草原にて蠢くもの
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
どうもです。
なんとか今日中に間に合いましたね。マジで執筆速度が落ちてる……。
まぁ、愚痴はともかく頑張っていきます。
それでは、どうぞ。
「ひゃぁあああああああ~~~~!!」
「ローザネーラぁ! 落ち着け、もう首切り君持ってないから! 大丈夫だからっ!」
「い~~やぁ~~~~~~~~!!」
「駄目だ、完全にパニックに……!」
凄い勢いで遠ざかっていく背中を、必死になって追いかけていく。
くっ、弱体化しているとはいえ、ステータス自体はローザネーラの方が高いせいで、中々追いつくことが出来ない。
ローザネーラがこのフィールドに出てくるモンスターにやられるとは思えないけど……気になるのは、さっき視界の端に映ったコメントだ。
「視聴者さんたち! さっきヤバいって言ってたのは、一体何のことなんですかっ!?」
並走して飛ぶカメラくんに向かって投げかけた声には、隠せない焦りが含まれていた。
ええい、冷静になれ。ここで俺までパニックになったら、木乃伊取りが木乃伊もいいところだぞ?
そう自分に言い聞かせ、はやる気持ちを抑えながら、俺はコメントに目を通していく。
・この先……あっ、なるほど
・ローザネーラちゃん、完全にパニック状態……
・今のヴェンデッタちゃんだと厳しくないか?
・うーん、ギリギリかなぁ?
・昨日から引き続き、不運というか……
・このままだと、ボスエリアに突入する
「ボスエリア……って、ボス!? 昨日ローザネーラと戦ったばかりなのに!?」
・ヴェンデッタちゃん、君はそういう運命の元に生まれたのだよ
・騒動に愛された少女、ヴェンデッタ
・ここのボス、普通に強敵だから気を付けてねー
・どんな戦いぶりを見せてくれるか……私、気になります!
・がんばえー
・wktk
「ひ、他人事だと思ってぇ……!」
ダメだ、この視聴者たち。結局、このままだとボスと戦う羽目になるってことしか分からなかった。
ローザネーラの姿もだいぶ遠くなってるし、急いで止めないと……!
と、思ったその瞬間。
『ひゃ、ひゃぁあああああああああああああっ!!?』
「っ! ローザネーラ!?」
悲鳴!? そんなに遠くないぞっ。
・あっ、もうボスエリアだ
・ローザネーラちゃぁん!?
・拙者、幼女が酷い目にあうのは見たくないでござる
・ヴェンデッタちゃん頑張れ
・ヴェンデッタちゃん、こうそくいどうだ!
・急げ急げ!
「言われなくても……!」
ぐっと地面を蹴る足に力を籠め、少しでも速度を上げる。間に合うか……? いや、間に合わせて見せるッ!
あと、誰がポケ〇ンだ! 《ファストステップ》でもしろってか! あ!?
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
怖い。
怖い。
怖い。
がむしゃらに頭の中を埋め尽くすのは、恐怖と――いつかの情景。
思い返すことだって嫌なのに。それは怖がるワタシをあざ笑うように、浮かんでは消え、また浮かんでは消えていく。
アイツが――否、アイツの持つ大鎌……『ワタシの首を刎ねた武器』が、どうしても怖かった。
別に、ワタシを倒して挙句の果てには召喚獣なんてものにしたアイツ自身には、そこまで思うことはない。
ワタシは、負けたのだ。油断してたし、冷静じゃなかった。そんな言い訳なんて、負け犬の戯言でしかない。
すっごい勢いで馬鹿にされたこととか、すっごいムカつくことを言われたのだって、戦いの最中のことだし、気にしてない。ないったらないのっ。
でも、アイツとの戦いの最後。
目の前に迫ってきた大きな刃。首を飛ばされて、デュラハンみたいになったワタシの身体を見下ろしたあの光景。
それは、忘れようとしていたワタシの忌々しい記憶を、呼び覚ましてしまった。
遠い過去――ワタシが、この体になった時の記憶を――――。
「はぁ、はぁ……!」
逃げる。逃げる。アイツから、少しでも離れるために。
……本当は分かっている。アイツがワタシを害さないことなんて。脳裏を蝕む恐怖の端で、冷静なワタシがポツリと零した。
ワタシはアイツを殺そうとした。返り討ちにあったからと言って、それは変わらない事実。
なのにアイツは、怖がるワタシを馬鹿にするでもなく、ただ申し訳なさそうな顔をするばかり。
戦いの最中は、あんなに堂々として、圧倒的強者だったワタシを前に一歩も引かなかったのに。
……変なヤツ。でも、悪いヤツじゃないのは、分かる。
でも、それでも――この恐怖は、拭えない。
拭えないの……。
「はぁ、はぁ……あれ? ここ、どこ……?」
気が付けば、だだっ広い草原の真ん中に、ワタシ一人になっていた。
背後を振り返っても、アイツの姿は見えない。
……何処に行っちゃったの? ううん、ワタシが、何処かに行っちゃったのか。
息を整えて、ちょっと深呼吸。この草原は、空気が気持ちいい。 忌々しい太陽さえなければの話だけどね。真祖の吸血鬼だから日光でどうこうなるわけじゃないけど、もともと陽の光はあんまり好きじゃない。
そうしているうちに、少しずつ落ち着いてきた。……アイツのところに、戻らないと。戻ったら一言謝って……でも、怖いって言ってるのにいきなり大鎌を出すアイツもアイツじゃない?
ま、まぁ……ワタシを守ってくれたのは、その……ちょっと、かっこよかったけど?
って、何を考えてるのよっ!
「べ、べつに、アイツのことなんて、ワタシは……!」
『ぎゅぅううぅううう……』
……ふえ? な、なに? なんの声?
って、あれ? ここって、こんなに暗かったっけ……?
「っ、まさかっ!」
慌てて振り返る。そこには……やっぱりっ!
視界に映ったのは、巨大なモンスターの姿。
ワタシの四倍はありそうな巨体は、その全てが灰色の粘液で出来ている。
不出来な人形のような顔と太い二本の腕。
胸のあたりには、蒼いコアが浮かんでいるのが見えていた。
知識にある。この、モンスターは……!
「ヒュージスライム・アークァードール……!」
『ぎゅぉおおおおおおおおおおおおおおおお……!!!』
「きゃあっ!!」
しまった、《咆哮》をもろに……!!
魔力の乗った大音響が、ワタシの身体の自由を奪う。
くっ……! 弱体化していなければ、こんなの一瞬でレジストできるのに……!!
動けないワタシの隙を突くように、ヒュージスライム・アークァードールは身体を無数の細い触手状に変換させて、勢いよく伸ばしてくる。
粘液が滴る触手はワタシの身体に巻き付いて……って、そこはっ! や、やぁ!!
「は、はなしなさいよぉ!」
『ぎゅぅううう……』
両腕を頭の上で縛られて吊り上げられた。
足が地面から離れてるから、これじゃ《咆哮》の効果が切れても、動けないっ!
それに……っ! 触手が、身体中を……っ!
うぅ!! へ、へんなところ触るなぁ!!
……っ! ま、まって!? 触手が、まだあんなにいっぱい!?
あれを……全部? ワタシに? そ、そんなの……!!
恐怖で顔が引きつる。痛みへのモノではない、生理的な嫌悪感!
き、気持ち悪すぎる…………!!!
「ひゃ、ひゃぁあああああああああああああっ!!?」
ワタシに出来たのは、悲鳴を上げること。けれど、そんなものでヒュージスライム・アークァードールは止まらない。
数多の触手が、うぞうぞと蠢きながらワタシに差し向けられる。
焦らすような、甚振るようなゆっくりとした動きが、これでもかと恐怖を煽ってきた。
すぐに訪れるであろう悲惨な未来に、ワタシは咄嗟に目を閉じて――――。
「させるかァ!! 【ブーメラン・サイズ】ゥ!!!!」
アイツの声が、聞こえた。
読んでくれてありがとうございます。
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レビューとか……してくれてもいいんですよ? なんて、冗談です。楽しく読んでいってください。
それでは、また明日お会いしましょう。
ではでは。




