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今回から異世界編始まります
目を開けると異世界だった。今度こそ間違いない、三度目の正直だ。
僕は辺りを見渡す。どこかヨーロッパの空気を感じさせる建物のようだ。それも王宮レベルの。周囲はステンドグラスや、大きな絵画で装飾されており、下を見やると、大理石だろうか床面はこちらの姿が反射するほどに磨かれている。
ここは異世界だと断言していいだろう。それほどまでに現実感がない。仮に地球ならばここは世界遺産レベルの建造物だろうし、それこそあり得ないことだ。しかも目の前には神官らしき人や騎士らしき人さえいるのだ。現代の地球ではまずありえない光景だ。異世界と思わないほうがおかしいだろう。
その中でも取り分けて荘厳な格好の人が一人。異世界というものに馴染みのない僕でも一目でわかる。彼は王だ。
「異世界より来る勇者殿よ、まずは貴殿に感謝を」といって彼を筆頭にその場にいたすべての人が頭を下げる。
「我は第37代 ヴァシリオ王国国王 ヴァシレウス・ド・テオスである。こちらの世界の厄介ごとの巻き込んでしまったのはこちらの不徳の致す限りである。重ねて非礼を詫びよう」といってまたも頭を下げる。
自分の祖父ほども年上の人から、それも大変威厳のある人から頭を下げられ僕は困惑する。世の転生した人達はどうやらここで平静を保っていたようだが、一体どんな生活をしていたらそんな態度がとれるのだろうか?大企業の御曹司 はたまた時代錯誤な貴族出身者なのだろうか?傲慢ちきな態度をとっていた者もいるらしい。訳が分からないよ。
おっとあまりの衝撃に口調がぶれてしまった。
言い忘れていたが、あの真っ白な世界で彼女から多少は異世界の知識を仕入れており、異世界転生ものの小説も数作品読んでいたのだ。多少は理解していたつもりだったが、さすがに現実となると受け入れがたいものがある。百聞は一見に如かずというやつか。
「うおっほん。それでは申し訳ないが私は政務があるのでここで失礼する。詳しいことはそこのイコノスから聞いてくれ」と軽く一礼してから部屋を出ていく。彼の姿が見えなくなったと同時に、いかにもな格好をした初老の男性が口を開く。
「申し遅れました。私、このヴァシリオ王国の王城であります、テオス城の執事長を任されております、イコノスと申します。お聞きになりたいことは多く御座いましょうが、ひとまずはお体を休ませたほうがよろしいでしょう。転移というものは恐ろしく体力を消費すると聞き及んでおります。ささどうぞこちらに」と僕を案内する。
僕は困惑したまま、平静を取り戻すことができず、ただその男性に付き従うことしかできなかった。
彼と、おそらくメイドなのだろうか、若い女性二人のエスコートで僕は足を進める。この女性二人がこの上なく美しい。僕の類まれなる語彙力をもってしても、ただ美しいとしか言葉にできないほどだ。古文で読んだが『ゆゆしきほどの美しさ』とはこのようなことをいうのだろう。確かに現実味のない美しさだ。これが異世界パワーというやつなのだろう。
柄にもなく僕が興奮しているとお思いだろうが、こんな人を見てしまったら誰だって興奮する。男性はともかく女性ですら僕のような反応をとるに違いない。ただでさえ僕は男なのだ。興奮するなという方が無理な話だ。
あり得ない驚きの連続に僕は、一周回って冷静さを持ちなおす。普段は抱くことのない高揚感を確かに感じながらも、僕は彼についていく。
道中彼から聞いたところによると、どうやらこの城には風呂があるようだ。ぜひ後で堪能することにしよう。
客室は大変な広さだった。世のどのホテルにもないような部屋で、装飾品も素人目でも一目でわかるほどの逸品ぞろいだ。しかもこのベットの柔らかいこと。まるで雲のような柔らかさだ。寝転がると程よく沈み、体を優しく包みこむ。毛布などは掛けてはいないが、温かさを感じる。これが魔法の恩恵というものだろうか。悪くない。むしろ良い。すごく良い。
「気に入っていただいて何よりです。ご用がありましたらドアのそばにそのメイドが待機しておりますので何なりとお申し付けください。ベットのそばにある呼び鈴を使って頂いても構いません。ではごゆっくり」と恭しく一礼し彼は退室する。
普段、代り映えのない灰色の生活を送っている僕にとって、この一連の出来事はかなり精神にきたようで、体は元気でも心が疲れているようだった。彼の姿が見えなくなった途端にどっと疲れが押し寄せる。メイドさんと少しお話がしたかったが、それもやむなしだ。えも言われない布団の素晴らしさもあり、抵抗することなく僕は眠りについたのだった。
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