表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白衣の天使  作者: レムス
107/110

第66話 繋がる過去と現在

中に入ると、予想通りシーンと静まり返っている。


何度も『夢』で味わって、この先起こる事を知っているカトレアではあるが、やはり銃口をマリアに向けている自分の姿を思い出すと、恐怖心を拭いきれなかった。


けれど自分の能力が本物かどうか確かめたい。そんな気持ちがあったのか、カトレアは覚悟を決め、マリアが居るであろうリビングに向かって足を進めたのであった。




カトレアはリビングの扉の前に立ち止まり、一呼吸おいてからノブに手をかける。


震える手を抑え、ゆっくりと扉を開け、中を伺う。すると・・・。


やはり真っ先に目に飛び込んできたのは、いつの日にか買った、あの白い服を着て立っているマリアの姿だった。


ついに現実に来てしまった『この日』ではあったが、カトレアは言葉を発する事ができず、ただ立ちつくしていた。


すると口を開いたのはマリアの方だった。


「おかえり・・・ママ。やっぱりこの日が来ちゃったね。」


そう言ったマリアは一瞬笑顔であったが、すぐに哀しい顔になり


「私・・・今日・・・ママに殺されるんだね。」


「あなたの日記見たわ。でもそんなこと絶対にないわ!未来は変わるのよ!」


すると哀しそうな表情だったマリアが突然、険しい顔になったのである。


「未来は変わらない!変えてはいけないの!・・・未来が変わっちゃったら、私もママもパパと同じただの凡人じゃない!!」


その言葉にカトレアは耳を疑った。


「・・・マリア・・・あなたがパパを殺したの・・・?」


怒りや哀しみではなく・・・そう無表情でマリアはこう答えた。


「えぇ、そうよ。だって『あの人』ママの事『悪魔みたいだ』って言ったのよ。なんの力もない凡人が・・・!」


「・・・どうして・・・」


カトレアの目から涙が溢れ出した。


そして震える手でバックから銃を取り出し、マリアに向けたのである。


「・・・やっぱり変わらないのかなぁ?」


マリア小さく呟いて、更に続ける。


「私が小さい頃、パパの銃をゴミ箱に捨てた事があったでしょ?その後でパパとママにすごく怒られたよね?だって私にはこうなる事が分かってたから・・・。毎日『夢』で見てたのよ。今日の事を・・・。だから夜泣きが治らなかったの。だってそうでしょ?こんな夢を見て、起きたら目の前に私に銃を向けてる本人が居るのだから・・・。ママだって辛かったと思うけど私だって・・・」


カトレアは『ハッ』とした。


昔、子育てで悩みノイローゼ気味になった事を思い出したのである。


「そうだったのね・・・。そうとは知らず、自分だけが悩んでたと思い込んでたわ。ごめんなさい・・・マリア・・・。」


あの時、もっとしっかりしていれば違う結果になっていたかも知れない。


カトレアはマリアに向けた銃を降ろそうとした時、マリアの足元に人が倒れているのに気付いたのだ。


涙でボヤけているせいか、生きているのか気を失っているのかは分からなかったが、その人物はニックであった。


そうである。『黒い影』についてまだ何一つ解決していなかったのだ。


そんな倒れているニックの姿を見て、カトレアは銃を降ろすのをためらってしまったのであった。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ