初挨拶(戦闘中)
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
TSロリっていいよね
はい、本日もどうもです。
戦いの最中に突如開いたウィンドウ。そこに記されているものは、ヴェンデッタを窮地から救うのか……! みたいな感じです。
それでは、お楽しみください。
いちまんにん。
……いちまんにん?
…………いちまんにん!!?
何度見てもそう書いてあるし、見間違いとか何かのバグでは無さそうだった。
コメントも爆速で流れて行ってる。なんて書いてあるか微妙に分かんないレベル。
え? なんで? ほわい?
いやだって、この配信ってあくまでお試しって言うか、俺自身今さっきまで存在自体忘れてたやつだよ?
しかも初配信&全くの無名配信者。その配信に、なんで一万人も集まってるんだよ!!?
酷い驚きに包まれる俺だが、ふと眺めていたコメント欄を見て、はたと我に返る。
・めっちゃ驚いてるww
・いや、戦闘中戦闘中!
・落ち着けロリっ子ォ!
「いや、誰がロリっ子だ!? ……っじゃなくて、忠告ありがとっ!」
そいやそうだった。
なんでいきなり配信画面が出てきたのか、とか。どうして一万人も見てんだ、とか言いたいことはいっぱいある。あるけど……今は、戦闘に集中しなきゃっ!
なんせ、絶賛大ピンチの真っただ中ですからねぇ!!?
そろそろ自由落下が始まるんですが? そしたら地面の染みか大鎌でなます斬りの二択! ははっ、もう笑うしか無くない……?
「あはは…………ん?」
あれ、今コメントに何か……。
視界の隅に映った文字列に、なんだか見逃してはならぬことが書いてあったような……。
・初反応が初突っ込みで草
・お礼言えてえらい
・どう見てもロリっ子です本当にありがとうございました
・下級悪魔って確か飛べたよね?
・種族スキルに《飛行》がある筈だけど……この様子だと忘れてるな
・あー、初心者だとあるあるw
・見つけにくい場所に書いてあるもんなぁ
「そ・れ・だぁああああああああ!!!」
思わず、絶叫。
コメント欄に唐突な叫び声に対する驚きの声が流れるが、それどころじゃない。
自分の手札を確認したときに、思い出せなかった何か。
硬く閉ざされていた記憶の扉が開き、その思い出せなかった何かが溢れ出てくる。
――――種族スキル。
各種族に設定されている、『この種族なんだからデフォでこの能力くらい持ってるよね』という認識の元、制作されたであろうスキルたちのことだ。
人族なら《可能性》や《道具習熟》。
エルフなら《森林活性》や《美貌補正》。
獣人なら《草原活性》や《五感鋭敏》。
下級悪魔の種族スキルは魔法の威力や効率が上がる《魔力親和》。
そして――――《飛行》。
うん、悪魔って普通飛べるよね。だって、翼あるもん。
キャラクターメイキングの時にそういえば確認してたんだっけ……?
うごご……かんっぜんに! 忘れてたぁああああああ!!?
こ、これは……なんというか……。
非常に……ひっじょうに……。
ま、まぬけすぎるぅううう~~~~~!!?
「ひ、《飛行》!!」
湧き上がる羞恥心を押し殺し、頬が赤くなるのを自覚しながらもスキルを発動させる。
背中側でバサリ、と翼が開く音がして、落下しかけていた身体がふわり、と浮かび上がる。
ちらりと後ろを見ると、翼が大きくなりバサバサと羽ばたいていた。
よ、よし……これで一応、墜落死の心配はなくなったか?
物凄い安堵感と脱力感、そして同時に襲い掛かってくる死にたくなるような恥ずかしさを無理くり押さえつけながら、まずは……!!
「え、えっと! 配信をご覧の方々、こんな状態で申し訳ございません! とりあえず、挨拶を……初めまして! ヴェンデッタと申します!! ずっと無視しちゃって本当にごめんなさい!!」
早口で、ちょっと声を上ずらせながらまくしたてた。
見てくれてる人に挨拶の一つもしねぇとか、そんな失礼を晒せるわけねぇだろ……!!
配信者として、というより、人として当然の行為……! これまでかんっぜんに配信のことを忘れていたマイナスを、少しでも挽回せねば……!
カメラくんに向かってペコリ。浮きながらお辞儀をしたせいで少しバランスを崩してアワアワ。
……何をやっているんでしょうね、俺。
・かわいい
・かわいい
・挨拶出来てえらい
・わたわたかわいい
・格好と言動が真反対で笑う
・礼儀正しいメスガキもいたもんだなぁ
・ええんやで
・気にしないで、戦いに集中なさい
えっ……優しい……。
失敗した姿を可愛いと言われるのはなんか複雑だが、ずっと何の反応もせず好き勝手やってたヤツに掛ける言葉にしては、甘すぎやしないか? うっかりときめきそうになったぞ。
「ありがとうございます……! 現在は……まぁ、勝ち目? 何それ美味しいの? という感じですけど、見てくださっている皆さんに失望されないような結果になるように、精一杯頑張りますね」
ちなみにだが、この男の姿でやると吐き気がしてきそうな敬語口調は、配信用に練習していたモノである。
ゲームの情報を仕入れると同時に、様々な配信者の動画を見たのだ。話し方などを参考にさせてもらうために。
若干あざとい感じの敬語口調。これが一番スタンダードだったというか、しっくり来たのでこんな感じにしているというわけだ。
・今でも十分頑張ってると思うんですけど?
・初見超格上ボス相手に煽りでデバフ入れつつ凌ぐロリ
・戦ってるとメスガキ、それ以外は良い子
・あのステータス差で戦いになってる辺りPS半端ない
・つよつよヴェンデッタちゃん
・反応速度と反射神経どうなってんの?
・とはいえ、ここからどうするの?
・本人の言通り、勝ち目がなぁ……
「あはは……まぁ、一矢報いるくらいはしてやりますよ。このまま一撃も入れれずに倒れるなんて、絶対に御免ですから」
・結構好戦的ね
・野郎ぶっ殺してやるぅ!!
・首置いてけよぉ……首置いてけよぉ!!
・血だァ……血ィをぉみぃせぇろぉ!!
・なんか変なの湧いてね?
・首狙いはワンチャンあるかもねー
「首、ですか? まぁ、大鎌ですから首を刈るのは似合うでしょうね」
ワンチャン? と首を傾げつつ、大鎌をブンと振るって見せる。
・ひぇ
・その無垢なきょとん顔で鎌ブンブンするの普通に怖い
・ちょっと猟奇的
・猟奇的なロリか……それもまた善きものよ
・業の深いやつおるなー?
・大鎌って、首にクリティカルが入ると極々まれに即死効果が入るんだよ
「即死……?」
ふむ、この武器にはそんな特性があったのか……。やっぱり情報って大事だな、と再確認。
まぁ、わざわざ『極々』なんて付けてるってことは、本当に低確率なんだろうけど。
けれど、せっかく教えてもらったんだし、狙ってみるのもありだろう。
ぐっと視線を下に向け、降りてこない俺にイライラした表情を浮かべるローザネーラを見据える。
アイツの首に一撃叩きこむ……いいじゃないか。
ひたすら煽って盛大に油を投げ込み続けた怒りを、一瞬で冷ますような体験をさせてやるのも悪くない。
しかし、普通にやっても避けられるだけ。何とかして意表を突けないだろうか……。
読んでいただきありがとうございます。次の更新は本日の18時です。
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