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長期休暇

ダイスを振って進めていく物語。

 あの日のことはよく覚えている。朝はすごくどんよりとした雲が空に膜を張っていた日だ。その日は長期休暇の初日ということもあって七時に目を覚ましたもののそのまま二度寝をしよう、としていた時だったと思う。普段鳴り響くことのない部屋のチャイムが鳴らされた。宅配など頼んだ覚えもないし、何か届け物があった場合には不在票が入っていることだろう。二度寝することに決めた。起こしていた体から力を抜き、布団を被って二度寝を決めようとしたその時。


 激しく鳴らされるチャイム。ドンドンと大きくな音を出す扉。騒音かと思ってしまう程耳元で鳴る携帯電話。


 流石に無視するわけにもいかず、布団から出て、イライラとしながら携帯電話の電源を切り、インターホンに出てやった。画面に映るのはおかっぱの信用できない笑顔を浮かべる男。どうやら今日はきちんと服を着ているようだ。


「はろー?」


 インターホンから怪しい男の声が響いてくる。相変わらずふざけた声をしている男だ。全くもってこいつのどこが人気なのかわかりはしないがよく脱ぐところが人気なんだろう。よく分からんが。


「はっろー?」

「久しぶり」

「返事してくれた……!」


 画面の向こうで心底驚いた、というようにわざとらしいリアクションを取る男にイラつきながら最後に一言上がるよう言って通話を切った。


「お前が素直に俺を家にあげる、だと……?」


 疑わしいような眼差しをエンターはこちらへと向けて来た。エンターは椅子に座り、自分は布団へと潜る。そのまま少し向こうの方が煩いな、と思いながら自分は意識を手放していった。


 そこまではハッキリと覚えている。布団に入って眠りについたのは覚えているのに。



 気づいたら知らない天井。聞こえてくる波の音。動いていないはずなのにギシギシと痛む身体。おかしい。これは何かがおかしい。長期休暇の初日は1日寝て過ごす予定だったのに。何故、自分はこんな南国にいるんだ? 一体いつ、俺はここに来たのか……。


「あ、ようやくお目覚めかよ〜。よく寝たなぁ」


 真っ白な麦わら帽子にオレンジのアロハシャツ。海パンを履いた胡散臭い男が覗き込んできた。バッと痛い体を動かして右手で全力で殴りかかる。自分の右手はエンターの左ほほに吸い込まれるような軌道を描きながら宙に浮いた。エンターの体が。気持ちよく決まった、と嬉しく思った。


「いたた……なにすんだよぉ……」


 倒れ込んだ体を起こしてエンターは言う。左手で左ほほを抑える姿を見て少しだけ強くしすぎたかと反省した。すまんすまん。


「悪い」

「かっる! 良いけど。応急手当、応急手当、と」


 そう言いながら救急箱を手に取るが自分の顔にはうまく施せなかったらしい。ずい、とこちらに救急箱を差し出して代わりにしてくれ、と催促して来た。まあ、殴ったのは自分なので仕方ない。やれることだけしてみようと思ったが。うむ。中々上手く出来ない。痛い痛いとエンターが暴れるせいだな。上手くいかないのは。うん。


「暴れるなら自分でやれ」


 ガーゼを左ほほに思い切り押し付けて言ってやる。


「いてぇ!! いって! やるやる! やるからやめてくれ!!」


 おっら、と救急箱を押し付けてベッドに腰掛ける。うう痛いよぉ、といいながらエンターは自分でもう一度応急手当を施した。今度は2回目と言うこともあって上手くいったらしい。綺麗にガーゼが貼られていた。出来るなら最初からすれば良いのに。


「んで? ここどこ?」

「南国?」


 こてんと首を傾げながら疑問形で回答が来た。いや、何故お前が知らない。


「気付いたら俺もここに居たんだ。どこかは分からないんだよなぁ」


 心底わからない、といったような顔を見て。マジで知らないのか。 嘘をついているように見えないし。仕方ない。周りを見渡して何か無いだろうか。まあ、まず気になったのは……。


「なんでお前はこの一瞬で全裸になってるんだ?」


 気になる、というわけでは無いがどうしても視界に入ってしまって自分の精神が削られてしまう。なんで毎回こいつは脱いでるんだ。最初見たときはきちんと海パン履いていただろう。何故脱ぐ。


「ファ!? うわ! また脱がされてる! ていうかなりたくて全裸なわけじゃ無いからな!? 気づいたら脱がされてるんだよ! きっと他の皆さんも俺の肉体を見たくて脱がせたに決まってる! まあ? なんて言ったって? 俺は? カッコいいから! 俺のあられもない姿が見たいんだ!」

「んなわけないだろう。鏡を見ろ。そこまで造形は良く無いぞ。ナルシストも大概にしておけ」

「はっはっは! 照れることはないぞ? いくら見慣れてるとはいえ、やはり美しい俺を見ると照れるのだろう? はっはっは!! なんて言ったって! 俺は! カッコよくて! ナニが! 大きいから!」

「言えば言うほどお前、自分自身を落としていくぞ。顔も普通だし、身長もそのナニとやらの大きさも平均値だ。諦めろ」

「うう……心が少し痛い」


 胸を押さえながら沈み込むエンター。自分自身にこいつは自信を持ち過ぎていて、それが羨ましくもあるが今もそうだがとっても鬱陶しい時がある。ていうか、自分が合うトラブルの原因はコイツな事が多い。もしかして、またコイツに巻き込まれたのでは……?


「んで、なんかこの部屋にめぼしいものあった? とくにパンツとか。俺の海パンとか」

「いや、知らんが。机の上にメモがあるみたいだぞ?」

「……仕方ない。それ見て見るか」


 エンターが全裸のまま机の上にあるメモを手にとって読み聞かせてくれるらしい。


「エンターが長期休暇に入ったらしいじゃないか! それと一緒にヨジュも長期休暇に入ったらしいね! 折角の長期休暇を楽しんでもらうためにリゾートに連れて来たよ! 楽しんでくれたまえ! だって」


 読み終わったエンターがこちらの顔を見てくる。ていうか。


「やっぱりお前のせいじゃないか!」

「いや待て待て! 俺のせいじゃない!」


 そうはいうが紙には完全にエンターが主目的な気配がする。自分はおまけのような。それはそれでなんか納得いかないな! でもやっぱり。


「完全にお前の長期休暇に巻き込まれた形じゃないか! 誰なんだ! 勝手にこんなところへ連れて来たのは」

「う〜ん。それが書いてないんだよな」

「書いてない? 裏にも何も書かれていないのか?」

「うーん。書かれてないなぁ」


 ペラペラと紙をめくる仕草をするエンター。怪しい、と思ったのでメモをサッと抜き取り自分で確認するもやはり何も書かれていない。日に透かして見たり、匂いを嗅いで見たりするもなにもおかしなところはない。どうやら本当に書かれているのはそれだけだ。


「な? なにも書かれていないだろ?」

「まあ……たしかに」

「俺が嘘つくわけないだろう」


 ふふん、と偉そうにするエンターにはムカつくが疑ったのは自分なわけで。流石にエンターのせいにするのは大人気ないから仕方ない。


「疑って悪かったな」

「良いぞ! 他の奴に対しては平気で嘘をつくからな!」

「そうか。ドヤることではないな」


 ため息をついてとりあえず辺りを見渡してエンターの着るものがないか探す。いきなり全裸になったのは驚いたが、コイツのことだ。良くある。良く見る光景だ。まあ、どうやらここはホテルの部屋の一室のようだし、予備の服とか。売店もきっとある。そこで買えば良いだけの話だ。

知らない天井を見た貴方はSAN値チェック【67】→減少なし

エンターに拳【35】→1d3→耐久値【2】減少

エンターが自分自身に応急手当【84】失敗

ヨジュがエンターに応急手当【67】失敗

エンターが自分自身に応急手当【13】成功→1d3→【3】→耐久値【2】回復

エンターが突然全裸になったことに気づいた貴方はSAN値チェック【49】→減少なし

自分自身が突然全裸になったことに対して衝撃を受けるエンター/SAN値チェック【66】減少なし

ヨジュがお部屋に対して目星【32】成功→メモを発見


もしダイスをふるならこう!!(きちんとダイスは振った)

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