第46話 気になる一言
「君は今日、孤児院に行ってるね。ニックの両親が亡くなった日も君は現れた・・・。君にはアリバイもあるし、セシルを殺す動機なんて無いことは分かっている。けれど君の行動には納得の出来ない事が多すぎる。もし何か知っていることがあるなら教えてくれないか?」
確かに警察からしてみればカトレアの行動は奇妙なのだろう。怪しまれても不思議ではない。
ここで嘘を言っても何の得もない。そう思ったカトレアは、知っている全てをロイドに話す事にしたのである。
カトレアの話す言葉一つ一つに、鋭い目でただ黙って聞いているロイド。
話が終わると、ロイドはゆっくりと口をひらいた。
「つまり君は『セシルに見せたい物がある』と言われて孤児院に行ったという訳か・・・。でも押収したセシルの私物の中には、特に気になる物は無かったはずだが・・・」
そう言いロイドは手帳を広げた。
おそらく押収した物のリストでも書いてあるのであろう。
その時、カトレアはセシルの宝物の存在を思い出したのである。
「その私物の中に、幼い頃のニックのアルバムは無かった?」
カトレアの言葉にロイドは首をかしげながら再び手帳を覗き込んだ。
「・・・多分そんな物はなかったと思うなぁ。あったとしたら間違いなく覚えてるだろうし・・・」
ロイドの中で、点と点が線で結ばれたのか
『はっ!』とした表情をした。
「犯人の目的はそのアルバム・・・。やはり・・・ニックが・・・。けれどニックにはアリバイが・・・」
頭の中で必死に整理しているロイド。
やはり警察はニックを疑っていると言うことはカトレアにも分かった。
そしてアルバムが盗まれたと言うことも・・・。
ようやく頭の中でまとまったのか再び口を開くロイド
「ニックは良い人間だけど、彼の周りでは人が死にすぎている。しかも彼の過去を知る、数少ない人間が次々と・・・。今回のセシルの事と言い、ニックの両親も・・・。それに実はもう1人・・・。マリアの前に付き合っていた彼女・・・。」
確かにそうである。
ニックの過去を知る人物が次々と居なくなっている。
・・・マリアの前の彼女・・・!?
気になる一言を言った瞬間、ロイドの携帯が鳴ったのである。
「はい・・・孤児院の近くに不審人物?・・・分かったすぐに行く。」
電話を切り、急いで家を出るロイド。
そしてドアのノブを握り、背中越しに
「じゃぁ、行ってくるよ。」
ロイドの見送ったカトレアは、ロイドの背中を見ながら、妙に最後の言葉が気になっていた。
『マリアの前の彼女・・・』
そうではなく、
『ニックの過去を知る人物が次々と居なくなる。』
そう、この言葉が・・・