14. 作戦を思いつきました Part3
手が滑ったのだ。
最後の最後で、犯してはいけないミスを犯してしまった。
そして、無情にもエリーが口を開く。
『私は、魔憑のあなたとは一緒になれません』
悪役女王を退け、後はゲインとハッピーエンドで締めくくればいいものを、制作側は何を考えてラストに選択肢を用意していたのか、全く分からない。
今までの苦労が水の泡となり、待ち受けるのはゲインを傷つけた罪悪感と、その親友であるルディから報復を受ける、主人公エリーのまさしくバッドエンドであった。
『君さぁ、ゲインの事を支えるって言ったよね?僕の親友を傷つけて、許されると思うの?』
雷の精霊の加護を持つルディは、エリーの足元へ雷を落とす。
パンッという甲高い音と共に、一筋の光が地面に5センチほどの範囲を焦がした。
可愛かった表情は一変して、鋭い目付きでエリーを睨みつけながら、隣に立つ親友へ声をかける。
『ゲイン、僕の加護を貸してあげる。君も許せないでしょう?』
ゲインの手を握り、ルディが自身の加護を分け与える。
戸惑うゲインの瞳は揺れていたが、悲しみに任せて手を振り下ろす。
落とされた雷を回避出来ず、エリーは体に電撃が走り倒れた。
朦朧とした意識の中で、エリーの独白で幕が降りる。
『どうして…。何がいけなかったのかしら』
(選択肢ですね!)
プレイヤー達は満場一致でそう答えただろう。
前世のミシェルも、間違いなくそう思っていた。
そして、純真無垢だと思ってた親友の裏の顔を見てしまった衝撃は忘れられない記憶になってしまった。
「王女殿下、本当にそれでいいんですか?」
ルディは、不安そうにミシェルに問う。
ベイドナー達から離れ、庭に面した渡り廊下に2人はいた。
ミシェルのお願いとは、ルディの雷の加護を一時的に受ける事だった。
精霊に嫌われてはいるが、ルディ経由で加護を分け与える事が出来るのを、ミシェルは覚えていた。
「ええ、これでいいの。ありがとうルディさん」
ミシェルは両手を握ったり開いたりして確認する。
意識して拳にぐっと力を入れると、パチッと音が鳴った。
「ルディでいいですよ、”それ”が王女殿下の助けになるなら、お安い御用ですよ!」
「ふふ、なら私もミシェルでいいわ。ゲインもそう呼んでますし」
「はい!ありがとうございます!」
可愛らしい顔で明るく笑うルディを見ていると、彼が本当は腹黒いなどとは微塵も思えない。
バッドエンドを迎えたエリーの様に、ゲインを蔑ろにする気もないので、ルディがどんな性格であれ、今こうして助けてくれる事に感謝した。
「では、皆の所に戻りましょうか。さっきから、親友を取られたゲインがそわそわしてるみたいですし」
先ほどまでミシェル達がいた庭の中央で、ゲインはウロウロと落ち着きなく歩き回っている。
「あー、違うと思いますけど、なるほど。ミシェル様は見た目と同じでとても可愛らしい方なんですね!」
ルディの言葉の意味が理解できずに小首を傾げると、そのまま手を取られ皆の所へと促される。
更新が滞ってますが、いつか必ず完結させますね。




