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第15話 互いの気持ちの違い①
夜8時になり、ようやくマリアが帰ってきた。
「ただいま。今日は疲れたわ。」
そう言って、まっすぐシャワーを浴びに浴室へ向かった。
カトレアは平然を装い
「今日、ニックが腕時計を取りに来たわよ。」
それを聞き、浴室の扉のノブに手をかけたマリアは、さほど驚いた様子もなく
「そう。」
よほど疲れているのだろうか、そのまま浴室に入っていった。
30分後、髪を拭きながらマリアが出てきて、やはり気になるのであろうか
「彼、私のこと何か言ってなかった?」
カトレアの正面の椅子に腰掛け、ひじをついて手を頬にあて、恋をしている様に目で母を見つめている。
「・・・何も言ってなかったわよ。ただ時計を取りに来ただけだったわ。」
純粋な目でマリアに見つめられ、カトレアはそう答えるのが精一杯だった。そしてそれを聞いたマリアは
「なーんだ。」
と、つまらなそうにふくれ、髪を乾かし始めた。