第1章 13才春(4)
両親は、二人で美容室をやってる。だから休みは少ないし、世間が休んでいるときに働いてる。当然、学校が休みの日は営業日だ。
だから子供の時から、姉貴が親代わりだった。5歳年上の姉貴は、僕が小学校に入る頃にはすでに母親の代わりに僕の食事を用意し、日々の面倒を見てくれていた。
そんな姉貴には、だから僕は逆らえないし、あまり逆らおうとも思わない。それに姉貴もあんまり負担に感じている様子はなかった。どうやら、今にして思えば結構楽しんでいたのかもしれない。
両親は職業柄、ファッションには敏感だし、よその親とはちょっと違った感覚、いやぶっ飛んだ感覚の持ち主だ。だから姉貴が『ちょっと男の子らしくないファッション』をさせた時も、そのセンスに注文を付けこそすれ、とがめ立てるようなことはなかった。
だから姉貴も好き放題やっていたし、僕もそれを姉貴が喜んでいるのを知っていたからおとなしく従っていた。
そのうち、喜んでもらうことより、自分が気持ちよくなっていった。
GW中は両親の不在をいいことに、化粧の練習、コーディネートの練習、言葉遣いの練習、仕草の練習。毎日、着せかえ人形で楽しんだ。天気が悪かったこともあって外出は1回きりだけだったけど、久しぶりのお姉ちゃんとの時間は楽しかった。
お姉ちゃんは化粧道具を自分の部屋に置いていってくれた。
「あたしの部屋にあれば、ママもパパも変に思わないよ。時々、練習するのよ。なくなったら、また買って送ってあげるから。時々、写メ、送ってね」