ヴェンデッタ’sリスナー、或いは頭の螺子が足りない奴ら
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
はい、どうもです。
結構読まれている見たいで嬉しいですね。頑張って更新していきます。
今回はヒロイン……まぁ、ヒロインだろう連中の登場回。
わたしからは一言、どうしてこうなった?
そこは、見るからに「金掛けてますが何か?」といった様子の部屋だった。
床に敷かれた絨毯も、壁に飾られた絵画も、部屋を上品に彩る調度品も。
そのどれもが一目で高級品だと分かるような、素晴らしい品々だった。
「……まさか、本当に勝ってしまわれるなんて」
豪奢な部屋の中に、感心と驚き、そして少々の呆れが混ざる声が響く。
芯のある凛とした女性の声。
それを発したのは、部屋の中央に置かれたソファに腰掛け、壁に設置された巨大なモニターを眺める一人の少女。
呆然としてしまうほどに、美しい少女だった。
意志の強さを表す紺碧の瞳、鼻梁が通っていながら大きすぎない鼻、きゅっと結ばれた真紅の唇は艶やかに輝いている。それらが女性的な柔らかい曲線を描く輪郭に神掛かった配置で並んでいる。
真夏の日差しをそのまま糸として紡いだような豊かな金髪を、頭の左右で結んでいる。
身に着けているのは簡素ながら仕立ての良い黒の夜着。
薄布の下にはギリシャ彫刻のような見事な肢体が存在していた。
特に目を引くのは、大きくたわわに実った二つの果実だろう。母性の象徴たる双丘は、少女が少し身じろぎしただけでふにょん、と柔らかく揺れる。
少女の真剣な瞳が見つめる先のモニターに映っているのは、『メスガキ』という表現がこの上なく似合いそうな銀髪ツインテ紅眼ロリだった。大鎌を手にしたそのロリは、草原で呆然と佇んでいる。
画面の端には凄まじい速度で流れるコメントの群れが表示されており、映し出されているのが配信であることが分かる。
少女は画面に映るロリを見つめながら、豊かな胸の下で腕を組んだ。
「ビギナーズラック……だけではありませんわね。彼女の動き、武器の扱い、相手の性質を見抜き正確な策を練れる判断力。そして、最後に見せた大胆不敵な行動。それを行うことのできる度胸……まず間違いなく、この少女は『持って』いますわ」
ぶつぶつと呟くように言うと、少女はソファから立ち上がり、モニターの前まで移動する。
そして、モニターに映る呆けたロリへと両腕を伸ばし、手で作った窓枠からその顔をじっと見つめた。
「凄まじい、と言う他ありませんわ。初配信で一万人を超える同接……すでに配信者として活動していたわけでもなさそうですし……『C2』の歴史に、また一つ伝説が刻まれましたのね」
声音に愉快そうな色を含ませて呟いた少女は、手で作った窓枠を崩す。
そして、ソファに戻ると優雅に腰掛けすらりと伸びた足を組む。
「ああ、それにしても……」
背もたれに身体を預け、何処か気だるげに吐息を漏らした少女は、まっすぐ曇りのない紺碧でロリを見つめながら。
「――――マジでドチャクソ好みのロリですわね」
ンなことをほざきながら、にへぇ、と締まりのない表情を浮かべた。
少女の纏う雰囲気が、がらりと一変。
「銀髪ツインテ紅眼ロリ! はー、なんですかそれ。性癖のバーゲンセールか何かですの? 装備もあんな……あんな誘ってるとしか思えないようなきわどいモノを着て……! 肩と脇をあんなに無邪気に露出するなんて……! レオタード越しの透けるおへそもえちえちのえち。あと、いくらでも払いますから、慎ましやかなシンデレラバスツッ!! ……をぺろぺろさせてはいただけませんか? ああもう、全てがわたくしにドストライクすぎますわ!! ……お持ち帰りはOKなのかしら?」
「うわっ、気持ち悪っ」と、誰もがドン引きするようなことを、早口でまくしたてる少女。
少女の容姿の良さでも隠し切れない獣欲塗れの顔は、かなり見るに堪えないモノだった。
いや、元の良さがあるからこそ、より酷い有様になっているというべきか。
「はぁ、はぁ……嗚呼、あの絶対領域を撫でまわしたいですわぁ……。幼子特有の肉付きの薄い太もも……たまりませんわぁ……じゅるり」
ソファから身を乗り出し、頬に手を当てて恍惚の溜息を漏らす少女。画面のロリ――ヴェンデッタを見つめる瞳は血走り、口の端からは涎が垂れかかっていた。
「ふへへへへへ……こほん。まぁ、この少女が人気を博するのはすでに時間の問題……ならば、何処かで相まみえる必要がありそうですわね」
変態顔を引っ込めて、きりりとした表情でそんなことをのたまう少女は、画面のヴェンデッタへと形の良い指を伸ばす。
「――――覚悟なさい、ヴェンデッタ。この、八都神亜理紗……アリアンロッド・プリマヴェーラが、貴女を見定めて差し上げますわ」
不敵な笑みを浮かべ、先ほどの変態発言をなかったことにするように言い放った少女――亜理紗。
『C2』において、登録者数百万人超えの人気配信者『アリアンロッド・プリマヴェーラ』その人が、ヴェンデッタに目を付けた瞬間だった。
なお、亜理紗はその後、スライムに体当たりされて涙目になっているヴェンデッタの姿に、モニターを嘗める勢いで顔を近づけ、ヤバい感じにハァハァしていたそうな。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……何かしらやらかすと思ってたけど、やっぱり」
ポツリ、と呟きを零したのは、腰まで伸びた桜色の髪を揺らす少女。
開いたウィンドウに映る銀髪ツインテ紅眼ロリ――ヴェンデッタの姿を見ながら、僅かに――傍から見ただけでは分からないほど小さく――口の端を吊り上げた。それは、親愛を示す笑み。
見惚れてしまうほどに、艶やかな少女だった。
眠たげな双眸は新緑を思わせる翠に染まり、桜色の唇は瑞々しい。表情の変化に乏しい美貌は、神が心血を注ぎ作りあげた人形のよう。桜色の髪は前髪が眉の高さで切りそろえられている。
頭の上にはぴこん、と三角形の狐耳が生えており、腰の裏からはもふもふの尻尾が生えている。少女の種族が『獣人』なのは、火を見るよりも明らかだった。
少女にしては高めの身長を包むのは、桃色に桜花を散らした着物と、緋色の袴。肩には白い羽織を掛けている。
しかし、最も目を引くのは着物の中で窮屈そうにしている豊かな二つのふくらみだろう。果実で例えるならメロンかスイカ。同性であろうと思わず手を伸ばしたくなるような魔性の双丘は羽織程度ではこれっぽっちも隠せていない。
腰には一振りの刀が吊るしてある。艶のある黒い鞘に収まったそれは、何処か惹きつけられるような雰囲気を放っている。
そんな少女が佇んでいたのは、不気味な雰囲気が広がる渓谷の底だった。
【亡獣跋扈の霊渓谷】という名の『C2』において、最前線のフィールドであるそこは、獣の骸が大量に出現する危険地帯。並のプレイヤーでは、パーティーを組んでいても攻略は難しいとされている。
瘴気立ち込める谷底を、少女は軽い足取りで進んでいく。
「……それにしても、この格好……」
視線は未だにウィンドウの方に向けられている。画面を操作し、ヴェンデッタの姿をアップにすると、少女は小さく眉をひそめた。
「……ちょっと、えっちすぎ」
少女はぞっとするほど平坦な声で呟くと、きゅっと唇を噛んだ。
そして。
「……だめ、こんな格好してたら悪い虫がいっぱいいっぱい群がってきちゃう。わたしの恵ちゃんに有象無象が……そんなこと、させない。……恵ちゃんを見ていいのはわたしだけ。恵ちゃんの声を聴いていいのはわたしだけ。恵ちゃんの名前を呼んでいいのはわたしだけ。恵ちゃんを愛でていいのはわたしだけ。恵ちゃんに触れていいのはわたしだけ。恵ちゃんに触って貰っていいのはわたしだけ。恵ちゃんの全部はわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしのわたしわたしわたしわたしわたしわたしワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシワタシ――――――
――――ワタシノモノ、ナンダカラ」
谷底に流れる瘴気よりも濃密でおどろおどろしい邪気を放ちつつ、ブツブツと聞き取れないほどの速さで呟く少女。
感情が完全に消えた能面のような顔は青白く、彼女自身が亡者のよう。
見た者が即座に「あっ、やっべ」と静かに距離を取るであろう雰囲気のままふらふらと進んでいく。
そんな彼女を仲間だと思ったのか、ただ単純に丁度いいところに獲物が来たと判断したのか、【亡獣跋扈の霊渓谷】に出現するアンデッドモンスターの群れが、闇から這い出るようにして姿を現した。
全身が骨で出来た四足歩行の獣、『デッド・ビースト』。
所々が欠けた腐肉の大型鳥、『グール・ビーグル』。
様々な動物の骨格が混ざった異形の怪物、『スケルトン・キメラ』。
死してなお圧倒的な威圧感を放つ亜竜の骸、『コラプス・ワイバーン』。
さぁ、恐怖しろ。震えあがれと言わんばかりに凶悪な気配を滲ませつつ、モンスターの群れは狐獣人の少女を取り囲む。
「……ふぅん」
しかし――相手が悪い。
少女は興味なさげにモンスターの群れを一瞥すると、チャキリ、と鯉口を鳴らした。
――次の瞬間。
「……丁度いい。八つ当たりに付き合ってもらう」
『ッ!!!』
少女の姿は、一瞬にしてモンスターの群れの中央に移動していた。
刀の柄に手を掛け、静かに居合の構えを取る少女に、感情などとうに失っているはずのアンデッドモンスターたちが驚きを示した。
「……隙あり。【焔尾大災・一刀燎原】」
くるり、と桜色の髪を泳がせながら、舞うように円を描いた少女。
彼女が鞘から引き抜いたのは、光すらも飲んでしまいそうなほど黒い刀だった。
風切り音さえさせずに振り抜かれた刀は、その軌跡に緋色の線を刻み――直後、発火した。
爆発的に膨れ上がる火焔は、少女の周りにいたアンデッドモンスターたちを次々と飲み込んでいく。
火焔の波濤というべきソレは、抗うことすら許さず全てを焼き滅ぼしていった。
「……終わり」
地獄のような光景の中央に、少女の声が響く。
骨や腐肉が焼き焦げていく匂いが漂う中、黒刀を鞘に納めた少女はモンスターの発する苦悶の声をまるっと無視しながら、ヴェンデッタの映るウィンドウに視線を戻す。
スライムに追っかけられて涙目になっているヴェンデッタが、「にゃぁあああああああ!」と愉快な叫び声を上げているのを見て、少女は。
「……はぁ、かわゆい……待っててね、ヴェンデッタ……ううん、ヴェータちゃん」
頬に両手を添え、頬を紅潮させながら三日月状に裂けた笑みを浮かべて見せるのだった。
――――『C2』にはネームドモンスターのように、その実力から二つ名を付けられたプレイヤーが存在している。
【断割巨剣】、【颶風無塵】、【覇軍魔王】……厨二病に頭を侵された者たちが付けたその名は、しかして畏怖と共にプレイヤー、NPC両方に広まっている。
そして、少女もまたその一人。
全てを一刀の元に斬り捨て、紅蓮の業火で一切合切を焼き殺す苛烈なる殺戮者。
【桜火妖狐】――かつて殷王朝で悪逆の限りを尽くし、武王に首を落とされた伝説の妖仙の名を冠する者。
プレイヤーネーム『暁・アウローラ』。
堂々たるネームドプレイヤーの一人にして、ヴェンデッタ――否、『逆凪恵ガチ勢』。
そして、恵の『頭の上がらない恩人』こと大家さんの娘にして、恵のお隣さんだった。
こ れ は ひ ど い
財力チートのロリコンとお隣さん&恩人の娘&これまでの積み重ねという激アドヤンデレども
これをヒロインと呼んでもいいのだろうか……?
とりあえず、読んでいただきありがとうございます。
次の更新は今日の18時です。ではでは。




