第23話 育ての親②
驚いているセシルを不思議そうに見ていると、それに気付いたのか更にセシルは話を続けた。
「確かに3年前までニックは居ました。ですが今まで一度もニックを訪ねてきた人は居なかったもので・・・。」
「一度も・・・ですか?」
ニックが生まれたときのアニーの顔を知っているカトレアには、アニーが一度も訪ねてこなかったのが信じられなく、聞きかえしてしまった。
「えぇ。一度もです。それは『園では』って意味ですが・・・。誕生日には決まって園の外に女の人が居て、ニックは外出してましたから・・・」
そういってセシルはカトレアを見つめている。
おそらくその人はアニーであろう。そしてセシルはアニーとカトレアを同一人物だと勘違いしている。すぐに誤解していることに気付いたカトレアは
「ニックとは親戚ではないのですが、娘とお付き合いをしていましてどんな子だったのかと・・・」
うつむきながらカトレアは尋ねると、やはり不審に思ったのか
「あなたから見える彼が、『彼』そのものですよ。過去がどうであろうと変わらないのではないでしょうか?」
まさにその通りである。けれどもそれで引き下がれないカトレアは、ありのまま全てを打ち明けたのである。