに刃を煌めかせる。息もつかせぬ連続攻撃。
拙い技量を気迫と勢いで誤魔化した滅茶苦茶な斬線は、スキル《連撃》の効果もあって、少しずつ、しかし確実に威力を高めていく。
強くなる衝撃と重くなる持ち手の痺れ。
そして、徐々に減っていくHPにブラウヴォルフは顔を顰めた。
「ウザってぇ……!」
「声が震えてるぜ? リラックスリラックス。カルシウム足りてないんじゃない?」
「うるせぇ!! 黙れぇ!!」
ぞっとするような怒りに塗れた声にからからと笑うヴェンデッタ。
嚇怒の叫びと共に突き出された槍撃をひょいと躱し、くるり、と手の中で大鎌を舞わす。
そして、ブラウヴォルフの意識がおろそかになっている足元目掛けて掬うように柄を振るった。
「【トリップ】」
発動するは、《ポールウェポン》のアーツ。
足を払うだけのシンプルな効果を持つソレは、単純が故に対処が難しい。
怒りで思考が鈍り、攻撃後という意識が逸れやすい状況にあれば、言うに及ばず。
結果、ブラウヴォルフは何一つ抗うことは出来ず、その身を宙に浮かべた。
ふわりと浮かぶ身体。四肢に力を入れようとどうにもならず、致命的な隙を晒すブラウヴォルフ。
その見開かれた瞳に――――勇ましく舞うスカートの裾が映り込む。
「――――ガァ!!?」
めきっ、とブラウヴォルフの顔面に突き刺さったのは、ブーツの靴底。
大鎌を振るった勢いを殺さず、くるりと身体を回転させることで遠心力を乗せた後ろ回し蹴り。
ブラウヴォルフの放つ槍撃顔負けの鋭さを見せた蹴撃は、彼の身体を容赦なく吹き飛ばす。
「ぐぁ……!?」
硬い大地と熱烈なキスをし、荒野を転がる。
鋭く走る衝撃と痛みに歪んだ顔。そこに浮かぶは、明確な焦りの感情。
(クソッ、クソッ! さっさと立たねぇと……!!)
動揺を押し殺し、何とか体勢を整えようとするブラウヴォルフ――――嗚呼、けれど。
遅かった。
「――――【雷弾】♪」
「あぐぁ!?」
歌うように軽やかな声で告げられたそれは、無情な宣告。
バチィ、と弾けた雷の銃弾が、立ち上がろうとしたブラウヴォルフを打ち据える。
強い痺れに顔を顰めながら、咄嗟に己のHPゲージを確認。
残り、二割。もう後がない。
「さっ、これでトドメだよ」
笑顔で大鎌を振りかざし、地面を蹴ったヴェンデッタに情けも容赦も在りはしない。
瞬く間に距離を詰め、ブラウヴォルフに刃を振り下ろし――――。
「ッ! 《オートポーズ》!!」
刹那、不自然な挙動で立ち上がったブラウヴォルフが、お手本のような『構え』を取った。
どんな体勢からだろうと、強制的に理想的な構えへと姿勢を変化させるスキル、《オートポーズ》。
晒した隙を極上の罠に変える奥の手を吐いたブラウヴォルフは、目を丸くして驚いているヴェンデッタへと、槍を突き出す。
「蜂の巣だァ!! 【波濤突き】ィ!!」
放たれた刺突は無数の残像を纏い、弾幕が如き密度でヴェンデッタを襲った。
「なっ……! くっ、《フラッシュアクト》……!」
スキルで回避を試みたヴェンデッタだが、全てを躱すことは叶わず、浅い傷がいくつかその身に刻まれた。
耐久が低いヴェンデッタにとってはそれでも致命的。HPゲージはブラウヴォルフと並んでしまう。
距離を取って相対する二人。
(クソッ、こんな奴にここまで追い詰められるなんて……!)
ここにきて、状況は五分。
睨み合い、武器を握りしめ、状況を伺う。
(けどなァ……有利なのは俺だ。一撃叩き込めば、それで終わる)
獰猛に笑うブラウヴォルフ。
そんな彼に、ヴェンデッタは苦笑を返した。
「顔が怖いぜ、ブラウ君?」
「ハッ、言ってろ。この茶番にもそろそろ飽きてきたからな。次で終わらせてやるよォ……!」
「ふぅん、君にそんな事が出来るの?」
「ほざけッ! 《猛進猛撃》!」
――――先に動いたのは、ブラウヴォルフ。
突進攻撃の威力と速度を引き上げるスキルを発動させ、強く地面を蹴りつけた。
ダンッ、と音が響くと同時に、彼我の距離を喰らい尽くす。
殺意に煌めく穂先がヴェンデッタの端正なかんばせを狙った。
スキルによって強化された速度は、ヴェンデッタの行動を許さない。
つまりこの一撃、必中不可避――――本当に?
「《刹那》――――《受け流し》ッ!」
ヴェンデッタの見る世界が灰に染まり、全てが遅くなった。
重鈍なる世界の中にて必殺の槍撃は凡庸な一撃に成り下がり、深紅の大鎌によってするりと流されてしまう。
二人の身体が交錯し――スキルの効果が切れたヴェンデッタの瞳に、驚いたようなブラウヴォルフの横顔が通り過ぎていく。
「なっ……にィ……!?」
「そう簡単にやられてたまるか……よッ!」
突進の勢いを流された事で体勢が崩れているブラウヴォルフに、ヴェンデッタは振り向きざまの蹴りを叩き込んだ。
背中を蹴り飛ばされたブラウヴォルフはそのまま吹き飛ばされる。
だが、今度はしっかりと受け身を取ってすぐさま起き上がった。
振り向いたブラウヴォルフの眼に映ったヴェンデッタは、手の平に魔法球を浮かべていた。
それは、可視化された重力の塊。戦闘中に何度か見た魔法。
そして――。
「【重力弾】!」
ヴェンデッタはほくそ笑みながら、魔法を唱え上げた。
放たれた魔法は、まっすぐブラウヴォルフへと襲い――かからず、その手前の地面に着弾。
――――砂埃が盛大に舞った。
視界が塞がる。
ヴェンデッタの笑みが隠れた。
ブラウヴォルフの頭が真っ白にな――。
「ッ!!! 舐めてんじゃねぇええええええええええええええええええええッ!!!」
――る、よりも早く。
ブラウヴォルフは砂埃の壁に突っ込んでいく。
「同じ手を二度も喰らうわけねぇえええええだろぉおおおおおおおおおおおおお!!?」
叫ぶブラウヴォルフの脳裏を過ぎるのは、少し前の光景。
攻撃を装った魔法によって視界を奪われ、まんまと攻撃を喰らってしまった忌々しい記憶。
その焼き増しのような展開。
何より、それで勝てると思われていることに、彼は怒髪天を突く。
(目隠しに乗じて攻撃を叩き込んでくるつもりだろ!? なら、それよりも早く串刺しにしてやるよォ!!)
まっすぐな殺意で、手元の槍に青い光を灯す。
アーツの発動を示す閃光が砂埃を青く照らした。
「【穿牙槍・獣躙】ッ!!」
最高威力のアーツが砂埃の向こう側を貫き。
声が、聞こえた。
「――――【闇障壁】」
瞬間――闇が、湧き上がる。
地面から欠泉のように吹き上がった闇は、刹那の内に分厚い一枚の壁にその姿を変えた。
驚き目を開くが――止まれない。
槍、腕、そして上半身ごと闇色の壁にぞぷり、と飲み込まれる。
「がッ……!? う、動けねぇ……!?」
暗んだ視界が晴れたときには、ブラウヴォルフは完全に闇色の壁に捕まってしまっていた。
上半身の半分ほどが闇壁より突き出ており、その状態で固定されているのか身動き一つとれない。
「くそっ、なんだコレ!? あのクソガキは何処に……!!?」
「ここだよ?」
焦りの乗った悪態に、場違いなほど明るい声が返ってくる。
慌てて視線を正面に向ければ、嫌味なほど可憐な笑みを浮かべたヴェンデッタが立っていた。
しかし、何故だろうか。
幼気な美少女が浮かべている見惚れるような笑顔なのに。
向けられているブラウヴォルフは、得体のしれない化け物と相対しているような寒気を覚える。
身体の端から覗く、後ろ手に持った大鎌の刃が嫌に目についた。
「中々、楽しかったよ。ブラウ君」
こてり、と小首を傾げる姿に、血の気が引く。
カツ、カツ、と。ヴェンデッタのブーツの靴底が鳴らす音が、やけに大きく耳に響いた。
止めろ、来るな。来ないでくれ。そう縋るように祈っても、何故か声は出ない。
恐怖から逃れるように動きもしない身体を動かそうと藻掻くけれど、闇壁の拘束は固い。どうしようもない。
彼に唯一出来たのは、全てから逃げるように目を閉じる事だけ。
やがて――カツン、と。
足音が、止まった。
「ブラウ君――――ばいばい」
――――――――ザシュッ!
斬閃、煌めきて。
ブラウヴォルフの首が、宙を舞った。
『Finish! 勝者、プレイヤー:ヴェンデッタ!!』
『《決闘》が終了しました。特殊フィールドが解除されます』
読んで下さり有難うございます。
ブックマ、感想、評価などなどめちゃめちゃ助かってます。
皆様のおかげで総合ポイントが三万を超えました。私の作品の中ではソロ神官の次に多い感じですね。やったぁ。
これからも執筆、頑張らせていただきます。
ではでは、また次回。




